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PCA、業務ソフト「PCA9シリーズ」のSaaS対応版を5月に提供


テスト版の「PCA for SaaS」。サーバー側にアクセスし、データ入力を行っているが、画面は通常パッケージとほぼかわりなく、入力レスポンスもクライアントを利用している場合と大差ないスピードで入力できる

水谷学社長

PCAの考えるSaaSモデル
 ピー・シー・エー株式会社(以下、PCA)は2月15日、新製品説明会「PCA戦略フォーラム2008」を東京・秋葉原のUDXビルで開催。「国内の中堅・中小企業向けパッケージソフトメーカーとしては初めて」(水谷社長)となる、5月に提供開始予定のSaaS対応ソリューション「PCA for SaaS」を公開した。なお、SaaS対応版が提供される予定の中堅・中小企業向け業務ソフトパッケージ「PCA9シリーズ」は、内部統制を行うための新機能などを搭載して、2月18日から順次発売する。

 PCA for SaaSでは、ユーザーは通常製品同様にパッケージを購入、それをクライアントにインストールした上で、PCAが提供するデータセンターのサーバーと交信する、「ソフトウェア+サービス」スタイルを採用。アプリケーション画面もWebブラウザベースではなく、通常のパッケージ製品とほぼ変わらない画面構成とした。

 このスタイルを選択した理由を水谷社長は、「当社のこれまでのビジネスモデルは、販売パートナー経由で製品を提供するもの。SaaSになっても販売パートナーが収益を得られるビジネスモデルを選択する必要があった。また、業務ソフトの場合、データ入力量が多く、Webブラウザのレスポンスではユーザー側から不満の声があがる可能性がある。また、クライアント側が一切データを持たない構成では、万が一、インターネット上にトラブルが起こった場合、伝票発行ができなくなる可能性がある。給与明細や請求書は、インターネットのトラブルが起こったとしても待ったなしで発行しなければならないもので、そうした事態にも対応できるものとした」と説明している。

 PCA for SaaSでは、PCAがパッケージで提供する「PCA会計9」、「PCA給与9」、「PCA商魂9」、「PCA商管9」、「PCA公益法人会計 V.9」をSaaS形式で提供する。サーバー側のアプリケーション、データベースについては、PCAが契約している大手データセンター側で管理。ユーザーはSaaS用パッケージを購入し、自分のクライアントPCにインストールした上で、月額使用料を支払って利用する。

 ただし、バージョンアップについては通常のSaaS同様、オンラインで行う。連携するアプリケーションがあることを考慮し、自動更新ではなく、ユーザー側に確認を行った上でバージョンアップを行うが、クライアント、サーバー側の両方にアプリケーションデータを保有し、クライアントに利用しているPCの故障や入れ替えが発生した場合でも、利用しやすい環境とする。


SaaS製品担当の戦略企画部 企画課、篠崎洋介係長

PCA for SaaSの特徴

PCA製品のそれぞれのポジション。スタンドアロン版に加え、ネットワーク版の新ラインアップとしてSaaS版の提供を開始する
 「当社では2006年、PCA8 V.2シリーズからSaaSに対応する取り組みを始めていた。その後、社団法人コンピュータソフトウェア協会のSaaSビジネスモデルの実証実験に参加したほか、経済産業省の中小企業向けSaaS活用基盤整備事業、マイクロソフトとKDDIのBusiness Portプログラムなどで、水面下でSaaSに対応するための取り組みを続けてきた。その結果、SaaSは自社でサーバーを持てない中小企業にとって、コストや運用負荷なくネットワーク化のメリットを享受できる点に着目。今回のサービス開始を決定した」(PCA 戦略企画部企画課の篠崎洋介係長)。

 サービスの特徴は、1)Webブラウザ画面ではなく、パッケージ版と同様のプログラムを利用するため、操作性、利便性は従来のパッケージ版そのまま、2)自社でサーバーを導入することが難しい小規模企業であっても、専任のシステム管理者不在のままサーバーを利用することが可能で、複数拠点を持つ企業も複数拠点からの利用が可能になる、3)通常のパッケージ版で実施している「PCA認定ソリューション製品」については、SaaS版でも、テキストファイルベースでの連携が可能、4)PCA for SaaSのバックアップデータはパッケージ版でリカバリが可能なほか、逆のリカバリも可能、5)導入当初、パッケージソフトの購入が必要なため、販売パートナーにとっても収益があがるビジネスモデルになる、の5点。

 初のサービス事業となるため、PCA側ではサービス開始当初は第1ステップとして顧客数を160社までに限定。利用時間も24時間体制ではなく、朝7時から深夜0時までの17時間に限定し、残り時間でデータバックアップをとるなどの作業を行う。

 この160社というユーザー数は、利用するブレードサーバーから物理的に算出したもので、「この数であれば、どんなニーズにも対応できると判断した」(篠崎係長)という。

 価格は、サーバー側の初期設定料金である「PCA for SaaS スターターキット」が10万円(税別)。最初に購入が必要なパッケージの価格は、財務会計サービス「PCA会計9 for SaaS」、給与ソフト「PCA給与9 for SaaS」、販売管理ソフト「PCA商魂9 for SaaS」、仕入れ管理ソフト「PCA商管9 for SaaS」の4製品がいずれも72万円(税別)、「PCA公益法人会計 V.9 for SaaS」は93万円(同)だが、PCA製品のユーザーに対してはバージョンアップ価格も用意する。月額使用料は、3クライアントライセンス付きの「基本ライセンス TYPE6」で2万4000円(税別)。

 SaaSとしては比較的高額の設定となるが、PCA会計9のSQL Server 3CAL付きパッケージを購入した場合に比べ、113万円割安になる。また、同社がユーザー向けにアンケート調査を行った結果、算出した数字だという。

 PCAでは、この体制で半年程度運用を行い、運用上の問題点がないことを見きわめた上で、外部のパートナー企業が運営・管理するデータセンター経由で外部パートナーのサービスとしてPCA for SaaSを提供するビジネスの提供も検討している。



URL
  ピー・シー・エー株式会社
  http://www.pca.co.jp/

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  ・ PCA、内部統制機能を強化した「PCA会計9シリーズ」-SaaSでの提供も(2007/11/30)


( 三浦 優子 )
2008/02/15 18:49

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