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日本IBM、XMLデータにネイティブ対応した第3世代データベース「DB2 9」


ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部、渡邉宗行事業部長

DB2 9ではXMLデータをツリー構造のまま格納することができる
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7月7日、RDBMSソフトの新版「DB2 9」を発表した。「Viper」の開発コード名で開発されていた製品で、リレーショナルデータとXMLデータを単一のデータベースで扱えるのが特徴。第1世代の階層型データベース、第2世代のリレーショナルデータベース(RDB)に続く第3世代と位置付けている。7月28日よりまずダウンロード版の提供が開始され、続いて9月22日よりパッケージ版の出荷を開始する予定だ。

 DB2 9は、日本IBMが提供するRDBMSの新版。リレーショナルデータだけでなく、従来は別のデータベースが管理のために必要とされてきたXMLデータも単一のデータベースで扱うことができる特徴を持つ。従来、RDBでXMLデータを扱う場合は、ツリーの情報をバラバラにして収納する「シュレッディング」、1列へそのまま格納する「CLOG」という2つの手法で対応していた。しかし前者ではスキーマの柔軟性を失う、後者では検索パフォーマンスが非常に落ちる、といった欠点があった。

 そのため、別途XMLデータ専用のデータベースを構築する手法も存在するが、この場合はリレーショナルデータを格納するデータベースと2つを運用することになるため、異なったスキルが必要になるほか、運用管理の手間が2倍になる、連携システムの開発に投資が必要、といった別の問題が発生してしまう。またXMLデータベースはまだ歴史が浅いため、RDBほど機能が成熟していない。

 そこで日本IBMでは、XMLにネイティブ対応可能なDB2 9によって、XMLデータをツリー構造を保ったまま格納できるようにした。同社のソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部、渡邉宗行事業部長が「XMLデータのイメージはツリー、RDBのイメージは表で、まったく構造が違うもの。これを1つのデータベースにそのままの情報で取り込んで、お互いのいいところを活用できるようにしたものが、ハイブリッド型のDB2 9だ」と説明したように、柔軟なデータ変更と、高速な検索という、XMLデータベースの長所をそのまま実現。運用・管理コストが約50%削減できるだけでなく、開発生産性が約30%向上するという。加えて、SQLでRDBとXMLの双方を検索できる機能、XQueryによってXMLとRDBの双方を検索できるほか、新たなオプティマイザーによって検索速度が約50%向上している。

 XMLは、金融関連のXBRL、放送・出版向けのNewsML、流通業向けのcXMLといった具合に、現在では多くの標準規格に採用されるようになっており、これらのXMLデータフォーマットでやりとりしたいという要望は非常に大きくなっている。富士キメラ総研の予測によれば、2005年に9億6000万円だったXMLデータベースの国内市場は、2010年には120億円規模になるとのことで、日本IBMではここに参入するほか、「(リレーショナルデータに加えて)XMLデータを持つのが大変だからやらない、という顧客にまで広がってくる。(市場は)今までのパイの話ではなくなる」(渡邉氏)として、さらに市場が広がると予測。リレーショナルデータとXMLデータの統合が可能ということを武器にして、新たな市場を作っていくとした。


 またDB2 9では、「今までのDB2を否定するものではない」(渡邉氏)との立場から、RDBの機能も向上させている。今回は新たに行単位でデータの圧縮を行う機能を搭載し、「圧縮機能によってストレージ容量を減らし、ランニングコストやハードウェアコストの削減を支援する」(同氏)とともに、セキュリティも強化。暗号化機能の強化と、行・列レベルで細やかなアクセス制御を行う「LBAC」機能の追加が行われている。

 なお日本IBMでは、DB2 9の販売に当たっては「新しいアプリケーション分野が創造できる」との立場から、ISVとの協業を進める方針。現在は約41社が対応を表明している段階で、「DB2そのものをより効果的に使ってもらうために、ISVのソリューションと組み合わせ、販売パートナーとともに提供する」(渡邉氏)としている。さらに開発者向け施策として提供している無償ダウンロード版「DB2 Express-C」も、7月28日からXML機能を載せたものがダウンロード可能になる予定。

 価格は、一般的な「Workgroup Server Edition」が114万円(プロセッサライセンス)、大規模向けの「Enterprise Edition」が415万円(同)。このほか、中小規模向けの「DB2 Express」が55万5700円(プロセッサライセンス)、個人向けの「DB2 Personal」が5万2600円、などとなっている。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20060707001.html

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( 石井 一志 )
2006/07/07 17:18

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