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JVMから情報を収集するJ2EEアプリの性能監視/運用管理ソフト


 株式会社アイ・ティ・フロンティアは10月26日、J2EEアプリケーションの性能監視/運用管理ソフトウェアの最新版「Introscope 5.3」を年内に提供すると発表した。また米Wily Technologyでは10月25日(米国時間)、J2EEアプリケーションの性能監視/運用管理ソフトウェアの最新版「Introscope 5.3」を中心に、サービス、トレーニングおよびベストプラクティスなどから構成されるソリューション「Management 360」を発表した。


米Wily Technology 創業者兼CTO ルイス・サーニ氏

アプリケーションの複雑化で、管理者の数も増加

運用管理にもストラテジーが必要に
 Introscopeの開発元である米Wily Technologyの創業者でCTOのルイス・サーニ氏は、「J2EEのアプリケーション監視には、従来のシステムとは違ったアプローチが必要だ」と語る。

 レガシーシステムでは、稼動アプリケーションやネットワークのレベルまでパッケージ化されており、管理は少人数の運用チームで行われ、タスクもシンプルでやり方もはっきりしていた。その後のクライアント/サーバー型システムでも、アプリケーションごとに個別のサイトが構築されているため、「他のアプリケーションのことに通じていなくとも、アプリケーションのスペシャリストが単独で対応できた」とする。

 一方J2EEのシステムは、複数のサブシステムが複雑に相互接続されており、複数のサーブレットやアプリケーションが集合した処理によって、ひとつのサービスを提供される。このため小さな問題でも、関係するサービスを明確に特定する手間がかかり、さらに手がける関係者の数も増えることで、管理作業でもコラボレーションが必要になるなど、管理面での複雑さが増している。

 また従来までのシステムでは、目前の問題に対処するアドホックな障害対応が行われてきたが、「J2EEのシステムでは運用管理にもある種のストラテジーが必要になる」とした。運用管理のコアとなるチームは、技術スキルを持った集団のはずだが、全員がすべてのスキルを持っているとかぎらない。サーニ氏は「予期しない障害が発生し、その解決時間がはっきりしなければ、エンドユーザーは不信感を持つだろう」と述べ、サポートチームがフォーカスすべき優先度の方向性が持てず、障害に対する責任の所在もあいまいになりやすい点が問題になるとした。

 このように運用管理の方向性がない場合、ベンチマークもおうおうにして行われておらず、つまりはサービスレベルの達成点を持てないとした。さらにこうした到達点がないことは、テストサイクルの長期化にもつながり、コストや納期の点で問題も起きるとした。

 サーニ氏は、「アプリケーションのパフォーマンス低下は経営リスクにつながる」とし、「数年前までは、Javaは市場でもパイロットの位置付けで、アプリケーションの数も限られていた。今は本番系でも100を超え、Javaアプリケーションのサービスレベルは企業活動の上でも重要なファクターになり、その管理の重要さも増している」と語った。そして「このようなITシステムに対しては、ビジネスの面から見てITのメリットやサービスの価値、さらに信頼性が揺らぎかねない」と述べた。


複数の方向性からJ2EEアプリケーションのサービスレベルを分析
 「J2EEは、多くのバックエンドのインテグレーションポイントになっているため、アプリーケーションすべてを、コラボレーティブに管理できる仕組みが必要」としたサーニ氏。J2EEのシステムでは、さまざまなコンポーネントが動的に絡み合い、呼び出しシナリオによってトラフィックの経路も変化する。またアプリケーションによって、「データベースの応答時間が1秒でも遅いものと、3秒でも十分なものがある」。さらにデータベースをはじめとしたバックエンドのシステムも、1つのアプリーケーションではなく複数から呼び出される。従来の管理ツールでは、アプリケーションをプロセスのレベルから監視するものがほとんどのため、こうした場合に障害点を特定することが難しくなるという。

 Introscopeは、J2EEアプリケーションサーバーのJava VMにエージェントをインテグレーションする形で動作し、100,000以上の情報を15秒ごとに、情報を格納するリポジトリであるエンタープライズマネージャーに格納する。このためアプリケーションサーバーなどの既存システムや、アプリケーションのソースコードに変更を加える必要がない。これによりOS、Java VM、アプリケーションサーバー、開発フレームワークといったシステムレイヤーのうち、パフォーマンスに影響を与える部分を切り分けることが可能だ。

 負荷については、データ取得量にも左右されるが、およそCPU負荷率で2~3%程度とのこと。「運用段階で5%を超えることはほとんどない」という。「問題が起きたときに導入する、またトラフィックの一部をサンプリングして傾向を把握するのではなく、常時稼動して100%のトラフィックをログとして記録し、これを分析する」点がIntroscopeの特徴といえる。

 なおこの技術は、米Wilyの提案により、パフォーマンス測定のための標準技術であるJVM Profiling APIとしてJ2EE 5.0に採用されているという。

 Introscopeのこうした仕組みにより、過去にリポジトリへ蓄積したデータに基づいて、問題が起こる兆候の段階で対処できる。またデータを分析することで、将来的な負荷の増加に対して事前にシステムを拡張でき、サービスの停止を回避することも可能だ。もし障害が発生しても、迅速に障害原因を分析できることで、より早くシステムを復旧できる。これらは「結果的に効率的な管理とTCOの削減につながる」とした。

 また監視画面についても、GUIにより自由にカスタマイズすることが可能だ。例えば経営層向けには、サービスレベルの悪化や死活のみをわかりやすい画面で表示し、一方で管理者向けに特定サービスの詳細なトラフィックを表示することも可能となっている。

 最新バージョンである5.3には、100%のトランザクション監視に基づいて、エンドユーザー環境におけるWebブラウザのレスポンスタイムを表示できる「ブラウザレスポンスタイムアダプタ」の機能が追加されている。またIntroscopeではGUIの管理コンソールを採用しているが、アラートのしきい値や保存対象データといった設定をスクリプトベースで行うことで管理を自動化するCUIに新たに対応した。これにより「J2EEアプリケーション数の増加と、データ量の増大に対応できる」という。


 日本での販売元となる株式会社アイ・ティ・フロンティア 営業統括本部 ソリューション推進本部 ソフトウェア事業推進部 Wilyブランドマネージャーの木村和之氏によれば、「国内でも大手金融機関を中心に20社弱に採用されている」という。さらに不特定多数のエンドユーザーが対象となるECサイトのほか、「サービス停止の許されない社会インフラのシステムなどからの引き合い」も多いとのことだ。

 このほど米Wilyより発表された「Management 360」は、このIntroscopeに加えて各種のベストプラクティスと、導入支援サービス、トレーニングなどから構成されるもの。アメリカでは年内に提供の予定だが、国内では現時点での提供は未定となっている。



URL
  株式会社アイ・ティ・フロンティア
  http://www.itfrontier.co.jp/
  米Wily Technology
  http://www.wilytech.com/
  J2EEアプリケーションのパフォーマンス管理ソリューション「Wily」
  http://sirius.itfrontier.co.jp/wily/
  プレスリリース
  http://sirius.itfrontier.co.jp/wily/press/press_detail.cfm?press_no=76


( 岩崎 宰守 )
2004/10/26 16:34

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