富士通株式会社は8月25日、2月に発表した「次世代金融ソリューション体系」のうち、金融機関のリテール(個人顧客向け取引)戦略を営業店側から支援する「次世代金融営業店向けソリューション」の提供を発表した。同社では今後3年間で20行、600億円の受注を目標とする。
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富士通株式会社 経営執行役 箕田好文氏
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富士通株式会社 金融ソリューション事業本部 本部長 小沢基之氏
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富士通株式会社 経営執行役の箕田好文氏は、「金融機関のリテール取引強化推進の上で、営業店は重要な戦略拠点となる」とし、今回のソリューションによりセールス活動の高度化と事務の効率化、また金融機関に必要なセキュリティの機能とシステム投資の効率化を実現するとした。
富士通株式会社 金融ソリューション事業本部 本部長 小沢基之氏は、現在の金融営業店が、入出金や通帳記帳を行うATM、為替振込や税・公共料金の支払いを行うローカウンター、そして口座開設や投資信託の申し込みなどの役割を持つハイカウンターの3つによるサービス提供を行っているとし、「今後はTV電話による相談機能を備えた高機能ATMなどにハイカウンターの機能が移っていく」との見方を示した。そして「これからの金融営業店では、投資信託などリテール向けの金融コンサルティングなどにシフトし、店舗の機能やレイアウトもローカウンター中心に変わっていく」とした。
また同社が独自に行った調査の結果として、金融機関に対する顧客のニーズが「身近・信頼・軽快」をキーワードにしていると分析。本ソリューションを「営業店と顧客の関係をサポートするもの」と位置づけた。
そして「投信販売が急増するとともに、ローカウンターの相談が専門化しつつある。ネットワークの活用などのシステム化によってこれに対応していく」とした。また「金融機関では、営業力強化がさほど進んでいないのが実態」とし、「投資信託相談窓口のインターネット予約や、入出金の状況に応じたATMでの投資窓口誘導といった現実性のある営業力強化のソリューションを提供していきたい」と述べ、現在38%のシェアを3年後に43%にまで伸ばしたいとした。またセキュリティソリューションのコンポーネントとして提供される手のひら静脈認証システムについては「将来的にはデファクトを目指したい」とのことだ。
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それぞれ機能別に細分化されたコンポーネントからなる4つのソリューション
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IT基盤「TRIOLE」を用い、総合システム開発体系「SDAS」により開発されている
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次世代金融営業店向けソリューションは、セールスソリューション、事務ソリューション、セキュリティソリューション、コンサルティングの4つのソリューション体系に分かれており、それぞれに細分化された機能のなかから、必要に応じたものを組み合わせて導入できる。このため金融機関の規模を問わず利用できる。価格はそれぞれ個別見積となる。
システムとしては、富士通のIT基盤「TRIOLE」のうち、オープン基盤「Interstage」をプラットフォームとし、アプリケーション基盤として従来から提供していた「FBC(Financial Business Components)/ITF(Image Transaction Flow)パッケージ」を用いている。そしてXML、SOAP、J2EEをはじめとした標準技術によりセキュリティ、認証、課金などの機能を容易に追加できるシステム構造となる「Hubアーキテクチャー」へ対応するよう機能が拡張された。さらにJ2EEによりサーバーをコンポーネント化することで、他社の金融パッケージとの連携も可能となった。
セールスソリューションは、CRMなどの外部システム、投信販売会社や保険会社などの提携先システムとも連携して、情報を一元的に集約できるアグリゲーションサービスを実現するセールス支援、また窓口端末やATMに顧客情報を表示するプロモーション支援、営業担当者の携帯電話やPDAとの連携、顧客相談予約、TV電話によるリモート相談といった営業支援の各ソリューションと、新商品や制度改定に対する知識習得を行うEラーニングなどの機能を提供する。
事務ソリューションでは、基本事務処理、イメージワークフロー、オペレーションガイドなど、すでに実績のある業務処理コンポーネントから必要な機能を選択できる。これによりカスタマイズを極小化し、開発期間を最大で50%削減するという。
セキュリティソリューションでは、手のひら静脈を用いたATM/窓口での本人認証システムのほか、不自然な取引の自動監査、個人情報保護法や、2005年施行をめどに現在検討が進められている財務・税務関係書類の電子的な保存を認める「e-文書法」への対応、トランザクションのモニタリングといった機能が提供される。
コンサルティングでは、EA構築を目指したシステムの最適化と業務改革などのほか、流通業界におけるこれまでのノウハウを羽化した顧客ニーズ分析や営業力強化なども提案を行っていくという。
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ATMや窓口端末との連携、情報の一元化などで営業活動を支援する「セールスソリューション」
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実績のある各種コンポーネントの組み合わせで事務処理を効率化する「事務ソリューション」
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認証やセキュアファイリングからなる「セキュリティソリューション」
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「コンサルティング」では、流通分野のノウハウも活用して営業力強化とシステム最適化を目指す
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セールスソリューションのコンポーネントについては、同社の流通分野でのノウハウを元に、今回新たに開発が行われている。また事務ソリューションでは、銀行ごとに3つのパターンに大別される業務処理のコンポーネントを揃え、これを選択できるようになっている。事務・セキュリティのソリューションを構成するコンポーネントについては、すでにいくつかの銀行で稼動しているものも含まれているが、今回これを補強するソリューションを一部開発して体系化して提供するという。またコンサルティングについても手順や価格体系を再整備するとともに、12月の提供へ向けて教育を行っているとのことだ。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/08/25.html
富士通の金融ソリューション
http://salesgroup.fujitsu.com/financial/
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( 岩崎 宰守 )
2004/08/25 17:45
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