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米salesforceとKDDI、ケータイ対応業務アプリケーション提供で提携


セールスフォース・ドットコム代表取締役社長 宇陀栄次氏(左)、米salesforce.com代表取締役社長 ジム・スティール氏(中)、KDDI執行役員モバイルソリューション開発本部長 田中孝司氏(右)
 米salesforce.comとKDDI株式会社は6月13日、au携帯電話とASP型CRMサービス「salesforce.com」を連携し、携帯電話上で利用できる業務アプリケーション「salesforce.com Mobile Edition for au」を発表した。salesforce.comの活用シーンを広げると共に、法人での携帯電話利用を促進し、主に中堅・中小企業(SMB)を対象に共同で販売する方針だ。

 salesforce.com Mobile Edition for auには、顧客・商談情報やスケジュール管理の照会・更新、アラート、社内メール機能など、主に営業活動の支援機能を搭載する。例えば商談に動きがあった場合、出先で情報を携帯電話から変更でき、リアルタイムでサーバー上のデータを更新できる。

 従来にはない特徴として、au携帯電話で利用できるアプリケーション開発プラットフォーム「BREW」上で動作し、salesforce.comが動作するサーバーとゲートウェイを介さずに直接通信できることが挙げられる。ASP型のsalesforce.comとともに専用のサーバーや保守要員などを用意せず、初期費用なしで容易にシステムを構築することが可能。株式会社セールスフォース・ドットコム代表取締役社長の宇陀栄次氏は「(従来のシステムが)自社ビルを建設していたのに対し、賃貸オフィスを利用するようなもの」と例えて説明する。


ソフトウェアアーキテクチャと開発モジュールのイメージ
 もう1つの特徴が、BREWの機能を生かしてオフラインでの操作を可能とし、非常に軽快な操作や電波の届かない場所での利用を実現したことだ。salesforce.com Mobile Edition for auは、SOAP/XMLベースのミドルウェアとともにダウンロードされ、携帯電話にインストールする仕組みをとる。そして、必要期間内のデータをダウンロードし携帯電話内で一時保存して、データの参照や検索が可能。新規顧客の登録や商談成立などの変化があった場合、それを入力し、変更分を同期することでサーバーに反映することができる。

 これまでオンラインで業務アプリケーションを操作することは、ほかのプラットフォームでも可能であったが、操作するたびにサーバーにアクセスしなければならないため、動作が遅く利用できる場所も限られるという問題があった。宇陀氏は「ほかのキャリアも検討している」としているが、現状こうしたオフライン操作が可能な携帯電話のプラットフォームは、auのBREWだけだという。

 さらに盗難などにより携帯電話を紛失した場合、KDDIよりリモートで電話内に保存されている関連データの消去が可能で、機密情報の漏えいに対するセキュリティ機能も備えるとしている。

 提供開始は7月1日より、価格はsalesforce.comの基本料金に、1ユーザー月額1,575円が追加課金される。ただし有料課金は10月1日からで、それまでは無償で利用できる(7月1日~30日まではベータ版として提供)。携帯電話の対応機種は、現在のところ「W31K」「W31SA」で動作確認がとれており、Wシリーズ(WIN対応端末)全般で利用可能となる見通し。


商談に関する情報の例。フェースを変更し、送信することでサーバーと同期できる サーバー上でのデータ変更を自動的に管理者へメールで伝えることも可能

中小企業にもケータイのビジネス利用拡大へ

自身のBlackBerryを掲げるスティール氏
 日本国内では、携帯電話の新規登録者数が伸び悩み「飽和状態」といわれているが、KDDI執行役員モバイルソリューション開発本部長の田中孝司氏によると、法人ユーザーは年間5割程度の割合で増加しているという。しかし、そのうちの半分が通話のみの利用で「(データ通信を利用した)SFA(営業支援システム)は大企業に限られている」という。

 一方、欧米では通話やメールのほか、ビジネスアプリケーションなどが利用できる携帯端末「BlackBerry」を利用する企業ユーザーが急増しており、米salesforce.com代表取締役社長のジム・スティール氏によると、2005年中には2年前の約5倍にあたる251万人に達すると報告されているという。salesforce.comもBlackberryにすでに対応しており、「ユーザーベースで80%、企業ベースでは90%ほど」(宇陀氏)のsalesforce.comユーザーがBlackberryを利用しているとのこと。また、日本のsalesforce.comユーザーの70%以上が携帯電話対応を要望していたいう。

 こうした状況から、今後日本でも携帯端末を活用したビジネスが増加し「営業スタイルが変わる」(スティール氏)ことが確実とみた米salesforceが、第3世代携帯電話を最も普及させているKDDIと手を組み、この分野で比較的手薄なSMBを主なターゲットにsalesforce.comの展開を強化する格好だ。また、KDDIとしては端末の特徴を生かし、法人市場で8割のシェアをもつといわれるNTTドコモの追撃を図る。



URL
  米salesforce.com
  http://www.salesforce.com/
  株式会社セールスフォース・ドットコム
  http://www.salesforce.com/jp/
  KDDI株式会社
  http://www.kddi.com/
  プレスリリース
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2005/0613a/index.html

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( 朝夷 剛士 )
2005/06/13 15:43

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