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遠隔地とのデータミラーリングを実現する「ENBD」日本語版が無償提供へ

サイバーステーション、中小企業のDRを支援

代表取締役社長の福永泰男氏
 サイバーステーション株式会社は6月6日、社内と遠隔地にあるHDDでデータミラーリング(RAID 1)を実現するオープンソースソフト(OSS)「ENBD(エンハンスド・ネットワーク・ブロックデバイス) 日本語版」の無償公開を開始した。安価な災害対策ソリューションとして中小企業への普及を図る方針。同日より日本語公式Webサイトを立ち上げダウンロード提供を始めるほか、8月からは有償のサポートサービスなども提供する。

 ENBDは、英国人のピーター・T・ブリュア博士が開発したGPL2ベースのOSS。同博士と共同でサイバーステーションが日本語化を行った。同ソフトを使用すると、遠隔地にあるHDDをローカルディスクと認識させて、自社内のHDDとRAID 1を構築することが可能になる。万が一、ローカルHDDに障害が発生しても、遠隔地に保存されたデータを活用して即座に業務復旧を行える、災害対策向けのOSSである。

 ローカルとリモートのHDD間では、マルチチャンネルを使ってデータが常時同期される。マルチチャンネルにより複数のコネクションを同時に張れるので、ADSLなど安価な回線でも問題なく利用できるという。チャンネルに障害が発生しても、自動でほかのチャンネルへフェイルオーバーしてくれるほか、マルチチャンネル間で常に負荷分散も行ってくれるため可用性は高い。さらに、大きすぎるデータを細かくして送信する「マルチリクエスト機能」や、逆に小さすぎるデータをある程度の大きさにまとめて送信する「マージリクエスト機能」により、スループットの向上を図っている。

 耐障害性としてはそのほか、ローカル・リモートノード間における相互I/Oコントロール機能も備え、どちらかのノードが落ちたとしても、自動的に再接続を行いデータミラーリングを再開することが可能だ。再開後は差分データを同期するだけで済むという。なお、通信はすべてSSLで暗号化される。

 Linuxの論理ボリューム管理機能(LVM)に対応するのも特長。同機能により、パーティションのサイズが不足した際に容易に拡張できるほか、ミラーリングされたデータからスナップショットを取得することも可能。データを世代管理して、いつでも過去のある時点へ復元できる。


アーキテクチャ概要 LVMのスナップショット機能 1対N構成のディザスタリカバリを実現

 まずはOSSの無償提供を開始するサイバーステーションだが、今後はパートナーとのアライアンスによりさまざまなビジネス形態を模索していく方針。すでにアイ・オーとのハードウェア製品化や、ソフトバンクIDCとのデータセンターを利用したサービスなども検討しているほか、SIerやホスティング事業者などとの提携も視野に入れている。

 代表取締役社長の福永泰男氏は、「大震災やテロなどの影響で、災害対策をはじめとした事業継続計画が重要になっている。ところが一般的にディザスタリカバリには多大な費用がかかり、簡単に導入できるものではない。オープンソースとして提供することでこうした課題が解決できる」として、特に資金の少ない中小企業を対象に普及していく考えを示した。



URL
  サイバーステーション株式会社
  http://www.cyberstation.co.jp/
  ENBD日本語公式Webサイト
  http://www.enbd.jp/
  ニュースリリース
  http://www.cyberstation.co.jp/newsrelease/080606.html

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( 川島 弘之 )
2008/06/06 17:03

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