Enterprise Watch
最新ニュース

一連のユーザー行動を見える化、Webアクセス解析ソフト「RTmetrics」SaaS版


取締役の内野明彦氏

従来のライセンス・OEM版とSaaS版の比較表
 オーリック・システムズ株式会社(以下、オーリック)は5月12日、Webアクセス解析ソフト「RTmetrics」のSaaS版「RTmetrics SaaS Edition」を発表した。同日から提供を開始する。

 RTmetricsは、パケットキャプチャ方式のWebアクセス解析ソフト。1000万PV/月以上の大規模サイトで多く導入されており、中には100億PV/月以上の超大規模サイトへの導入事例もあるという。今回のSaaS版は、逆に、これまでカバーできていなかった中小規模のWebサイトがターゲット。具体的には、50万~500万PV/月の中小規模サイトが対象で、同市場のニーズに合わせた特長のほか、10万円/月からという低価格も実現している。

 SaaS版では、これまでのパケットキャプチャ方式ではなく、タグ方式を採用。そのほか細かい特長として取締役の内野明彦氏は、1)単なる指標分析ではなく、ユーザーの動きが分かる解析を重視したこと、2)マクロ/ミクロ視点の両面から解析が行えること、3)解析環境が変化しても導入・運用が簡単であること、などを挙げる。「激戦の中小規模市場において、これらの特長が差別化ポイントとなる」(同氏)という。

 一般的に解析ツールでは、PV/滞在期間/コンバージョン(目標達成)率など各KPIを主眼に解析を行う。しかし、「単純なアクセス指標による解析では、Webサイトを正しく分析・評価することはできない」と同氏は問題点を指摘。そこで、RTmetricsでは、すべてのKPIに対して、Webサイトにおけるユーザー行動の一連の流れを横ぐしして解析できるようにした。具体的には、ユーザーの「Webサイト流入」「直帰」「滞在」「コンバージョン」の流れを可視化しており、検索ワード・入り口ページ・通過ページ・滞在時間・新規/リピートなどさまざまな切り口から設定した抽出条件に対して、それぞれのセグメントごとにユーザー行動傾向を分析できるという。これが1つ目の特長だ。


一般的な解析ツールは、KPIを主眼にレポート。これではユーザーの動きが断片的にしか把握できない RTmetricsでは、ユーザーの一連の動きを俯瞰(ふかん)して見る 任意に設定したユーザーセグメントごとにその動きが分かるため、より詳細な解析が可能

グローバルメニューが、マクロ視点向け、ミクロ視点向けに大別されている

全詳細データを保存。視点を設定する度に再集計することで、タグの修正を不要に
 レポート機能は、「現状把握」「課題解決」「詳細分析」「広告効果」などに分かれており、解析レベルと目的に合わせて柔軟に選択できる。例えば、マクロ視点となる「現状把握」レポートには、解析ノウハウが組み込まれており、解析初心者でも簡単にWebサイトの状況が把握できる。またミクロ視点の「詳細分析」では、条件抽出フィルタなどにより、強力にドリルダウンしていくことができるという。これが2つ目の特長。

 一方、従来のタグ方式には大きな問題点があった。内野氏によると「従来、タグ方式では一度タグを埋め込んだあと、解析の視点を変えたいときは、その都度タグレベルの修正が必要だった」という。ユーザー傾向もニーズも移ろいやすいインターネットの世界において、これがレポート設定担当者の大きな負担となっていた。3つ目の課題でこの問題を解決する。

 RTmetrics SaaS Editionでは、アクセスの全詳細データを生ログとしてすべて保存し、解析視点を変更した際に機械的に再集計する仕組みを採っている。通常、処理が重くなりがちなこのアプローチだが、「大規模サイトを相手にしてきたノウハウで克服。結果、原則的に共通タグの設置のみでタグ修正要らずの解析が可能」(同氏)としている。

 提供プランは、「エントリープラン」「スタンダードプラン」「パワーアッププラン」の3種類。0~300万PV/月の場合の価格はそれぞれ、10万円(税別)、15万円(同)、20万円(同)。ある一定量までPV数が上がると価格が上がる課金体系となっており、スタンダードプランでは、300万~500万PV/月で30万円(同)、500万~700万PV/月で40万円(同)となる。


代表取締役社長の幾留浩一郎氏
 700万PV/月以上の大規模サイトには、従来のライセンス版で対応する方針。代表取締役社長の幾留浩一郎氏によれば、「大規模サイトでは自前でソフトを使う方が、コストも低い上、柔軟にカスタマイズもできるため適している。今回のSaaS版は中小規模サイトを採り入れるための足がかりで、Webビジネスの拡大に応じてライセンス版にステップアップするような戦略を採っていくつもり」とのこと。

 なおSaaS版では、RTmetricsの最大の特長ともいえる「モバイル対応」がされていない。これは一般的なタグ方式ではモバイルでは動作しないためであるが、「同社の強みがモバイル対応にあるということは認識している」と幾留社長。Webアクセス解析市場の強豪としてグーグルやオムニチュアがいるが、「彼らとの差別化を図る一番の要素が“モバイル対応”。今回のRTmetrics SaaS Editionにおいても、ケータイ向けのタグや、キャリアごとに異なるケータイ端末IDの差を吸収するような仕組みを開発中。すでに、ベータ版として試験運用も開始している」と、今後のモバイル対応の姿勢ものぞかせた。

 幾留社長はまた、「中小規模サイト市場では後発となる当社が、ほかと同じことをやっていても勝ち目はない。今回紹介した特長はすべて、日本のマーケティング担当者のニーズを的確にくみ取ろうとした結果。これらを差別化要因として、まずは初年度150社への販売をめざしたい」とした。



URL
  オーリック・システムズ株式会社
  http://www.auriq.co.jp/
  プレスリリース
  http://www.auriq.co.jp/press/2008/05/saas-release.html?link=top


( 川島 弘之 )
2008/05/12 18:07

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.