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米VMwareバルカンスキー氏、「VMwareは管理・運用機能を統合したスイートに進化」


米VMwareプロダクトマーケティング ディレクターのボゴミル・バルカンスキー氏
 ヴィエムウェア株式会社は、仮想化ソフトスイートの最新版「VMware Infrastructure 3(以下、Infra 3)」を6月中に出荷すると発表した。Infra 3の詳細について、来日した米VMwareプロダクトマーケティング ディレクターのボゴミル・バルカンスキー氏に話を伺った。


Infra 3は、VMwareがリリースしている各種ソフトを統合した仮想環境スイートだ。単に、各種ソフトを詰め合わせただけでなく、新しい機能を付け加え、企業での仮想環境の運用・管理が行いやすいようになっている
―Infra 3の特徴は何ですか?

バルカンスキー氏
 Infra 3には、3つのポイントがあります。データセンターのプロセスの自動化(簡易化)、多くのアプリケーションに対する新しいサービス、アプリーションに対して拡張性を持った環境が提供できます。Infra 3を使えば、数多くのサーバーを管理しているデータセンターにとって、サーバーを仮想環境により統合して、容易に管理・運用することができます。


―Infra 3はVMwareがリリースしている既存ソフトの組み合わせのように思うのですが。

バルカンスキー氏
 確かに、ベースとなる仮想環境においてはVMware ESX Server(以下、ESX Server)を使い、統合化の部分においてはVirtual Center、さらにVMotionや新しく追加されたVMware VMFS(次世代分散型ファイルシステム)、VMware Virtual SMPなどのテクノロジーが入っています。このベースの上に、Distributed Resource Scheduler(DRS:分散型リソーススケジューリング)、VMware High Availability(VMware HA)、VMware Consolidated Backup(VCB)というサービスが実現されています。



Infra 3に入っているVmotionテクノロジーを利用すれば、仮想環境を別のサーバーに稼働中に移動できる。仮想環境を利用しているユーザーは、移行をほとんど感じない
Infra 3に入っているVMware Consolidated Backupは、仮想環境そのままをスナップショットとしてバックアップできる
Infra 3に入っているVMware HAを使うことで、システムのハードウェア障害にも対応することができる。これにより、すぐに他のサーバーに仮想環境を振り分けて動作がストップすることはない

―Infra 3によってどんなことができるのですか?

バルカンスキー氏
 例えば、複数のサーバーをESX Serverで仮想化して、複数の仮想環境(OSとアプリケーションをカプセル化したもの)を作り出すことができます。ここまでだと、今までと一緒ですが、Infra 3を利用すれば、搭載されているVirtual Centerで複数の仮想環境を管理・運用できます。さらに、VMotion、VMFS、DRS、HAの機能を利用することで、トラブルが起こった物理サーバーから自動的に安全に動いている物理サーバーに仮想環境を移動したり、負荷がピークになった仮想環境を負荷の軽い物理サーバーに移行して、パフォーマンスアップしたりすることができます。これは、複数のサーバーを運用するデータセンターにとっては非常にメリットが大きいでしょう。


Infra 3は、企業に設置されている個々のサーバーを統合して、仮想サーバーインフラとして運用・管理できる
Infra 3では、仮想環境のリソースを統合的に管理しているため、ある仮想環境の負荷が高まったら、自動的にリソースを拡張してパフォーマンスをアップする
サーバーのハードウェアパワーが高くなるにつれ、仮想環境を使ってサーバーのパワーを活かした運用ができる

―Infra 3はデータセンターというキーワードが多く出てきますが、大規模なデータセンター向けですか?

バルカンスキー氏
 一般にいわれるインターネットのデータセンターというわけではありません。社内に複数のサーバーを運用している企業にとってはInfra 3は非常にメリットが大きいでしょう。社内にレガシー環境のサーバーが何十台もあるよりも、高速で高いパフォーマンスを持つ新しいサーバーを複数台導入して、Infra 3で必要な仮想環境を作り上げるほうが便利でしょう。


―企業において仮想環境を実現するソフトは、どちらかといえば、レガシーシステムをどのように運用するかといった後ろ向きの話が多いと思いますが、Infra 3は違うのですか?

