Enterprise Watch
最新ニュース

Longhornもマネした?サンが開発する3Dデスクトッププラットフォーム


米Sun Microsystems Project Looking Glass Senior Staff Engineer 川原英哉氏
 サン・マイクロシステムズ株式会社は8月31日、Linux上で動作する次世代のデスクトッププラットフォームとして同社が開発中の「Project Looking Glass」についてのセミナーを、米Sun Microsystems Project Looking Glass Senior Staff Engineerの川原英哉氏を招いて開催した。川原氏はProject Looking Glassを「趣味で」最初に考案した人物で、現在も開発チームに所属している。


オープンソース化されたProject Looking Glass

 Project Looking Glassとは、サンが開発中のLinux上で動作するJavaベースの次世代デスクトッププラットフォーム。現在のWindowsなどと大きく違うのが、デスクトップに奥行きを持たせウィンドウなどを立てたり、半透明にしたり、裏側を利用するといったことができること。また、画面外にあるデスクトップを切り替えて利用できる「仮想デスクトップ」をユーザーの視点から360度に作成できるなど、現実世界に即した直感的なユーザーインターフェイスとなっている。さらにプラットフォームの3D機能をアプリケーションが利用できるため、対応アプリケーションの構築やCADなどで作られた3Dデータの活用も容易となる。


Project Looking Glassのデスクトップ。ウィンドウに奥行きがあるほか、半透明にもなる ウィンドウの裏側にダイアログボックスを表示したりメモに利用することも可能 CDチェンジャーのような3Dを利用したアプリケーションも容易に作成できる

 川原氏は「1984年にGUIを搭載した初代MacintoshやX Window Systemの登場から20年間、ハードが劇的に進歩したのに対してデスクトップは基本的な変化がない」と指摘。CPUやグラフィックカードなどリッチになったハードウェアリソースを活用し、現在の2Dデスクトップに3Dを取り入れて少しずつ改善して使い勝手を上げていくという、Project Looking Glassの「従来とは違ったアプローチ」を説明した。

 Project Looking Glassは、当初川原氏が趣味で始めたもので、後に社内の正式なプロジェクトとして承認され、そして2004年の6月に開催された「JavaOne」でオープンソースとして公開された。これにより多数の開発者がProject Looking Glassに参加、Apple初のGUIマシン「Lisa」の開発メンバーであるFrank Ludorph氏も名を連ねたという。これによりサン1社では生まれなかったアイデアがコミュニティ上で考案されている。最近ではウィンドウに物理シミュレーションを取り入れ、ウィンドウ同士が衝突したりするといった仕組みも一例として作られている。


20年前の初代Macintoshと基本的に変わらない現在のデスクトップ オープンソースとして公開された開発者向けリリースと以前のものとのアーキテクチャの違い 物理シミュレーションが取り入れられたデスクトップ

Longhornも追従する3Dデスクトップ

2003年の発表と異なり3D化や半透明化などの視覚効果が加わった2004年5月発表時のLonghorn
 しかしこれらデスクトップの3D化を「単なるお遊びではないか」「実際に役立つものなのか」といった懐疑的な意見もある。川原氏も「普段2Dデスクトップを利用していると、3Dの利点は理解されにくい」としている。だが、「2Dでできることはすべて3D上でも実行可能で、その上に3Dでしかできないことが可能となる」と説明する。3D化によって使い勝手が落ちるようなことはなく、新たな表現やユーザーエクスペリエンスを実現するということだ。

 また、デスクトップの3D化はサンだけが開発しているものではない。米Microsoftが開発中の次世代Windows「Longhorn(開発コード名)」にも“Aero”/“Aero Glass”という視覚効果として取り入れられることが2004年5月に開催されたWinHECで発表されている。川原氏は「Appleの(Mac OS Xで取り入れられた視覚効果である)Aquaの疑似語とLooking Glassを合わせた、彼らの姿勢をよく表している名前」と皮肉るが、「彼らも取り組んでいる以上、方向性が間違っていることはない」と、デスクトップの3D化がこれからの流れであることを強調。そして「我々にできて、彼ら(Microsoft)にできないことが、オープンソースを利用して世界中の開発者からアイデアを集めること」と優位性を語った。

 それでは、3Dされたデスクトップとして効果的なアプリケーションはどのようなものがあるのだろうか。川原氏は「例えば企業の経営情報などにおいて一つのデータをいろいろな角度から見るといったときに、より直感的に理解できる表現が可能となる」と説明する。さらにPCだけでなく家電や携帯電話といった組込で利用されるLinuxのインターフェイスとしての利用も考えられる。

 オープンソースとして公開されたProject Looking Glassだが、同社は製品化も視野に入れている。ただし「Windowsに対するデスクトップLinuxの競争力を上げるため、プラットフォームをオープンにしたい」と、各社が利用できるような形をとる考えを川原氏は示す。サンとしては、まずデスクトップLinuxをWindowsと勝負できるだけのプラットフォームにするためProject Looking Glassの基本部分を一つの糧として、その上のレイヤーでほかのLinuxディストリビューションと差別化を図る狙いだ。また製品化のスケジュールについては「2005年末を目標とし、Longhornより先に出したい」と意欲を見せた。

 なお、Javaのコミュニティサイト「java.net」内には日本人コミュニティが発足しているほか、9月2日の15:00~17:00にサンの用賀オフィス(東京都世田谷区)にてProject Looking Glassのオープンソースプロジェクトやアプリケーション開発に興味のある企業や開発者を対象としたワークショップが開催されるなど、国内においても活動が開始されている。



URL
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/
  Project Looking Glassについて(英語)
  http://wwws.sun.com/software/looking_glass/

関連記事
  ・ 米Sun、新プラットフォーム「J2SE 5.0」や開発者サポートプログラムなどを発表(2004/06/29)
  ・ 米Sunシュワルツ氏、「Java開発者はコミュニティに参加してほしい」(2004/02/19)


( 朝夷 剛士 )
2004/08/31 19:26

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.