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エンタープライズ事業部 事業部長の渡部眞也氏
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株式会社日立製作所は1月20日、省電力・省スペースなデータセンター環境を提供する「モジュール型データセンタ」を発表した。企業のIT部門やデータセンター事業者向けに、IT機器と冷却装置などの配置を最適化するためのコンサルティングサービスから構築、保守まで含めて、3月31日から提供開始する。
モジュール型データセンタは、モジュール化され、ある程度ひな形化されたデータセンター環境を提供するサービス。まず、日立独自の冷却最適化技術を活用した空調環境コンサルティングサービス「AirAssist」によるシミュレーションを実施。その結果に基づき、ラック・冷却装置などを小規模なモジュール内に、機器稼働効率が最大となるように配置する。
エンタープライズ事業部 事業部長の渡部眞也氏は、「データセンターの構築手法はモジュール化技術をはじめ、ホット・コールドアイルの分離、ホットアイルのキャッピングなどさまざまな進化を遂げた。また、冷却効率もラック型空調機や設備連動制御などの技術により発展を見せている。今回のモジュール型データセンタは、高度化する“構築手法”と“冷却効率”の2つをまとめたもの」と説明する。
このモジュール型データセンタでは、同程度のIT機器を従来型のデータセンター設備において稼働させた場合と比べ、消費電力を最大27%、設置面積(床面積)を最大75%削減することができるという。モジュールの最小規模は6.3×3.6メートルの約22平方メートル。小規模なモジュール単位からデータセンターを構築でき、モジュールを増やすだけで柔軟に拡張可能。さまざまな条件のサーバールームに導入できるため、データセンター事業者以外にも一般企業や金融機関など幅広いユーザーに提供可能という。また、ひな形化されたモジュール型であるがため、構築期間を同程度の一般データセンターと比べて約67%短縮できるのもメリットだ。
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モジュール型データセンタの概要
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導入メリット
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水冷リアドアクールセーバーの概要
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省電力・空調TCO削減効果
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省スペース化と省電力化を両立させるためには、効率のよい冷却システムが不可欠となる。モジュール型データセンタでは、「低設備負担の冷却を実現するために内部循環方式を採用した」(渡部氏)。
これは2列に並んだラック列の間にホットアイルを形成し、コールドアイルとで空気を冷やしながら循環させて冷却を行う方式だ。ラック列に並べた「ラック型空調機」とラックの排気面に取り付けられた「水冷リアドアクールセーバー」2種類の冷却システムが利用される。
サーバーの熱はラックの排気面から排出される。そこに取り付けられた水冷リアドアクールセーバーが排熱を吸収。空気をある程度冷却した上で、ラック型空調機で吸い上げてさらに冷まし、ラック前面のコールドアイルに排出する。その冷たい空気をラックが吸い上げることでサーバーが冷やされるという寸法だ。
ラック型空調機には、日立アプライアンスとNTTファシリティーズが共同開発し、2008年6月に発表された「FMACS」シリーズを採用。さらに水冷リアドアクールセーバーのメリットを合わせることで、ラックあたりの冷却能力を向上したのが、モジュール型データセンタの特徴である。
「これにより通常空調方式と比べ、空調電力を27%削減可能なほか、10年間運用した場合の空調TCOを45%削減することが可能」(同氏)。
価格は、ラック型空調機や分電盤/動力版、ラック、パーティション、付帯工事を含めた構築費用が3500万円から。水冷リアドアクールセーバーを利用する場合はオプション費用が必要なほか、ユーザーのニーズに応じて、AirAssist(個別見積もり)、モジュール設計サービス(個別見積もり)、保守サービス(個別見積もり)などの料金が発生する。
日立は、「Harmonious Greenプラン」や「CoolCenter50」などグリーンIT活動の一環として、日立アプライアンス、日立情報システムズ、日立建設設計、日立情報通信エンジニアリング、日立プラントテクノロジー、日立電子サービスなどのグループ各社一丸となって拡販する方針で、3年間で100億円の販売を目標とする。
■ URL
株式会社日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/
ニュースリリース
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2009/01/0120.html
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( 川島 弘之 )
2009/01/20 14:44
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