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マイクロソフト、同社初のERPソフト「Dynamics AX」を6月にも提供


マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部の御代茂樹本部長

Dynamics製品群のラインアップ

追加される日本向け機能
 マイクロソフト株式会社は4月18日、ビジネスアプリケーション製品群「Dynamicsシリーズ」のラインアップとして、同社初のERPソフトとなる「Dynamics AX 4.0」を6月にも提供することを明らかにした。国内では、CRMソフト「Dynamics CRM」が昨年9月から提供されており、Dynamics AXはそれに次ぐ第2弾となる。

 米Microsoftでは現在、ビジネスアプリケーション製品として4本のERPソフトと1本のCRMソフトを提供している。国内では前述の通り、Dynamics CRMをすでに提供しているが、ERP製品は4本をすべて提供するのではなく、「開発における将来性や設計の先進性を見て、AXのリリースを選択した」(マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部の御代茂樹本部長)という。

 Dynamics AX自体は、もともとデンマークのNavisionが開発した製品。同じくNavision製品をもとにする「Dynamics NAV」が中小企業向けであるのに対して、御代本部長が「Dynamics AXの採用規模で一番多いのは50~500名規模の企業。最近ではさらに、3000ユーザー以上の顧客でも導入されるようになってきた」と述べたように、中堅から上のセグメントを対象にしている。

 米国では、2006年6月から現行版の出荷が始まっており、日本語版の提供はまる1年遅れている形だ。この理由について御代本部長は「スタートの時点で日本対応の機能を最低限入れて提供するため。日本語機能自体はほぼ最初の段階から用意されているが、日本市場向けの機能を追加するための開発作業を進行中の段階であり、日本語版よりは日本版と呼んだ方が正しい」と話す。

 追加される機能は例えば、和暦対応やカタカナ表記、日本様式の財務諸表、全銀協フォーマットへの対応など。マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部の國持重隆AXプロダクトマネージャは、「当たり前のところからはじめて、日本の商習慣に合致した機能を適宜追加していく。法規制への継続的な対応も準備中だ」と述べた。

 基本機能については、現段階では日本向け機能の対応に一部課題を残すとしながらも、「ワールドワイドですでに9年の実績があり、企業で必要な業務領域の機能は一通りカバーした。中堅向けに日本で販売されている他社製品と比べて遜色(そんしょく)はない」(國持AXプロダクトマネージャ)と、強気な姿勢を示す。また、Office製品群をはじめとしたマイクロソフト製品との親和性も売りの1つ。Outlookライクな専用ツールのほか、Excel、Outlookをフロントインターフェイスとして活用できるため、使い慣れたインターフェイスの利用が可能で、ユーザーの操作負荷を軽減できるという。


Dynamics AXの機能概要

Dynamics AXのライセンス体系
 マイクロソフトではこのDynamics AXについて、中堅企業向けには基幹システムとして、大企業向けにはHub&SpokeモデルにおけるSpoke、あるいは特定部門での業務アプリケーションとして展開していきたい考え。Microsoft自身でもXBOX事業部においてDynamics AXを採用しており、御代本部長は「全社の会計ではSAPを利用しているが、XBOX事業部が新しくできたときに生産管理部門の業務システムとして採用した。すべてSAPのシステムを入れるのは高額になるので、Dynamics AXが支店で採用されるケースは良くある」と説明している。

 販売はパートナー経由で行うが、通常の製品のようにマスターディストリビュータを設けて展開する方式ではなく、個々の販売パートナーと1対1で契約する方式を採用した。マイクロソフトでは、先行しているDynamics CRMと同様、Dynamics AXをパートナー独自のソリューションにおけるコア部品として利用してもらい、広く展開していきたい意向である。

 御代本部長は、「ほぼ100%のパートナーがすでに自社製品を含めたERP製品を展開しているが、Dynamics AXによって新たに開拓できるようになる領域もあるだろう。ソフトベンダであっても、例えば給与・販売系に強いところがDynamics AXと組み合わせることで、新しい領域に取り組んでいけるケースもあるだろう」と述べ、一見競合関係に見える企業とでも、協業が成立することはあるとの見解を示した。

 なおパートナーについては、Dynamics CRMのように拡大を第一義にするのではなく、少数のパートナーと製品導入に関するノウハウを蓄積し、まずは確実なソリューション提供を目指していく姿勢を見せる。

 ラインアップは、すべての機能を含む「アドバンスドマネージメント」と、会計機能中心に必要機能をまとめた下位版「ビジネスエッセンシャルズ」の2つで、このほか、追加機能をモジュール形式で発売する。価格や詳細な発売日次などはまだ明らかにされていない。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 石井 一志 )
2007/04/18 17:02

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