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金融ソリューション開発本部長の吉田春男氏
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富士通株式会社は7月22日、金融機関と顧客の接点を統合する次世代チャネルソリューション「EVOLUO-ChannelIntegrator(以下、EVOLUO-CI)」を発表した。同日から販売を開始する。
EVOLUO-CIは、営業店端末やATMなど金融機関と顧客の接点となるチャネルを統合することで、あらゆる世代の顧客に対して最適なサービス提供を可能にするソリューション。
昨今、営業店での窓口をはじめとする金融機関と顧客を結ぶチャネルは、コンビニのATMやインターネット、携帯端末などの発展・普及により多様化が進んでいる。金融ソリューション開発本部長の吉田春男氏によれば、「これまで金融機関では各チャネルごとに縦割りに部分最適が行われてきた。新ソリューションはこれらを統合、チャネル間で顧客情報を共有した一貫した接客を実現するとともに、老若男女の特性をパーソナライズし、それぞれの世代に最適なインターフェイスを提供するのがEVOLUO-CI」という。
さらに「昨今の金融系サービスでは、何より顧客起点でチャネルシステムを考える必要がある。顧客は金融機関に対して主に、サービス業としての接客に“感動したい”、手続きの煩雑さや待ち時間などから解放され“快適に用を済ませたい”、お金に関することなので“安心して利用したい”という要望を抱いている。新ソリューションは、感動・快適・安心を実現するための次世代チャネルシステムを金融機関に提供するもの」(吉田氏)とソリューションの目的をかみ砕く。
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金融機関の顧客の感動・快適・安心を実現
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多様化するチャネル。これらを統合し、顧客の特性に応じて最適なサービスを提供可能にする
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基盤にはSOAを採用。フレームワークをアドオンすることで、各チャネルサービスをまとめ上げ、将来の拡張にも対応する
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具体的には、5つのサービスを提供する。1つ目が、SOAをベースとした基盤アーキテクチャとなる「チャネルフレームワークサービス」だ。これまで、営業店端末なら勘定系サーバー、ATMならATMサーバー、インターネットバンキングならダイレクトチャネルサーバーといったように、各チャネルごとに異なるサーバー群が個別に運用されていた。同サービスでは、専用のフレームワークをアドオンすることで、これらのチャネルサービス群を1つにまとめることが可能になる。
統合することで例えば、午前中にインターネットバンキングで送金した結果が、午後になっても営業店の端末に反映されない、といった従来の課題が解決するという。さらに顧客は、「携帯電話やPDAなど端末種別に応じた最適な画面で取引を行ったり、インターネット端末でも慣れ親しんだATMの画面操作で取引したりするなど、世代に応じた最適なサービスが受けられるようになる」(金融ソリューション開発本部 主席部長の近藤洋司氏)。
一方、金融機関側から見ると、同フレームワークにより、複数の業務システム画面を1つのウインドウにまとめて配置できるのがメリット。「これまで、窓口端末とATM端末は別々に管理されていたため、双方を操作するにはどちらも稼働する必要があった。それをWebの単一画面上ですべて操作できるようになる。業務効率の向上はもちろん、既存チャネルの容易な機能連携が可能になる」(近藤氏)という。
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顧客の特性に応じて最適なサービスを提供
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インターネットバンキングでは、ATMと同じ感覚で操作が可能
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金融機関にとっては、複数の業務システム画面を1つのウインドウにまとめて配置できるのがメリット
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2つ目のサービスが、「事務ナビゲーションサービス」。同サービスでは、勘定項目ごとにやるべき仕事の一覧、操作の手順をナビゲートする仕組みを提供する。PCにアプリケーションをインストールするときのウィザードのようなものだが、チャネルフレームワークサービスで統合された各チャネルシステム間で、対話式の操作を実現してくれる。画面間でのデータの引き継ぎも行えるため、入力操作を軽減できるほか、スタッフ教育の軽減や内部統制にも効果を発揮するとのこと。
「銀行には、およそ2000もの勘定項目があるという。例えば、口座の下に入金、送金といったサブ項目が複雑に配置されており、作業は非常に複雑になっている。事務ナビゲーションサービスでは、シンプルさをテーマに必要な操作をナビゲートするため、言葉でいうよりその効果は大きい」(近藤氏)。
3つ目が、「事務量可視化サービス」。同サービスでは、すべてのチャネルの取引情報を取引履歴管理データベースに格納、分析を可能とする。従来、案件数ベースでしか把握できなかった事務量を、来店客数や顧客の待ち時間など詳細な時系列で分析できるのが特長。こうした分析を行うことで、「コンシェルジュによる誘導の効果や、月末や特定日の来店客数から現場での店別実態を把握し、窓口・店舗運営の改善につなげることが可能。ひいては、顧客の待ち時間短縮を実現することができる」(近藤氏)。
4つ目が、「取引監視セキュリティサービス」。取引データをあらかじめ定めた条件と比較し、不正取引をリアルタイムに支店長などに通知するアラート機能を提供する。また、不正取引の発生割合や発生パターンなどを統計データとして保有することで、事務の健全性を全店で比較、検証、分析することが可能なモニタリング分析機能も提供する。
5つ目が、従来の営業店ソリューション「Financial Business Component(FBC)システム」との連携を実現する「FBC連携サービス」。FBCシステムの既存ユーザーがEVOLUO-CIを利用するにあたって、画面やアプリケーションなどのFBC資産を継続利用することが可能になる。
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勘定項目ごとにやるべき仕事の一覧、操作の手順をナビゲート
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接客における店ごと、プロセスごとの所要時間を分析可能。目標時間に対して実際どれだけの時間がかかっているかを把握することで、顧客の待ち時間削減を可能にする
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不正取引のアラート、モニタリング機能で安心を実現
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提供開始時期は、チャネルフレームワークサービス、事務ナビゲーションサービス、FBC連携サービスが2009年1月。事務量可視化サービス、取引監視セキュリティサービスが同年10月。価格体系は、「金融機関における投資の平準化や導入しやすさを配慮して、各チャネルからの総同時セッション数に応じた従量課金制を採用」(近藤氏)。セッション数1~100の場合で、チャネルフレームワークサービスが525万円/年、事務ナビゲーションサービスが315万円/年、事務量可視化サービスが210万円/年、取引監視セキュリティサービスとFBC連携サービスが105万円/年。セッション数は、地方銀行の実態に合わせて設定しており、メガバンクなどで1800セッション以上となった場合は個別見積もりとなる。
富士通では今後5年間に、EVOLUO-CIのみで150億円の売上を、関連システム含め総額5000億円の売上をめざす。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2008/07/22.html
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