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日本IBM、新形態のITアウトソーシング「AoD」-第1弾はSAPのERPソフトが対象


アプリケーションズ・オンデマンド(AoD)のメリットと提供イメージ

アウトソーシング・セールス事業担当の平手智行執行役員
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は5月30日、ERPやCRMなど主要ビジネスアプリケーションのインフラを構築・運用する新サービス「アプリケーションズ・オンデマンド(AoD:Applications on Demand)」を提供すると発表、その第1弾として、SAPのERPソフトウェアに対応する「AoD-SAP」を同日より販売開始した。

 AoDは、主要ビジネスアプリケーションを利用する際に必要なハードウェア、基本ソフトウェア、ネットワークなどのインフラを、米アリゾナ州など6か所に設置した米IBMの堅牢なデータセンター内に用意し、これらの資源をネットワーク経由で提供するサービス。また、IBMのグローバル・ソリューションを生かし、システム運用をインドで、日本語での顧客サポートをオーストラリアの拠点で、それぞれ対応することによって、世界規模でのリソース最適化を図り、24時間365日の高品質なサービスを低価格で提供する。

 アウトソーシング・セールス事業担当の平手智行執行役員は、新サービスを提供する背景について、「顧客がアウトソーシングを活用する目的の一つとしてコスト削減はもちろんだが、最近ではこれに加え、特定スキル/人材不足の解消や導入期間の短縮が強い要望としてあがっている。今回のAoDサービスは、IBMの豊富な経験をもとにサービスをメニュー化することで、短期間で安価に高品質のサービスを提供することが可能となり、顧客からの要望にすべて応えることができる」としている。

 「AoD」では、IBMが提供するインフラを活用するため、顧客は自身で資産を持つ必要がなくなるほか、対象業務を拡大する場合も、IBMが必要な資源の追加を行うことで柔軟かつ迅速に対応できる。さらに、すでに主要ビジネス・アプリケーションを導入している顧客も、AoDへ移行して、IBMに運用保守をすべて任せることによって、運用保守の負担を大幅に軽減することができるという。


AoD-SAPのサービスメニュー

AoDと従来のSAP運用との違い
 今回、「AoD」の第1弾として販売開始する「AoD-SAP」は、SAPのERPソフトウェア用のインフラ構築・運用サービスを提供するもの。サービスメニューは、SAPを新規導入する顧客向けに短期間で開発・テスト環境を構築する「デベロップメント・サービス」と、本番環境の運用を行う「フル・サービス」の2種類を用意。

 本番運用向けの「フル・サービス」には、Basis設定およびテクニカル支援から、システム運用・管理、サーバー資源提供、データセンター/ネットワークまでのすべてのサービスが含まれるが、開発・テスト用の「デベロップメント・サービス」では、このうちBasis設定およびテクニカル支援のサービスがオプションとなる。なお、両メニューともSAPアプリケーションのライセンス、開発・保守のサービスは含まれない。

 また、「フル・サービス」では、顧客のシステム運用規模にあわせ、1000SAPS/150GB容量の「XS」、3300SAPS/250GB容量の「S」、5500SAPS/400GB容量の「M」、1万/650GB容量の「L」という4種類の標準サービスを用意。これに、追加インスタンスやトランジション、ハイ・アベイラビリティ、災害対策、OS/DBマイグレーションなどの各種オプションサービスを追加することで、段階的なサービスメニューの拡張を実現する。


 同サービスの導入メリットについて平手執行役員は、「顧客が自営でSAPを運営するケースと比較して、最大で50%の運用コスト削減を図ることができる。導入期間も、通常は自営だと3~6カ月か程度かかるところを、その約1/3の期間に短縮でき、最短では約3週間でSAPインフラ環境の構築が可能となる。さらに、品質についても、全世界で170社のAoD実績のなかで、SAPアプリケーションは50社・420SAPインスタンスを超える稼動実績を持つ。これをもとにプリパッケージとして最適な機能を提供できるとともに、サービス品質の継続的な改善を行うことができる」と説明した。

 このほか、顧客の業務遂行に必要な障害・回復情報およびサービスレベルなどの管理情報を収集・管理する「iSRVCE」ポータルを提供。サービス要求の入力と状況表示や、システムアラートとヘルスチェックを行うポータル機能をはじめ、ナレッジ機能、メータリング/レポーティング機能、管理機能を備えており、資源計画立案や運用管理における情報収集ワークロード・管理ワークロードの大幅削減を図ることが可能となる。

 価格は、「デベロップメント・サービス」が月額約110万円から、「フル・サービス」は「XS」の場合で月額約220万円から。基本契約は3年間。

 日本IBMでは、中堅企業を中心として、コストやスピードを重視する顧客、SAPモジュール・SAPS値の拡張を予定している顧客、海外展開を考えている顧客をターゲットに、同社直販で営業展開していく方針で、今年度10社への販売を目指す。

 なお、米国では、SAPのほかにOracleやSiebel、PeopleSoftの「AoD」を展開しているが、「日本における第2弾のビジネスアプリケーションと提供時期は未定」としている。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/20070530001.html

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( 唐沢 正和 )
2007/05/30 18:21

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