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アドビがAcrobat 7.0のリリースを急いだ理由


セミナーは1セッションあたり約400人を集めた
 アドビシステムズ株式会社(以下、アドビ)は、1月21日より発売した「Adobe Acrobat 7.0(以下、Acrobat 7.0)」製品群の新機能や活用方法を紹介するユーザー向けセミナーを1月27、28日に都内で開催した。両日で6セッション行われたセミナーには、延べ2400人の企業ユーザーらを集めた。

 Acrobat 7.0で最も目立つ機能強化点はスピードの向上だ。AcrobatやAdobe Readerの起動速度のほか、PDFの作成速度にも適用されている。同社によると、Adobe Readerの起動は従来比で最大80%短縮、PDFの作成は、例えばMicrosoft Wordファイルからの変換において50%高速化したという。特にこれまでのAdobe Readerは起動が遅いことからPDFを開くことをためらうユーザーもおり、高速化によってすべてのユーザーに積極的な利用を促す狙いだ。

 これとは別に同社が狙うのが、Acrobatの業務フローへの組み込みだ。

 例えばWordやExcelなどで作成された文書を関係者内でレビューする際に、AcrobatによってPDFに変換すれば、印刷しなくても閲覧者が注釈や電子印鑑などを入れて回覧することが可能となる。従来は閲覧者全員がAcrobatを利用する必要があったが、Acrobat 7.0より、上位製品のProfessional版において、Adobe Readerからも注釈を入れる権限を与えることが可能となった。これにより低コストで文章レビューの業務フローに組み込むことが可能となる。さらにOutlookやAccessなどPDFに変換できる対応アプリケーションも増加している。

 逆に閲覧を制限するセキュリティも強化されている。従来バージョンと同様に単独のPDFにパスワードで閲覧や印刷などを制限することができるほか、複数の関連するPDFやほかのアプリケーションファイルを「電子封筒」にまとめ、中のファイルごとに開くことができるユーザーを決められるなど、細かな設定が可能となっている。また、別売の「Adobe LiveCycle Policy Server」と連携することで、閲覧期限を決められるなどより高度なセキュリティ設定が可能となる。

 さらにProfessional版に同梱される「Adobe LiveCycle Designer」によって、Webのアンケートページなどに見られるフォーム付きのPDFを作成することができる。作成したPDFを配信し、入力されたデータの収集して、結果をCSVに書き出すことも可能で、一連のデータ収集業務をAcrobatだけで行うことができる。


Outlookからはフォルダ内のメールを一括して取り込み、日付や送信者順などでソートすることが可能 サムネールやプレビューを参照しながらPDFファイルを管理できる新機能「PDFキャビネット」 Professional版ではAdobe Readerに注釈などを付記できる権限を与えることが可能

複数のファイルにセキュリティ設定が可能な電子封筒 Adobe LiveCycle Policy Serverと連携し高度なセキュリティ設定が可能

2年以内にバージョンアップした理由

 Acrobatは1993年に米Adobe Systemsが開発、1994年にはAcrobat Readerが無償公開され、以後、Acrobat Reader(バージョン6よりAdobe Readerに改称)は同社のWebサイトより5億回を超えるダウンロードや、多くのPCにプリインストールされるなど、ほとんどのPCでPDFを開く環境ができている。

 Acrobatは当初、紙を電子的に再現することを目的に登場し、ほとんどのPCで開くことが可能なほか、文書作成側の意図どおりに表示や印刷ができることから、Webサイトやメールの添付書類などで広く利用されてきた。しかし現在それらは、アドビ以外から登場した安価なPDF作成ツールでも可能となっている。エンタープライズ営業部 部長 三好廣幸氏は、これを「PDFの重要性が認められた結果」としながらも、前バージョンより2年もたたないうちにリリースした2つの理由の1つに挙げた。

 もう1つの理由は、今年4月に予定されているe文書法の施行だ。行政書類の電子保存が法的に認められるようになることを契機に、Adobe ReaderだけでなくAcrobatを業務効率化ソリューションのスタンダードとして一気に広める狙いだ。三好氏は「Acrobat 7.0では我々の意見に沿って開発され、日本法人の要望がより多く反映されている」と、日本の業務フローに最適化されたものであることをアピールした。

 なお、同社ではAcrobat 7.0に関する情報を通常の製品情報のほか、eラーニングコンテンツとして2月1日より提供開始する予定。



URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.co.jp/
  Acrobat 7.0 eラーニング(2月1日より)
  http://www.acrobat-learning.com/

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( 朝夷 剛士 )
2005/01/28 20:34

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