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サイベース、“Unwire”をコンセプトにしたDB活用ソリューション群


 サイベース株式会社は、9月27日に発表した新コンセプト「Unwired Enterprise」を実現するデータベース活用ソリューション新製品群と、RDBMSの最新バージョン「Adaptive Server Enterprise(以下AES)12.5.2」について、10月5日にプレス向けの説明会を開催した。


マーケティング&ビジネスアライアンス本部長 麻生洋氏

モバイルでのデータ活用を実現するUnwired Enterprise

データの自動発行と、付加価値化も行える
 データベースのイメージが強いサイベースだが、近年はパートナーとの提携によるソリューション事業も手がけるなど、「コアビジネスであるASE中心としたデータベースから、ビジネスの方向性を拡張すべく、R&Dへの投資を2000年から継続的に進めてきた」(同社マーケティング&ビジネスアライアンス本部長 麻生洋氏)という。

 新コンセプトである「Unwired Enterprise」は、今後のSybaseのビジネス戦略の基礎となるビジョンで、これまで別個に進められてきた“情報の流動化(Information Liquidity)”と“モバイル”の2つのテーマを融合し、モバイルなどネットワークに接続されていない(Unwire)環境でも、社内外の情報を活用できることを目指している。

 これは「今後はこちらから情報を取りに行くのでなく、変更に応じて自動的にデータをプッシュすることがビジネス上の要求になる」との見通しに立ち、携帯電話やPDA、ノートPCといったエンドユーザー端末に、新規/更新データをリアルタイムにプッシュし、その際にあわせてメッセージバスに情報を自動的に発行するなどの付加価値をつけることで「環境に影響されずに情報を得られ、企業システムをUnwire、解放する」(麻生氏)ものだという。またマルチベンダー環境のインテグレートと管理を統一することも視野に入れられている。

 同社ではこれまで、国内ではパートナー経由のみの販売を行っていたが、「製品そのものが複雑化したことから、今後はコンセプトやソリューションの提案をパートナーと共同して直接販売する」事業展開を行っていく。

 また同社技術をOEM提供し、コアコンポーネントとしてソリューションの形で提供する主要ベンダーとの提携も積極的に進めていくという。国内ベンダーでは富士通との提携を発表済みで、Sybase IQをエンジンとした金融基幹向けソリューションの提供で、NECとの提携も7月に発表している。また海外でも、現在Microsoft SQL Serverのみで動作するSMB向けのERPパッケージ「SAP Business One」をASEにポーティングするほか、Intelともモバイル環境向けのソフトウェア開発で提携しているという。


マーケティング&ビジネスアライアンス本部 プロダクトマーケティング担当部長 高木伸滋氏
 マーケティング&ビジネスアライアンス本部 プロダクトマーケティング担当部長 高木伸滋氏は、Unwired Enterpriseを実現する4つのデータサービス製品を解説した。

 通常のシステムでは、ポイントトゥポイントで構成されており、アプリケーションはデータベースにアクセスし、データを探し当てて初めて次のアクションに移ることができる。Real Time Data Service(以下、RTDS)では、メッセージバスを介してシステム間を接続することで、こうしたパフォーマンスのオーバーヘッドとなるポーリングを減少させる。メッセージングはJMS、MQに対応する。

 これによりデータはリアルタイムで更新されるため、夜間のバッチ処理の必要もなくなる。メッセージバス側から問い合わせを行うことで、データステータスの変化をしきい値に基づいて自動通知することも可能となる。接続データベースはOracleやDB2にも対応するが、同社のAESを利用した場合には、SQLイベントをトリガーとし、データベースから能動的にメッセージングを行うこともできる。

 システムはAES 12.5.2、Replication Server 12.6、RepConnector 2.5、Messeagingオプションなどで構成され、価格は5,849,000円/1CPU。


システム間をメッセージバスを介して連携する データの変化を通知することも可能で、OracleやDB2にも対応する AESを用いれば、メッセージバスを介したDBからのメッセージングも可能だ

データベースログのみを転送、送信先で展開することで帯域を節約し、データの一貫性も保証する
 Mirrot Axtivatorは、ストレージベンダー各社のレプリケーション技術に、同社のReplication Serverを組み合わせて同期式のミラーリングを行うもの。データのレプリケーションといえば、通常はすべてのデータを送信するため、高可用な一方で多くのネットワーク帯域を要する。しかし「複製データからのリカバリには30%程度失敗するとのアメリカでの調査もある」一貫性が確認されているか疑わしいケースも多く、リカバリの作業そのものに非常に時間がかかる。

