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理事 WebSphere事業部長のデビッド・ベイト氏
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Web 2.0とマッシュアップによりSOAを拡張
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日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は6月12日、情報システム開発者向けにマッシュアップ開発/実行環境を提供するミドルウェア「WebSphere sMash V1.0」日本語版を発表した。6月20日から出荷を開始する。
WebSphere sMash V1.0は、エンタープライズ・マッシュアップのための開発/実行環境製品。マッシュアップとは、異なるWebサイトが提供するサービスを部品として組み合わせて、新しいアプリケーションを開発する手法だ。SOAPやRESTなどを利用して社内システムを統合できるほか、外部Webサービスも容易に取り込むことができる。例えば、企業が海外に支店を出す際に、自国の通貨のみで運用している商品マスターアプリケーションと外部の為替変換Webサービスを組み合わせて、展開する国の通貨で運用するといったことが可能だ。理事 WebSphere事業部長のデビッド・ベイト氏は「そのほか“わが社の競合企業は、特定の顧客セグメントにどうアプローチしているのか”といった価値のある洞察を支援し、ビジネスの変化に迅速に対応可能にするなどメリットは大きい」と語る。
開発言語としては、Javaではなく記述が比較的容易なスクリプト言語に対応している。具体的にはPHPとGroovyをサポート。スクリプト言語のコーディングエディター、ドラッグ&ドロップ操作に対応するWebベースのGUIなど、WebSphere sMash V1.0が提供する開発ツールを利用して容易に開発が行える。なお、Rubyなどほかのスクリプト言語への対応は現時点では未定という。
実行環境は「Java 仮想マシン(Java SE)」上で「WebSphere sMashランタイム」が動き、その上でPHPやGroovyが動作する形。併せてHTTPサーバーも内包されるため、「開発したアプリケーションを即座に配置することができる」(ベイト氏)。
マッシュアップを行う際には、日本IBMがあらかじめシナリオ定義した65以上のモジュールが利用可能。データフォーマット関連、データアクセス関連、リソースモデリング関連、セキュリティ関連など多岐にわたるモジュールが「Project Zero」のWebサイト上で公開されており、ユーザーは自由にダウンロードして利用することができる。
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WebSphere sMash V1.0アーキテクチャ
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マッシュアップ画面
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65以上のモジュールが利用可能
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Project Zeroとは、「開発中のソースコードを公開し、多くの開発者のフィードバックを得ながら開発を進める」という、新たなソフト開発プロセスを実現するためのプロジェクト。オープンソースソフトのように公開されたコードをユーザーがカスタマイズすることはできないが、コードを参照して、多くのユーザーから寄せられたフィードバックを基にIBMがどう開発を進めていくのかを、常にチェックすることができる。今回のWebSphere sMash V1.0は、まさにこのプロジェクトから生まれた製品なのだ。
ライセンスは、製品版の「WebSphere sMash」と、無償版の「WebSphere sMash Developer Edition」「Project Zero」の主に3種類。製品版では5つのアプリケーションを実行でき、標準サポートが付いて価格は143万円から。
WebSphere sMash Developer Editionは、その名のとおり開発者向けのライセンスで、無償で使える代わりに標準サポートが付かない。また機能的にも、4プロセッサコアまでなどの制限があり、特に開発者がアプリケーションをビルドしたり、エディターを動かす環境として提供される。
最後のProject Zeroは、最新実装版が利用できるライセンス。Project Zeroにて常時開発される最新機能が利用できる代わりに、安定性の保証はない。機能的には、4つのアプリケーションまでしか実行できないといった制限が付く。
マッシュアップという手法は、その容易さから中小企業などにも好まれている。大企業のほか、そうした中小企業にも普及を図るため、日本IBMではパートナー戦略を重要視。具体的な施策などはまだ未定だが、現在、パートナーシップの確立に努めているとのことだ。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
プレスリリース
http://www-06.ibm.com/jp/press/2008/06/1201.html
( 川島 弘之 )
2008/06/12 15:44
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