SAPジャパン株式会社は、「mySAP Supply Chain Management(以下、SAP SCM)」の最新版であるSAP SCM 4.1と、RFIDソリューション「SAP Auto-ID Infrastructure 2.0(以下、AII)」を発表した。6月中にも出荷される予定。
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SAPジャパン株式会社 ソリューション本部 ディレクター 塚越 秀吉氏
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独SAP本社では、1999年の段階からRFIDの開発を手がけはじめ、2001年には、マサチューセッツ工科大にRFID研究センターが創設された際に、「企業向けアプリケーションベンダーの代表格として」参加、その後EU最大のスーパーマーケットチェーンを経営する独Metroをはじめ、いくつかのパイロット顧客との共同開発を経て、今回のRFIDソリューション発表に至ったという。
ソリューション本部 ディレクターの塚越 秀吉氏は、「社会インフラになるであろうRFIDに、自社のITインフラが対応できるかどうかが、導入の壁になっている」とし、「この変化を促進できる仕組みをNetWeaverを母体としたビジネスアプリケーションで提供する」とした。
同社の調査では、部門内、全社、一次サプライヤ、そしてバリューチェーン全体の各段階でITインフラを統合していくごとに「在庫日数や、キャッシュフローに直結するキャッシュサイクルタイムが半減する」など、サプライチェーンのパフォーマンス改善につながる結果となっている。
RFIDの技術は、物流におけるいくつかの処理を自動化するものといえる。従来のバーコードであれば、人手をかけて物品ごとに読み込む必要があるが、RFIDでは例えば「ゲートをくぐるだけ」で入荷された物品の情報をシステムに取り込むことが可能になるほか、流通段階での各種情報も記録することができる。
RFIDタグの読み取りに関する技術は、現在さまざまな基礎実験が進められている最中だが、「今年なのか来年なのかはわからないが、必ず読める時代は来る。そのとき生み出されたデータを企業で活用するためのアプリケーションが、今回出荷されるもの」だという。
試算では、RFIDソリューションの導入効果として「モノの情報の可視性が高まり、在庫の回転率が5~10%改善する」という。また人手を介するためコストのかかっている返品処理のプロセスでは、収益を25~40%改善するという。このほか、盗難による損失や人件費の削減も見込まれている。
2003年4月に独ラインベルグにオープンしたMetro Future Storeでは、「顧客にPocket PCが貸与され、どこになにがあるかの情報がわかる。また棚から商品を取り出すと商品タグにより情報が反映され、例えばワインを買ったとき、これに合うチーズなどのおすすめ情報も表示する」という。
SAPでは、こうしたフロントエンドの部分ではなく、物流センターからの店頭の棚までの物品在庫のシステムに関わっている。Metroでは、すでにRFIDの導入を始めている米Wal-Martと同様、納入業者にRFIDタグの添付依頼を年末までに開始するという。
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Metroのポータルでは、上から荷物の梱包、出荷日況、到着日の各状況がステータス表示される
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Metro Future StoreのRFID活用事例
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物品納入におけるモノと情報の流れ
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mySAP SCMのシステム構成イメージ
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このため納入側では、個別の物品を収めたケースごとにRFIDタグを貼り付け、その情報を先行出荷通知データとして納入先に送る必要が出てくる。発注側はこの情報から何がいつ入荷するかを確認する。同社のソリューションではNetWeaverを中核にしているため、ポータルから物品の流通状況ステータスを把握できるという。
そして「物品の届いた日付や数の状況、そして顧客に販売されるまでの一連の在庫状況を監視、管理するのが、SAP SCMに含まれるSAP Event Management(EM)となる。
またRFIDソリューションのニーズとしては、こうした在庫管理だけでなく、「薬が顧客の手元に行くまでの状況を確認する法規制に対応する製薬会社向け、また広大な敷地に点在する設備管理用のソリューションなどの事例もある」という。同社ではこのように「実際のビジネスにすぐRFID技術が使える」ことを強みに、今後は顧客データ管理を行うCRMと連動するアプリケーション開発なども行っていくという。
SAP SCM 4.1では、こうしたRFIDとの連係機能の他に、SCMの需給計画をスケジューリングするAdvanced Planning&Optimization(APO)、Inventory Collaboration Hub(ICH 4.0)そして全体のイベント管理を行うSAP EMのそれぞれで、機能が強化されている。また「顧客との間のWebコラボレーションを強化する」ICH 4.1の機能が追加されたことで、需要主導型でのWebベースSCMを構築できるという。
■ URL
SAPジャパン株式会社
http://www.sap.co.jp/
プレスリリース
http://www.sap.co.jp/company/press/press.asp?pressID=2848
( 岩崎 宰守 )
2004/06/09 15:56
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