 Mirror Activatorでは、ストレージベンダーのレプリケーションシステムでデータベースのログを転送し、これをMirror Activatorで展開、RepServerに適用することで、データの転送量が約半分にできる。この仕組みによりデータロスのない転送と一貫したデータによる確実なリカバリと実現している。レプリケーションシステムではEMC SRDF/S、Veritas Volume Replicator、IBM PPRC、日立TrueCopy、Network Appliance SnapMirrorをサポートしている。

 システムはMirror Replication Agent、RepServerで構成され、価格は14,625,000円/1CPUとなる。

 Dynamic Archiveは、データベースにはエンジンとして組み込まれ、事前に設定した期間を経過したデータを通常のOLAPとアーカイブに分離する。これによりストレージリソースを節約するとともに、データを圧縮することでパフォーマンス性能も向上する。

 ユーザー側からは、アーカイブされたデータも通常と同様にシームレスに操作できる。またコンプライアンスによる保存義務と、短期間でのデータ提出義務といった規制にも対応できるとしている。またアーカイブ側のデータベースエンジンにSybase IQを用いることにより検索性能が向上するという。価格はデータベース容量に対して課金され、最小の50GBで9,750,000円。最大の500GBで97,500,000円となる。

 Dynamic Operational Data Stores(以下、DODS)は、DB2、VSAMなどのメインフレームのデータを、レプリケーション技術でレポーティング環境へ自動的に反映するツール。「メインフレームはまだまだ稼動しているが、業務パフォーマンスへの影響が大きいことからデータアクセスは制限される場合が多い。DODSならメインフレームに追加投資をせずに済む」という。


データの一部をアーカイブ化して、リソースの有効活用と性能向上を実現するDynamic Archive メインフレームデータをレプリケーションしてレポーティングなどでの活用を可能とするDODS

ASEの新機能

Replication Serverの新機能
 RDBMSの新バージョンASE12.5.2は、DBAの手間をかけず、運用コストを抑える「ジョブスケジューラ」の機能が追加されている。このほかWebサービスに対してASEで検索情報を公開できる「ASE producer」、公開WebサービスをASEで利用できる「ASE consumer」の機能も追加されるなど、Webサービスを用いたアプリケーションの構築を支援できるデータベース側の入出力機能も強化された。また性能面も改善されており、「Create Databaseではや50倍以上性能が向上し、ほぼ待たずにユーザーDBの設定ができる」という。

 このほかLinuxでのパフォーマンスチューニングも本格的に行ったことで、「4CPUなどの実際に利用されている環境で15万2000トランザクションを記録しており、規定以上のパフォーマンスを出せる」という。またIA32では3GBから64GBへメモリ利用領域を拡張したほか、今後はEM64T/AMD64環境もサポート予定だという。Linux環境でのアクティブ-アクティブ構成のHAクラスタも新たにサポートしている。

 またReplication Serverの新製品となる12.6は、11月中旬より提供予定となっており、システムデータベースとして、これまでのAESではなく、Adaptive Server Anywhereを採用することで管理コストを軽減している。またSMP環境も新たにサポートする。またこれまで1つのみのサポートだったスタンバイ環境を8に拡張しているため、複数のバックアップが可能となっている。

 同社では9月より、機能制限の無いAES Enterprise Edition、最大CPU数4、接続数256のAES Small Business Editionのほか、1CPU/メモリ2GB/データベースサイズ5GBまでの制限はあるものの、無償で商用利用も可能なExpress Editionの提供を開始している。無償ながらEE、SBE同様にパッチも提供されるほか、同社では問い合わせごとに有償となるインシデントサポートも提供するという。

 なお現在のところ英語版のみだが、次バージョンとなる12.5.3では日本語GUIに対応するマルチ言語版になるという。このほか12.5.3では、異種プラットフォーム間でのダンプ、データの暗号化オプションもサポートする機能拡張が行われる予定。

 現在12.5.2のAESは、次のバージョンアップでは15となる。これは「13と4は特定宗教では忌避すべき数字」となるため。複数ノード間で負荷の低いシステムにクライアントの要求接続がコネクションし、動的にシステムを再構築できるグリッド機能がサポートされる。またテーブル構造のパーティショニングなども可能になるという。現在ベータ1の配布が行われており、今後は2005年第1四半期のベータ2配布を経て、2005年第2四半期には製品版が提供される予定だ。



URL
  サイベース株式会社
  http://www.sybase.co.jp/
  プレスリリース(Unwired Enterprise製品群)
  http://www.sybase.co.jp/press/2004/pr-040927-02.html
  プレスリリース(AES)
  http://www.sybase.co.jp/press/2004/pr-040927-01.html

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( 岩崎 宰守 )
2004/10/05 18:22

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