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サイベース、DB管理システムの最新版「ASE 15」を発表

大幅な機能強化を実現、アプリケーション組み込みに注力

早川典之社長
 サイベース株式会社は8月30日、エンタープライズ向けリレーショナル・データベース管理システムの最新版「Sybase Adaptive Server Enterprise(ASE)15」を9月15日から出荷開始すると発表した。

 「ASE」は、コスト効率に優れたビジネスクリティカルなシステム向けデータベース管理プラットフォーム。同社では、2000年に前バージョンの「ASE 12」を発売し、以来マイナーバージョンアップを行ってきたが、メジャーバージョンアップは約6年ぶりとなる。

 早川典之社長は、「前バージョンは当社の主要顧客である金融業界において、長い期間、満足して活用されていたため、大きな機能強化を行う必要がなかった。しかし、ここ数年で、データベース容量の拡大、パーティショニング技術への対応、クエリのパフォーマンス向上、セキュリティの問題など、数多くの要望が挙がってきたことから、これらを網羅して対応するために、今回の新バージョンで大幅に機能強化することにした」と新バージョン投入の狙いを述べた。


ASE 15の新機能と改善点
 「ASE 15」の大きな特徴は、1)巨大規模データベースのサポート、2)データ・セキュリティ機能の組み込み、3)新しいクエリ処理技術によるパフォーマンスの大幅向上-の3点。

 巨大規模データベースのサポートについては、「前バージョンのASE 12.5では、1つのデータベースの最大容量は4TBまでだったが、ASE 15では32TBまで大幅に容量を拡大した。さらに、サーバー全体での最大サイズも8TBから事実上無制限の1000PB(ペタバイト)以上までサポートが可能になった」(マーケティング本部プロダクトマネージメント・高木伸滋担当部長)という。このほか、1つのサーバーに割り当て可能なデバイス数は事実上無制限の20億個以上、各デバイスは最高で4TBの容量に対応するなど、ギガバイトからテラバイトへの容量拡大を図っている。

 データ・セキュリティ機能の組み込みでは、オン・ディスクでの暗号化を実現。これによって、アプリケーションを修正することなく、ASEのみですべての暗号化操作を実行できるようになった。また、カラムベースのシステムにより、社会保障番号、パスポート番号、クレジットカード情報などの重要な個人データを暗号化することも可能となった。

 新しいクエリ処理技術としては、最新のクエリ・オプティマイザ機能とクエリ実行エンジンを搭載することで、前バージョンから大幅なパフォーマンス向上を実現。ハードウェアのリソース消費量の軽減を図ることができる。

 これに加え、必要な情報だけをターゲットとするスマート・パーティション機能を利用することで、クエリ・パフォーマンスをさらに強化することが可能。この機能では、独立した物理デバイス上でデータベース・パーティションを配置できるため、万が一あるデバイスに障害が起こった際も、残りのパーティションを利用することで、可用性の向上と運用リスクの低減を実現する。

 このほか、統計値の自動更新、エンタープライズ・ビュー、グラフィカルなプラン・ビューア、新しい管理者のタスクを容易にするためのジョブ・ウィザード、最新のシステム・メトリックによるシステム内部状況の監視といった新機能によって、総所有コスト(TCO)コストのさらなる削減を図れることも特徴となっている。


巨大規模データベースをサポート アプリケーション修正なしでデータを暗号化 新クエリ・オプティマイザの性能

スマート・パーティション機能 サポートプラットフォーム

 なお、ASE15のサポートプラットフォームは、Solaris、HP-UX、Linux、AIX、Windowsにおける主要11プラットフォーム。なかでもLinuxでの性能は、ほとんど最適化なしで、前バージョンのASE 12.5.2に比べて10%以上の性能向上を実現しているという。

 価格は、WindowsおよびLinux版が1プロセッサ・コアあたり62万4000円から。UNIX版が同149万9000円からとなっている。


ASE 15の日本市場での展開
 今後の日本市場での展開について早川社長は、「これまでも強かった金融業界においてさらに新規顧客の開拓を図っていく。現在、米国で最新の金融向けパッケージが開発されており、すでにASE15の動作検証が終わっているものも多い。このタイミングで改めて日本の金融業界へのASE導入を推進していきたい。既存顧客の証券会社や旧都市銀行については、前バージョンから新バージョンへのアップグレードを進めていく」という。

 また、アプリケーションパッケージへの組み込みにも注力していく考えで、「すでにデータベースはコモディティ化が進んでおり、エンドユーザー側からすると、どのメーカーでも関係ないというのが実情。当社ではアプリケーションパッケージ市場に参入していないという企業特性を生かして、アプリケーションベンダーと協力し、とくに中小企業向けのERPパッケージへの組み込みを図っていく。これによって、ユーザーがデータベースを意識させずにアプリケーションを導入できる環境を提供していく」(早川社長)方針を述べた。

 これに向けて同社では、アプリケーション開発・販売パートナーを対象に、ASE 15のDeveloper Editionを無償で提供するプログラムを実施する予定。「Developer Editionでは、ASEの基本機能はもちろん、新機能である暗号化カラムやパーティションを含むほとんどのオプションを使用することができる。100セット限定だが、ASE15対応のアプリケーション開発を計画しているパートナーに幅広く提供していきたい」(高木担当部長)としている。なお、プログラムの詳細については、9月末までに同社Webサイトでアナウンスされる予定。



URL
  サイベース株式会社
  http://www.sybase.jp/
  プレスリリース
  http://www.sybase.jp/about_sybase/press/2006/20060830.html


( 唐沢 正和 )
2006/08/30 18:06

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