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Dynamics CRM 4.0の画面イメージ
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業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括 統括本部長の御代茂樹氏
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柔軟に形態を変更可能なサービスモデルを提供する
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マイクロソフト株式会社は2月29日、CRM(顧客関係管理)ソフトの新版「Dynamics CRM 4.0」を発表した。60以上もの新機能を追加するとともに、パートナー企業がSaaSを提供するためのプラットフォームとしても利用可能になった点が大きな特徴。提供は3月3日より開始される。
Dynamics CRMは、マイクロソフトが自社で開発したCRMソフトで、Excel/Word/OutlookといったMicrosoft Office製品をインターフェイスとして利用しながら、日々の活動で得られた顧客情報や活動内容などを蓄積することができる。国内では前バージョンの「Dynamics CRM 3.0」が2006年9月より提供されているが、従来は導入企業の社内へシステムを構築するオンプレミス(自社運用)型の形態でのみ提供されていた。
しかし今回の新版では、1つのサーバー内に複数のシステムを構築可能なマルチテナンシーをサポートするなど、多くの強化が行われた結果、SaaS型でのサービス提供プラットフォームとして利用できるようになったという。業務執行役員 マイクロソフトビジネスソリューションズ事業統括 統括本部長の御代茂樹氏は「SaaS型とオンプレミス型、どちらがいいとは必ずしもいえないので、顧客へ選択肢を提供することが非常に重要だ」と述べ、2つのタイプを提供することで、顧客の幅広いニーズをとらえられるようにしたと説明している。
さらに、単に提供形態を2つ用意するだけでなく、顧客がそれらの間を柔軟に切り替えられるようなシステムも整えた。SaaS形態でサービスを利用していたユーザーが、業態の変更や規模の成長、全社展開といった理由でオンプレミス型へ切り替えられるよう、純正の移行ツールを用意。データはもちろんのこと、独自のカスタマイズ部分についても、再開発なしでの移行を可能にしている。「移行をしようとしても、SaaSだけのベンダーでは『次はどこへ行けばいい?』となるし、両形態を提供していてもアーキテクチャが違うから、同じ開発を再度必要とするようなベンダーもある」と指摘した御代氏は、カスタマイズ部分を無駄にせずシームレスな移行を可能にすることが、ユーザーの視点からあるべきホスティングモデルだと強調していた。
販売については、従来の形態、つまり主にオンプレミス向けのライセンス販売を継続。SaaS型については、サービスプロバイダ向けのライセンスをパートナーへ提供し、そのパートナー経由でDynamics CRMのSaaSを利用できるようする。北米では「Dynamics CRM Live」の名称でサービスを直接提供している米Microsoftだが、御代氏は「他地域での展開は考えていない」と断言。「競合ベンダーのように直接サービスを提供し、パートナーには販売の中継ぎだけ(を任せる)ということはない。当社の場合、パートナーがそれぞれ付加価値をつけて、顧客へサービスを提供するモデルになる」と提供形態を説明した。
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BPOサービスをあわせて提供することで、CRMの価値を高める
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今回より、2つの新しいクライアントライセンスが提供される
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専務執行役 ゼネラルビジネス担当の窪田大介氏
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また別の観点として、企業での営業活動は自社内ですべての流れが完結するわけではなく、企業情報のメンテナンス、見込み顧客へのテレセールス、名刺情報のスキャンといったBPOサービスを活用している例も多い。ただし、それらのデータをまとめて管理している企業はまだまだ少なく、データはバラバラのまま個別に管理されてしまっているのが現状だ。そのためマイクロソフトでは、BPOサービスをDynamics CRMを核につなぎあわせることで、データの活用を最大限行えるというメッセージを発信。BPOサービスの提供ベンダーとパートナーシップを組み、SaaS型の際の付加価値としてユーザーへ提供できるようにしていく方針。
このほかのDynamics CRM 4.0の機能強化としては、多言語・他通貨への対応、クラスタリングやロードバランシングのサポートによる可用性・パフォーマンスの向上、外部データの一括インポート、データクレンジングのサポート、POP3/SMTP対応、などが行われている。
主にオンプレミス型のユーザーを対象とするライセンスは、サーバー/クライアントの両ライセンスから構成され、サーバーライセンスのラインアップには、5ユーザーまでの小規模向け「Workgroup Server」、シングルテナントでの利用に限定した「Professional Server」、グループ企業との共同利用などのマルチテナント環境構築が可能な「Enterprise Server」、が用意された。1ライセンスあたりの参考価格はライセンス形態によって異なるが、もっとも小規模向けのオープンライセンスの場合で、Workgroup Serverが33万5000円(5CAL付き)、Professional Serverが26万8000円(CAL別途)、Enterprise Serverが66万9000円(同)。
クライアントライセンスは、これまでと同様の、ユーザーごとに課金される「User CAL」が13万4000円/ユーザー、今回より新設された、デバイスごとに課金される「Device CAL」が13万4000円/台。Device CALはシフト制で1日3交代するコールセンターなど、1台のデバイスを複数人で利用する環境に向く。また、参照機能に限定した「Limited CAL」も新設され、こちらは1ライセンスあたり4万円。
SaaS形態時の価格は、パートナーのサービス提供がまだ先ということもあり、現段階では未定。今回、9社のSIパートナーがSaaS形態での提供を表明しており、そのうち、日立情報システムズは、8月のサービスインを目指して準備を進めているとした。
なお製品発表会の冒頭では、2月1日付けでマイクロソフトへ入社し、専務執行役 ゼネラルビジネス担当に就任した窪田大介氏が登壇。「当社にとって今年は、企業向け製品がめじろ押しの重要な年。Dynamics CRM 4.0もその1つで、日本の顧客のカスタマーリレーションを応援する新製品として非常に期待できると考えている」とアピールしていた。
■ URL
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
プレスリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3373
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( 石井 一志 )
2008/02/29 15:41
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