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携帯端末とのデータ同期技術「SyncML」に再び期待が集まる理由とは?


 「SyncML」をご存じだろうか。PC/サーバー上と、携帯電話/PDAなどの携帯端末上にあるデータを同期(シンクロ)する方法を標準化したプロトコルだ。2000年に最初のバージョンが策定されて以降、国内ではあまり注目されていないが、近いうちに大きな変化が起きる兆しがある。

 変化の兆しとは、個人情報保護法施行により、特に企業が携帯端末上のデータの取扱いに対して意識が向き、データ管理や万が一端末を紛失した場合の対策への需要が高まっていること。そしてこれに携帯キャリアも反応し、法人向けの新端末や新サービスを提供しよう動き出していることだ。ここで鍵となるのがSyncMLといわれている。


現状、SyncML対応携帯電話はわずか

Vodafone 702NK
 SyncMLは、NokiaやEricsson、Palmといった携帯電話/PDAなどのベンダーを中心とした業界団体「OMA(Open Mobile Alliance)」が仕様を定め、2000年12月にSyncML 1.0を策定した。

 SyncMLは、PC/サーバー側と携帯端末との間でやりとりされるデータ形式をXMLベースで標準化することで双方の機種を問わずにシンクロできることを目的としている。このため双方でSyncMLに対応する必要があり、PC/サーバー側は「SyncMLエンジン」を含むソフトウェアをインストールする。

 携帯端末側は、標準で対応しているか、あるいは追加ソフトウェアをインストールする必要がある。インテリシンク代表取締役社長の荒井真成氏によると、世界では2003年時点で2億台ものSyncML対応携帯電話が出荷されたとのことだが、国内で標準対応する端末は、現状NTTドコモの「FOMA M1000」やボーダフォンの「Vodafone 702NK」のみだ。


インターネット経由でデータのプッシュ配信やシンクロを可能に

インテリシンク 代表取締役社長 荒井真成氏
 携帯電話のメモリ編集ソフトなどは基本的にUSB接続の専用ケーブルを利用するが、SyncMLはケーブル接続のほか、赤外線通信(IrDA)、Bluetooth、WiFiなど通信手段を問わずシンクロできることをあらかじめ想定されている。さらにインターネット経由のリモート同期にも対応できる。このリモート同期が、携帯電話のメモリ編集ソフトにはない利便性やデータ保護など大きな可能性を秘めている。

 PCと携帯端末をシンクロさせる場合、ケーブルなどでお互いの接続を確立して実行できる。しかしこれでは、携帯端末をPC付近まで持ってこないとシンクロできないため、例えば外出中に届いたメールやスケジュールの変更は戻るまで確認できない。しかし、意識的に接続しなくても、新しく追加された、あるいは変更されたデータが、インターネットを経由し携帯電話のメールと同様にプッシュ型で送ることができれば、外出先から最新のデータを参照できる。プッシュ型配信はSync MLの最新バージョン(1.2)でサポートされた。

 データの追加/変更だけでなく、消去も可能だ。携帯端末を紛失してしまうと、中のデータを他人に見られる可能性があり、情報漏えいの原因となってしまう。そこで、紛失に気付いた際にPC/サーバー側から端末内のデータを消去する命令を発しておけば、端末がどこにあるかわからなくてもデータをリモートで消すことができる。さらに端末のデータに対してパスワードを設定し、例えば5回間違った場合にデータを自動的に消去するよう設定できるソリューションもある。


ウィルコムのW-ZERO3
 インテリシンクは「Intellisync Mobile Suite 6.4(IMS6.4)」で、こうした機能をSyncMLを使って提供し、モバイルPCやPDA、携帯電話ではSyncML対応のFOMA M1000や702NKで実現している(一部機能制限付きで、NTTドコモのDoja対応端末、ボーダフォンのJ2ME対応端末も利用可)。また、ウィルコムより発売される「W-ZERO3」への対応も発表している。PC/サーバー側もExchangeやNotesなどのほか、各種グループウェアへの対応が進められている。

 荒井氏は、対応端末が限られる理由について、SyncML対応に加えて「iアプリなどでは、利用できるメモリ容量が限られるため」と説明する。FOMA M1000やW-ZERO3などの端末はOSにSymbianやWindows Mobileを採用し、アプリケーションに3~4MB程度割り当てることができるが、これら以外ではせいぜい100KB程度となる。

 なお、シンクロできるメールやPIMデータは、専用アプリケーション上で管理されるもののみで、携帯電話に標準で搭載されるメールなどには適用されない。これは、追加アプリケーションから標準メールなどのデータにアクセスできないためだ。このため「個人用途は標準機能、仕事で使うデータはインテリシンクを利用するといった使い分けが考えられる」(荒井氏)。


携帯キャリアがシンクロやプッシュ配信サービスを提供する可能性も

 さらに同社はIMSのキャリア向けバージョンの発表を予定している。すでに携帯キャリアは、データのリモート消去サービスを開始し、新しい端末にて対応しているが、さらにIMSのようなツールを利用してPIMデータのプッシュ配信やバックアップといったサービスを提供する可能性もある。

 例えばPIMデータのプッシュ配信が実現した場合、ポータルサイトなどで提供しているカレンダー機能とのオートシンクロや、旅行やイベントをオンライン予約した際に予定が自動的に携帯電話に登録されるという仕組みも実現する。これに広告を載せるといったビジネスモデルも考えられる。「(こうしたモデルは)成功すると思う」(荒井氏)。

 これらを支えるのがSyncMLとなる。荒井氏によると、これまでSyncMLを使ったモデルは世界でいくつかあったものの、どれもビジネス的に成功しなかったという。しかし、携帯電話の新たなサービスに、SyncMLが活用される可能性は高いかもしれない。



URL
  インテリシンク株式会社
  http://www.intellisync.co.jp/
  関連記事:SyncMLが始動、これで悩みは解決?(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001212/mobile80.htm

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  ・ ビジネスモバイル市場、「成長の鍵はPDA」?(2005/09/22)
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( 朝夷 剛士 )
2005/11/15 18:33

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