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マイクロソフト、Dynamics CRMベースの分析テンプレート

Excel活用で低コスト・簡単にBI実現

マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部 新保将製品戦略部長
 マイクロソフト株式会社は、2006年に発売したCRMソリューション「Microsoft Dynamics CRM」をデータソースとした、「Microsoft Dynamics CRM分析テンプレート(以下CRM 分析テンプレート)」の提供を6月末日から始める。

 今回のテンプレート提供の狙いをマイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部 新保将製品戦略部長は次のように説明する。

 「CRMは大きく分類すると、過去のユーザー動向を分析する、どちらかといえば守りにあたる実行系CRMと、未来の顧客動向を分析する攻めの分析系CRMの2つがある。実行系CRMは、営業活動の管理や商談やサービス履歴など業務の効率化に主眼を置いたSFA、コールセンターなどのソリューションが該当する。一方、分析系CRMは、顧客情報の統合と可視化によって顧客を理解し、潜在的需要の発掘や戦略を策定するためのもので、データウェアハウスやBIソリューションが該当する。BIの活用によって、顧客満足度の向上、既存顧客との関係が強化されるなどメリットがあることは数字によって明らか。ただし、その重要性は理解し、導入するものの、思うような加工ができない、思ったよりも価格が高かった、などの理由で顧客は十分な満足度を得ていない。そこで当社では、誰でも使える全社的なビジネスインテリジェンスを提案する。フロントエンドにExcelを活用することで、BIという言葉を知らなくても、安価に分析型CRM実現が可能になる」。


BIの導入効果が高いことは、調査会社の調査結果でもはっきりと実証されている しかし、実際にBIを導入すると期待と現実に大きなギャップがあることも数字で立証されている マイクロソフトが考える、全社で活用できるBI。「専門BIツールが、高機能だが高価で、特定の人しか使えないF1カーだとしたら、Excelを使ったBIは誰もが使える大衆車」と新保部長

リアルタイム業績管理のシステム構造

リアルタイム業績管理の実際の画面。スコアカードによる進ちょく状況を矢印と色で表現している
 具体的な中身としては、「リアルタイム業績管理」では、Microsoft Office SharePoint Serverで構築されたポータルページに、各種KPI(業績評価指標)をもとにしたビジネススコアカードをリアルタイムでグラフィクス表示する。さらに詳細が知りたい場合にはドリルダウンすることで詳細分析を行うことも可能。CRM分析テンプレートで、売上高や新規顧客獲得数、問い合わせを解決するまでの平均時間、サービス契約更新率など31のサンプルKPIと、95の定型サンプルレポートが提供されている。

 「非定型アドホック分析」は、Excelと接続することによって、Excelのピボットテーブルやピボットグラフを利用した、アドホックな多次元分析を実現する。非定型な分析内容であっても、CRM分析テンプレートとして、68のサンプルメジャー、13のサンプルディメンジョンがキューブへの接続が定義されたExcelシートとともに提供されるので、経営企画などの事業企画担当者自身が、さまざまな角度からの詳細分析を行うことが可能だ。

 「予測分析」は、SQL Server Analysis Servicesに含まれている高度なデータマイニングアルゴリズムを利用することで、蓄積された顧客情報の中から規則性を見つけ出し、ビジネスプロセスのパフォーマンス向上に繋がる提案や意思決定案を生成する。過去の商談の中から勝利に終わった商談と、実現しなかった商談の傾向を分析して、現在進めている商談の成否を予測し、成功する傾向のある商談を強化する、といった活用を行うことができる。

 「これまで開発コストがかかっていたBIが、即導入できる。しかも、高額なBIのライセンス料がかからないことが今回の製品の特徴となっている」(マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括本部 MBSプロダクトマーケティング本部 吉田周平CRMプロダクトマネージャ)。


非定型アドホック分析の構造 データマイニングによって、現在の商談の成否を、過去商談の傾向から導きだし、注力すべき商談を選び出す 予測分析のシステム構造

 テンプレートは無償の共有ソフトウェアとして、直接エンドユーザーにではなく、まずパートナー企業に提供される。パートナー企業は、独自のソリューションを開発し、エンドユーザーに提供することも可能となる。ただし、「将来的にはDynamics CRMのユーザーへ直接テンプレートを無償提供することも検討中」(吉田プロダクトマネージャ)としている。

 最初のパートナー企業として、ベリングポイント、ケイ・ピー・アイ・ファクトリーの2社が今回のテンプレートを活用したソリューション提供を発表した。

 ベリングポイントのCRM統括責任者 マネージングディレクターである中本雅也執行役員は、「当社ではアカウントマネジメント制度導入支援のコンサルティングサービスを強化するという発表を、5月14日付けで行った。今回、それに連動するツールとして、Dynamics CRM分析テンプレートを用いたダッシュボード機能を開発。これまではコンサルティングだけを行ってきたが、ツールを活用したKPI管理高度化を目指し、同ソリューションをコンサルティングサービスとあわせて提供していく」と説明した。

 ケイ・ピー・アイ・ファクトリーの池照直樹社長は、「顧客先の声として、BIツールを導入していても、結局Excelに落とし込んで加工作業を行っているユーザーも多い。そうした実情を踏まえ、今回のテンプレートを基盤に、独自の分析軸を追加提供する。自社から販売するだけでなく、システムインテグレータに卸して販売していくことも検討している」と話している。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3057

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( 三浦 優子 )
2007/05/15 18:35

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