Enterprise Watch
最新ニュース

セールスフォースとNTTグループ、VPN経由でSaaSを提供

“NGN over Salesforce”も視野に入れて連携を強化

左から、セールスフォースの宇陀栄次社長、NTT Comの野村雅行副社長、NTTの端山聡チーフプロデューサー

Salesforce over VPNの提供イメージ。ゲートウェイより右側の「VPN Edition」ライセンスと、左側のVPN回線を個別に組み合わせて利用する

モバイルや付加サービスの提供も予定する
 株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)とエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、日本電信電話株式会社(以下、NTT)の3社は5月26日、VPNを利用したSaaS提供で提携した。7月1日より、VPN経由でSaaSを利用できる「Salesforce over VPN powered by NTT Communications」(以下、Salesforce over VPN)の提供を開始する。

 Salesforce over VPNは、セールスフォースのSaaS型CRMアプリケーション「Salesforce」を、VPN経由で利用できるようにしたもの。NTT Comの代表取締役副社長、野村雅行氏によれば、従業員100名以上の国内企業のうち、約7割がVPNサービスを利用しているという。そうした環境でSaaSを利用しようとすると、一般的なSaaS型アプリケーションはインターネットを経由するため、VPNとインターネットのゲートウェイを自分で作ってアクセスすることになる。しかし野村氏はこういった手法について、「構築が煩雑で、社内からの利用が難しい場合があった」と指摘。また、インターネットを経由することがセキュリティポリシー上許されず、SaaSを使用したくとも使用できなかった企業もあるとする。

 そこでNTT Comとセールスフォースは、NTT Comの国際VPN回線と、セールスフォースのデータセンターを直結。顧客の拠点から国際VPN回線までについても、NTT Comの各種VPNサービスを用いることで、一切、インターネットを介さずにSalesforceサービスを利用できるようにした。VPNは、IP-VPN「Arcstar IP-VPN」のほか、広域イーサネットサービス「E-VLAN」、インターネットVPNでも利用可能で、必要な帯域、サービスレベルなどに応じて、拠点に最適なものをユーザーが選択できる。

 また今後は、PCだけでなく携帯電話からもSalesforce over VPNを使えるようにする意向で、まず9月をめどに、NTTドコモのiモードを用いた接続をサポート。今後ニーズに応じて、ほかのキャリアへも対応させていくとした。さらに2008年度内には、提案書や見積書、請求データなどを、Salesforceのデータベースとひも付けして格納できるストレージサービスの計画を予定しており、ソリューションとしての展開も図りたい考えである。

 セールスフォースの代表取締役社長、宇陀栄次氏は、「当社のサービスは、フロントエンドの軽いところから、『Sales』がとれたforce.comまで広く採用されてきたが、過去、何度もVPNの対応を聞かれてきた」と、VPN対応の必要性を強調。「今回のサービス提供で、(SaaS利用の)心理的障壁が除けると思っている。かなり、ミッションクリティカルに近いところにまで採用されるのではないか」と述べている。

 Salesforce over VPNのうち、SaaS部分の価格は、初期費用が2万円/ID、月額費用が、主に中規模向けに提供される「Professional VPN Edition」で8500円(税別)/ID、最上位の「Enterprise VPN Edition」で1万6000円(同)/ID。VPN Editionではない通常のサービスと比べて、1000円(税別)高く設定された。販売活動は、セールスフォースとNTT Comの双方が行う。またユーザー企業は、必要なID分の契約をした上で、必要な拠点分のVPNを別途NTT Comと契約することになる。


NGNのメリットを生かした、セキュリティ機能の提供例
 なお3社では今後、NTTグループが推進しているNGN(次世代ネットワーク)を経由した「Salesforce over NGN」といった形でも、Salesforceの展開を推進したい考え。インターネットに比べ、高品質で安全性・信頼性に優れるNGNの特性を生かすと、企業向けの付加価値サービスが提供できることから、NTTグループでは、セールスフォースなどのアプリケーションパートナーとの連携を進める。付加価値の例として、NTTの研究企画部門 チーフプロデューサーの端山聡氏は、NGNが持つ認証機能を挙げ、「回線認証の結果をアプリケーションパートナーへ引き継ぐことで、パスワード、ICカードなどによる(ユーザー)認証を補強できる」と説明した。この機能については、年内をめどに提供準備を進めていくとのことである。



URL
  株式会社セールスフォース・ドットコム
  http://www.salesforce.com/jp/
  エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
  http://www.ntt.com/
  日本電信電話株式会社
  http://www.ntt.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.ntt.com/release/monthNEWS/detail/20080526.html


( 石井 一志 )
2008/05/26 15:52

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.