バルカンスキー氏
 そうです。Infra 3は、企業のメインサーバーにおいても安心して仮想環境が使えるようにしたものです。今まで仮想環境といえば、信頼性や可用性に疑問がもたれていました。Infra 3は、こういったイメージを払しょくするでしょう。Infra 3を利用することで、システムを停止することなく事業部がリクエストする仮想サーバー環境を用意できるし、ハードウェアリソースも負荷に応じて自動的に配分されることになる。また、必要なときに仮想サーバーを用意して、必要がなくなればVCBでバックアップを取り、事業部が必要とするときに再度ロードしてその仮想環境を用意するといったダイナミックな運用も可能になります。数カ月に1度だけ動かすシステムなどは、こういった形で十分かもしれません。


Infra 3は、ESX ServerとVirtual Centerのスタータ(16万円)、ミドルレンジのスタンダード(60万円)、エンタープライズ(92万円)となっている。仮想環境だけを使いたいなら、無償のVMware Serverをダウンロードして使えばいい
―ESX Serverは3.0にバージョンアップしていますが、どのような部分が機能アップしていますか?

バルカンスキー氏
 まず、4つのCPUをサポートし、メモリ上限も16GBにまでアップしています。また、仮想マシンの最大数は128(今までは80)にまで拡張されています。仮想ディスクファイルを置くストレージも、ファイバチャネルだけのサポートから、iSCSIとNASもサポートすることになりました。iSCSIやNASは、ファイバチャネルに比べるとスピードは遅いですが、コストパフォーマンスを考えると導入しやすいかもしれません。このあたりは、コストとパフォーマンスのトレードオフになるでしょう。

 ESX Server 3.0は、単体では販売しませんので、Infra 3のスタータを購入してもらう必要があります。もし、サーバー用の仮想環境だけが必要な方は、無償のVMware Serverを使ってもらうことになります。ただし、Infra 3はESX Serverをベースにしているため、VMware ServerのようにホストOS上で仮想環境を作るのではなく、ハードウェアの上に仮想マシンを置いて、仮想環境を動かすため、高いパフォーマンスを提供できます。また、Infra 3スタータは、ESX ServerとVMFS、Virtual Centerなどをバンドルして、購入しやすい価格で提供しています。もし、VMotionやHA、DRSなどの機能を利用したいときは、Infra 3のエンタープライズ版を購入していただければ、フル機能が提供されています(スタータにVirtual SMPの機能が入ったスタンダード版も用意されている)。

 ESX Server 3.0になってパフォーマンスの改善も行っています。以前のバージョンに比べるとメモリ効率やCPUの占有率などが低くなっています。単純にどのくらい速くなっているというのは、アプリケーションやハードウェア環境によって異なるのでいいづらいのですが、私から言えるのは確実に速くなっているということです。


OSとアプリケーションの仮想環境を1つのパッケージとしたのが仮想アプライアンス。このため、すでにインストールも設定も済んでいるため、ユーザーは面倒な設定をせずにすぐにでも使用できる
―仮想アプライアンスとはどのようなものですか?

バルカンスキー氏
 Infra 3を使って、OSとアプリケーションを1つのパッケージとしたイメージを用意すれば、アプリケーションのインストールや設定などを行うことなく、すぐにでも必要とするアプリケーションを動かすことができます。米VMwareのサイトでは、もう仮想アプライアンスのパッケージが流通しています。多くのパッケージでは、Red Hat LinuxやFedora CoreなどのOS上に必要なアプリケーションが用意されています。例えば、WebサービスのベースとなるLinux、Apache、MySQL、PHPといったLAMPもすでにインストールと設定が行われてパッケージ化されているため、仮想環境にリストアすればすぐにでも利用することができます。これなら、管理者も面倒なインストールや設定に時間をかけなくても済みます。また、管理者自体が自社向けの基本パッケージを用意しておけば、独自のパッケージも簡単に作れます。


―Virtual Desktop Infrastructure(VDI)というのはどういったものですか?

バルカンスキー氏
 VDIは、Infra 3の仮想環境で動かすものをサーバーOSではなく、デスクトップOSにしたものです。仮想化することで、ユーザー数分のデスクトップPCを用意しなくても、サーバーのパワーを利用してデスクトップPCの環境を提供しようというものです。Infra 3の1つのソリューションです。ただし、VDIは仮想環境を利用するため、ディスプレイカードやディスクが仮想化されます。このため、オフィスで利用するPC(オフィスワーカーが使用するPC)をVDIにするのは、ディスプレイのパフォーマンスなどで得策とはいえないでしょう。やはり、コールセンターで利用するPCのように、多くのユーザーが統一されたPC環境を利用するといった用途には便利でしょう。



URL
  ヴィエムウェア株式会社
  http://www.vmware.com/jp/

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( 山本 雅史 )
2006/06/15 16:59

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