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PTC、自動更新も可能な製品ドキュメント作成ソリューション「Arbortext」


 Parametric Technology Corporation(以下、PTC)は、製品開発や製品ライフサイクル管理のソリューションを提供するベンダである。特に3DのCAD/CAM/CAEソリューションの「Pro/ENGINEER」や、PLMソリューションの「Windchill」は市場でも高い評価を受け、広いシェアをもっている。

 そんなPTCが2005年7月に買収したのが、エンタープライズパブリッシングソフトウェアのベンダである米Arbortext社である。この買収によってPTCでは、あらたに製品に関連するドキュメント作成をサポートする「Arbortext」を提供することとなった。


ドキュメント作成ソリューションのもたらすメリット

米PTC PTC Arbortext担当シニア・バイスプレジデントのマーク・ベンファー氏
 米PTC PTC Arbortext担当シニア・バイスプレジデントであるマーク・ベンファー氏は、PTCがArbortextを自社の製品ラインに加えることについて、「多くの企業では、製品は完成しているのに、マニュアルなどドキュメント作成に手間取ってリリースが遅れてしまう問題を抱えています。この問題を解決するには、関連するすべての情報を管理して、ドキュメントの作成や更新を自動化する必要があります」と語る。ベンファー氏は買収にともなってPTCの現在の役職に就任したが、それ以前からArbortext社においてArbortextのセールスを担当してきた人物である。

 ベンファー氏は、「人に頼ったプロセスには限界があります。ドキュメント作成を自動化するしくみがなければ、一貫性のある正確なドキュメントの配信は困難です」と、現状のドキュメント作成プロセスには問題があると指摘する。

 たとえば設計フェーズで作成したCADデータをテクニカルイラストとして利用し、Wordなどでテキストの情報を作成するとしよう。さらに、そのテキストは各国向けに翻訳され、さまざまな言語のドキュメントとして生成される。このプロセスそのものが悪いというわけではない。しかし、ここでイラストやテキストに変更が発生した場合、そのデータを使用しているすべてのドキュメントは、どのように更新すればいいのだろうか。そこで、これらの問題を解決するのが、ドキュメント作成ソリューションなのである。


Arbortextによるドキュメント作成のプロセス

 Arbortextは、XMLベースでドキュメントの作成から配信までのライフサイクルをサポートするソフトウェア群である。その中心となっているのが、コンテンツ管理システムから必要な情報を抽出し、組み合わせてXMLのドキュメントを作成する「Publishing Engine」である。Publishing Engineでは、印刷用、Webサイト用、DVD用などさまざまなメディア向けのドキュメントを自動で生成することができる。

 Publishing Engineが抽出する情報は、コンテンツ管理システムにあるXMLまたはSGMLのコンテンツである。つまり、ドキュメントに必要な情報をコンポーネント化してコンテンツ管理システムに蓄積しておくことで、情報を組み合わせて自動的にドキュメントが作成できるようになるのである。PTCではコンテンツ管理のしくみとしてWindchillを推奨しているが、他のコンテンツ管理システムとも連携可能となっている。

 ここで重要なポイントは、管理されているコンテンツが更新された場合、そのコンテンツを利用しているすべてのドキュメントもダイナミックに更新されることにある。つまり、自動的にドキュメントを常に最新の状態に保つことができるのだ。さらに、プロファイル機能によって、ドキュメントを読む側のスキルや業務範囲に応じて、ドキュメントをカスタマイズすることもできる。

 また、Arbortextの基本コンセプトは「シングルソース」である。つまり1つの情報源から、複数のドキュメントを作成するのである。たとえばユーザーマニュアルに記載されている情報を、トレーニングマニュアルなど他のドキュメントでも使用することがある。このように情報をコンポーネント化して可能な限り再利用することで、ドキュメント作成を効率化してコストを削減できるのだ。

 市場のニーズにあわせて迅速に製品をリリースするには、ドキュメントも製品開発と同時進行で作成しなければならない。しかも、作成しなければならないドキュメントは多岐にわたっている。このような状況においてArbortextのような、エンタープライズパブリッシングソフトウェアは注目すべき分野である。

 また、XMLベースであるという点も重要である。Microsoftが次世代のOfficeのデータをXML形式にすることからもうかがえるように、今後はXMLというオープンなフォーマットによって、さまざなシステムとの連携や統合が可能になるのだ。XMLは非営利の標準化団体であるW3Cから誕生しているが、Arbortext社はW3Cの発足やXML仕様作成に深く関わり、特にDOM/XSL/XLLに貢献してきた企業でもある。

 これまで印刷物のドキュメントは、DTPソフトなどスタティックなソフトウェアで作成されることが多かった。つまり、他のシステムとの連携が難しく、プロセスの自動化できないしくみだったのである。しかし、これらのレガシーなツールのデータであっても、XML形式のデータへと変換するためのサービスを提供する企業もあるという。

 なお、PTCでは、2006年の4月頃にWindchillとArbortextをより統合して、コンテンツ管理と自動パブリッシュの機能を一括して提供できるようにするとのことである。



URL
  PTCジャパン株式会社
  http://www.ptc.com/
  Arbortext
  http://www.ptc.com/appserver/mkt/products/home.jsp?k=3591


( 北原 静香 )
2005/12/22 17:13

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