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プログラミング言語C#がJISに制定、「Javaへのリターンマッチ」


 社団法人 情報処理学会 情報規格調査会(以下、情報処理学会)、およびマイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)は、「プログラミング言語C#」が3月20日に日本工業規格(Japanese Industrial Standard:以下、JIS)に「JIS X 3015 プログラミング言語C#」として制定され、3月22日に公示されたことを共同で発表した。

 C#はすでに標準規格としてJISに制定されている「C++」をベースに、マイクロソフトが開発したオブジェクト指向プログラミング言語である。しかし、マイクロソフトが独自の技術を、強引に標準化したというわけではない。JISに制定されたプログラミング言語C#の標準規格は、マイクロソフトではなく情報処理学会のC#言語仕様JIS原案作成専門委員会が作成している。もちろん委員会にはマイクロソフトも参加しているが、構成メンバーの多くはマイクロソフト以外の委員だ。また、今回制定されたJISのもととなっている国際規格は「ISO/IEC 23270」であるが、この国際規格も、米HP社、米Intel社、およびマイクロソフトが標準化団体であるEcma Internationalに共同提案して「ECMA-334」として制定されたものが、ISO/IEC JTC1のプログラミング言語の国際規格として採用されたものである。ただし、JISの制定にあたっては、ISO/IEC 23270に含まれていたバグなどを修正したため、よりクオリティの高い規格となっているという。


社団法人 情報処理学会 情報規格調査会の三田真弓氏

「Javaへのリターンマッチ」と語る、C#言語仕様JIS原案作成専門委員会 委員長の黒川利明氏

マイクロソフト株式会社 ソフトウェア アーキテクトの萩原正義氏
 マイクロソフトがC#の開発ツールを最初に発売してからまだ3年しか経過していないにも関わらず、ISO/IECの国際規格として採用されたことについて、情報処理学会の三田真弓氏は、「Ecma規格として制定されていたC#の規格を、最終化原案として迅速化手順で制定されたため」と解説する。通常の国際標準開発は「新規開発提案」「委員会原案」「最終原案」「出版」というプロセスを必要とする。ところが、この迅速化手順では、国あるいは特別に認められたカテゴリAリエゾン(現在、Ecma International、ITU、CCEの3団体)からの提案を最終原案として採用できる。

 JISとして制定されたC#の特長について、C#言語仕様JIS原案作成専門委員会 委員長であり、株式会社CSKのフェローである黒川利明氏は、「オブジェクト指向」であること、「サーバーサイド・アプリケーションの開発を意識した言語仕様」であること、「可用性が高い」こと、「高いセキュリティレベルを維持」できることを挙げている。これらのC#の機能に関して黒川氏は、「C#は単独でできているわけではなく、過去の技術の蓄積からできている」と語り、既存のプログラミング言語からさまざまな影響をC#が受けていることを指摘している。

 マイクロソフトが提供しているC#の開発ツールとしては、「Visual C# .NET Standard 2003(VC#)」、およびC#を含んだ統合開発環境「Visual Studio .NET 2003」がある。次世代の開発環境となる「Visual Studio 2005」では、C#を含めて多くの言語が機能強化されることが既に発表されている。そのため、マイクロソフトでは今後も標準化への取り組みを続けていくとしている。マイクロソフト株式会社 ソフトウェアアーキテクトの萩原正義氏は、ソフトウェア技術の方向性は「変化への対応」「複雑さの軽減」「可視化」が重要であると述べる。さらに萩原氏はソフトウェアの抽象度は今後も増していき、言語レベルでの抽象化もすすんでいくが、C#はこれらの方向性にも対応できると語った。

 また、セミナーの最後の質疑応答において黒川氏は、C#の標準化に関しての質問に「私個人としてはJavaへのリターンマッチです」と答えた。実はC#がEcma規格として制定される前に、JavaをEcma規格にするための話し合いがもたれていたという。しかし、米Sun Microsystemsの意向によって、Ecmaでの標準化は見送られることとなった。その後、Ecmaの一部の委員から、「C++をベースとして、Javaに相当するプログラミング言語を標準化してはどうか」という話がでたのだという。



URL
  情報処理学会 情報規格調査会
  http://www.itscj.ipsj.or.jp/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  情報処理学会 情報規格調査会 プレスリリース(PDF)
  http://www.itscj.ipsj.or.jp/pr/itscj/JIS%20X3015%2020050322.pdf
  マイクロソフト プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2236


( 北原 静香 )
2005/03/23 10:18

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