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IPA、OSSの性能評価手法や障害解析ツールを公開


日本OSS推進フォーラム開発基盤WG主査・株式会社日立製作所ソフトウェア事業部大型プロジェクト推進室担当部長 鈴木友峰氏

評価の目的
 独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)は3月22日、日本OSS推進フォーラム開発基盤WGと連携して、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)の性能・信頼性評価手法についてのドキュメント、および障害発生時の解析支援ツールを開発し、SIerやエンドユーザー向けに公開した。

 性能・信頼性評価手法のドキュメントは、業務システムに用いるOSSのアプリケーションサーバー・データベースサーバー・OSを、ベンチマークなどを用いて評価する際の手順や環境設定などを定めている。これらには環境の作成に必要なソフトウェアのインストールから評価までを、具体的なコマンドベースで記述されており、誰でも一定の基準内において同じ手順で評価できるという。

 日本OSS推進フォーラム開発基盤WG主査で株式会社日立製作所ソフトウェア事業部大型プロジェクト推進室担当部長の鈴木友峰氏は、OSSと商用ソフトとの違いが不明確だったことや、チューニングにより性能が大きく変化することから、「(性能の)境界を明確にするため」と、今回の目的を語った。

 なお、同じ手順が商用ソフトにも適用でき、「ベンダーのデータをうのみにせず自力での評価やOSSとの比較ができる」(鈴木氏)。ただしライセンスの関係上、結果の具体的な数値を外部に公表することはできないため、ドキュメントにある比較データはグラフベースで記述されており、ユーザーが同じ手順で計測した数値も自社内でのみ利用できる。

 また、この手順に従って行われたアプリケーションサーバー(JBoss 4.0.0)、データベースサーバー(PostgreSQL・MaxDB(MySQL))などの評価結果が、商用ソフトとの比較を交えてグラフベースで公開されている。

 この結果から鈴木氏は「OSSは業務用途でも十分に使えるが、適用範囲を見極めて導入する必要がある」としている。例えばJBossは商用の「WebLogic」との比較で、一定の負荷量までは同等の性能を維持したものの、それを超えると急激に処理性能や応答時間が低下した。つまり、その一定量を超えない範囲内での利用であれば十分に使えるということになる。また、データベースではPostgreSQL・MaxDBともチューニング前後で評価結果が倍以上変わることや、PostgreSQL 8.0と7.4およびLinuxカーネル2.6と2.4との比較による性能向上などがドキュメントに盛り込まれている。


負荷が一定値を超えるとJBossは性能が低下する MaxDB7.5におけるチューニング前後の性能比較

PostgreSQL 8.0と7.4の比較 カーネル2.4と2.6の比較

 解析支援ツールは「ダンプデータ解析ツール」「カーネル性能評価ツール」「ディスク割り当て評価ツール」の3つが用意され、それぞれOSSとしてソースコードが公開された。

 ダンプデータ解析ツール「Alica」は、既存のダンプ解析ツール(crash)と連携し、解析に必要な情報をメモリダンプから抽出する機能が搭載されており、解析に要する時間を短縮することができる。

 カーネル性能評価ツール「LKST」は、Linuxカーネルから障害解析用データ取得機能に加えて性能情報も取得でき、これらからボトルネックとなっている場所の解析や取得したデータのグラフ化などが可能となっている。

 ディスク割り当て評価ツール「DAV」は、ディスク上のデータへのアクセス性能を低下させる原因の1つであるファイル・フラグメンテーション(断片化)状況を取得・可視化することができる。


Alicaによる解析手順と高速化例 LKSTの機能追加 ディスク割り当て評価ツール、DAV

 なお、今回のドキュメントやツールの作成は、IPAからの委託により、日立製作所、SRA、NTTデータ、新日鉄ソリューションズ、住商情報システム、野村総合研究所、ミラクル・リナックス、ユニアデックスの8社による共同開発として実施された。



URL
  独立行政法人 情報処理推進機構
  http://www.ipa.go.jp/
  プレスリリース
  http://www.ipa.go.jp/about/press/20050322.html
  ドキュメントとツールのダウンロード
  http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/DevInfraWG.html


( 朝夷 剛士 )
2005/03/22 18:58

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