サン・マイクロシステムズ株式会社(以下、サン)が、2005年2月1日よりSolaris 10を無償化し、同社のWebサイトからダウンロード可能になったことは記憶に新しい。システムの構成にかかわらず、エンドユーザーは無償でSolaris 10を使用することができるという画期的な試みは、サンの企業戦略である「オープンソース・エコシステム」への取り組みの一環である。さらに、サンではSolaris OSをオープンソース化することを発表し、ビルド可能なソースコードは、2005年第2四半期に提供予定であるとしている。
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フィールドマーケティング統括本部 取締役 統括本部長 杉本博史氏
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Solarisのオープンソース化について、フィールドマーケティング統括本部 取締役 統括本部長 杉本博史氏は、「サンの歴史はソフトウェアをシェアすることから始まった」と語る。サンが目指すオープンソース・エコシステムとは、オープンソース化によってコミュニティによる自立的成長を促し、開発者の増加とアプリケーションの充実を図ることを目的としている。結果的にユーザーが増加し、市場が拡大するとサンは考えている。これはLinuxの自立的成長とシェアの拡大を強く意識した戦略であるといえるだろう。
公開されるソースコードは、他社開発のドライバなど法律上開示できないものを除き、OS・ネットワーク機能のカーネル、コマンド、ライブラリなどSolarisの大部分である。ソースコードの公開とあわせて、サンでは1600もの特許も公開する。また、ライセンスの形態としてOSIが認定したオープンライセンスであるCDDL(Common Development and Distribution License)を採用し、ソースコードの再利用を可能にした上で、特許の許諾と保護を規定している。CDDLでは、Solarisのソースコードを利用した成果物であっても、かならずしもオープン化する義務はなく、企業ベースでSolarisのテクノロジを利用した開発にも適したライセンス形態となっている。
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プロダクトマーケティング本部 本部長 纐纈昌嗣氏
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オープンソース化されるSolarisは、「OpenSolaris」としてイニシアティブがコミュニティに引き継がれる。まだオープンソース化したばかりということもあり、OpenSolarisコミュニティのコアとなる諮問委員会を発足させる予定である。この諮問委員会にはサンから2名、社外から2名に加え、オープンソースに前向きな考え方をしている有識者1名の計5名で構成され、年に2回~4回の会合を開く。OpenSolarisの開発プロセスは、サンの開発プロセスにコミュニティが参加するという形になるが、将来的にはオープンな開発プロセスにサンも貢献するようになる。プロダクトマーケティング本部 本部長 纐纈昌嗣氏は「OpenSolarisは、自己統治型のコミュニティのもとで、自立的に発展しつづけることが最終形態」であるとしている。
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OpenSolaris開発プロセスの初期形態
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OpenSolaris開発プロセスの最終形態
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将来的にサンが提供するSolarisは、OpenSolarisをベースに、サンが動作や互換性などのテストを行った上で、OpenSolarisのディストリビューションのひとつである「Solaris」という位置づけになる。つまり、製品版のSolarisは、サンがテスト・サポート、ISV/IHVなどの認定を行い、これまでと同様に品質、互換性、セキュリティをサンが保証するのである。
すでにダウンロードによる無償配布が開始されているSolaris 10は、「DTrace」「Solarisコンテナ」「ZFS」といった新機能や、多くの機能強化によって質の高いOSである。すでに2月19日の時点で54万近いダウンロードがあり、3月にはバイナリーパッケージも販売される。また、対応を表明したハードウェア360種以上、新規のISV400以上、ベンダーが対応を表明したアプリケーション1100以上、OEMも40以上にのぼるという。このように注目度の高いOSがオープンソース化することは、市場に与えるインパクトも大きい。今後の市場の動向が気になるところである。
■ URL
サン・マイクロシステムズ株式会社
http://jp.sun.com/
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( 北原 静香 )
2005/02/23 21:06
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