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日本HP、クラウドコンピューティング導入支援体制を拡充

高密度ラック型サーバーや自動化支援ツールなどを提供、無償サービスも強化

執行役員 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括の松本芳武氏

AIMMにおけるロードマップ策定の例
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は2月9日、クラウドコンピューティングに対する取り組みを強化すると発表した。顧客のクラウドコンピューティング導入を支援する各種サービス、製品を発表するとともに、自社の支援体制も確立させるなど、総合的に取り組むという。

 執行役員 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括の松本芳武氏は、「クラウドの実現には、リソースの仮想化や共有、解放といったサイクルが必要だが、これは以前から当社が提唱してきたアダプティブインフラストラクチャのメッセージと同じだ」という点を指摘。また、「さまざまなクラウドベンダーにサービスを提供してきたほか、クラウドサービスを自ら提供している経験もあり、データセンター内ではどういったものが必要か、どういうチューニングをすればいいか、といったノウハウを持っている」と述べ、同社ではクラウドコンピューティング時代のサービスを提供できる下地がすでにあると主張する。

 今回はそうしたバックボーンをもとに、クラウドコンピューティングに対応するための強化をサービス/製品両面で行った。このうちサービス面では、クラウドコンピューティング実現に向けたロードマップ策定を支援する無償アセスメントサービス「アダプティブ・インフラストラクチャ成熟度モデル Ver.2(以下、AIMM)」を提供する。

 このサービスは、顧客のIT環境レベルを、成熟度モデルを使って定量化し、目標レベルとのギャップから、その顧客が進むべき最適なロードマップを提案するもの。2008年1月より提供を行っていたが、今回よりクラウドコンピューティングへの対応を行い、その実現に向けた仮想化・自動化、管理ソリューションなどを提案ポートフォリオに追加した。さらに、提案内容やレポートを詳細化したほか、グリーンITにも対応している。期間は3~4週間を想定する。


HP Insight Dynamics-VSEの概要

HP Insight Orchestrationにより、迅速なリソース提供が可能になる
 製品面では、クラウドコンピューティング環境を構築するにあたって必要な「自動化」を実現するためのソフトウェア製品を強化した。日本HPでは、さまざまなサーバープラットフォームを、物理環境、仮想環境を問わず1つのビューから管理できる「HP Insight Dynamics-VSE」を提供してきたが、この新版「同 4.1」をリリース。物理インフラとして新たにIPFブレードサーバー「HP Integrityブレードサーバー」を対象に加えたほか、Hyper-V、VMware ESXiの両仮想化ハイパーバイザーに対応させるなど、管理可能な範囲を拡大した。

 また、HP Insight Dynamics-VSEを拡張する「HP Insight Orchestration」、「HP Insight Recovery」の両製品も提供する。前者は、複数のサーバーを1つのシステム構成としてテンプレート化し、エンドユーザーに短期間でサービスを提供できるようにするもの。後者は複数のサイト間でリソースを共有できるようにする製品で、遠隔地でのリソース共有やサービスのディザスタリカバリを実現する。

 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ソフトウェア・プロダクト&HPCマーケティング部の担当部長、赤井誠氏は「現在は、迅速にITリソースが供給できていないが、数時間で提供できるのが本来のあるべき姿だろう。HP Insight Orchestrationの利用によって、短時間でITリソースが提供できるようになる」と述べ、仮想化・自動化によって実現するクラウド環境の恩恵を説明。AIMMに基づいた「HP Insight Dynamics-VSE導入アセスメント」サービスを無償提供することで、顧客に効果を体感してもらえるとアピールした。

 価格は、HP Insight Dynamics-VSE 4.1が10万5000円から、HP Insight Orchestrationが9万4500円から、HP Insight Recoveryが11万5500円から。


ラック型サーバーに対しても、日本独特のニーズがあるという

HP SE2120のノードをかかげる、エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ビジネスデベロップメント部 部長の正田三四郎氏

HP SE2120
 一方、ハードウェア面でも新製品を投入する。「日本のクラウドベンダーには、絶対的な低消費電力、RAIDによる単体での高い可用性など欧米と異なる要件があり、汎用性、独立性など、ブレードサーバーだけでは必ずしも満たせないニーズがある」(エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ビジネスデベロップメント部 部長の正田三四郎氏)ことから、日本国内専用の高密度サーバー「HP SE2120」を製品化したという。

 このサーバーは、1Uサイズに2つのサーバーノードを集約した高密度型の製品で、各ノードに独立して電源を搭載。また、HDDはホットプラグに対応するほか、2台のサーバーノードを並列に搭載し、通気の方向を統一しているため、「(ラックの前方・後方に分割して搭載する)他社のハーフラックサーバーと異なり、空調を変える必要がない点も特徴」(正田氏)とのこと。消費電力も抑えられているので、従来の1Uラック型サーバーと比較すると、上限5KWのラックに搭載する場合で約38%、搭載可能ノード数を増やせるメリットもある。

 主なターゲット用途は、レンタルサーバー、コンテンツダウンロードサイトのフロントエンドサーバー、クラウドコンピューティング環境の実証用途など。日本HPでは、このような用途で求められることの多いCentOSなどフリーLinuxでの動作検証を進めるほか、CentOSの有償サポートを開始するなど、日本特有のニーズにきめ細かく対応していく考えである。

 CPUは、1ノードあたり、Core 2 Duo E6405もしくはXeon E3113を1基搭載可能。価格は、Core 2 Duo E6405、2GBメモリ、250GB SATA HDD×2、Gigabit Ethernetポート×2といった構成の最小構成(2ノード、1Uサイズ)で37万8000円から。2009年春の発売を予定する。

 なお日本HPでは、こうしたクラウドコンピューティングの導入を目指す顧客を支援する目的で、全社横断的なタスクチーム「NGDC(次世代データセンター)タスクチーム」を設置。製品・サービスをデリバリする体制を整備し、顧客内の自社データセンターから社内へITサービスを提供する「インターナルクラウド」、SaaSなどによって外部からITサービス事業者がサービスを提供する「エクスターナルクラウド」の両形態を視野に入れて、ビジネスを拡大する考えである。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2009/fy09-050.html

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( 石井 一志 )
2009/02/09 18:22

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