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富士通、手組みで時間のかかる課金システム開発を迅速化する「Bitsolino」

従量、定額割引など課金が複雑な事業者向け

ソリューション事業本部 テクノロジー・サービス事業部長の奥川彰一氏

契約から課金、請求、決済までをカバー
 富士通株式会社は3月25日、顧客管理・課金ソリューション「Bitsolino」を発表した。SaaS、MVNOなどさまざまな料金体系を持つ事業者向けのもの。従来、手組みで開発されていたのと比べて、約30%の工数削減が可能という。機能を決め打ちにし、短期導入を実現したパッケージ製品と、柔軟な開発・カスタマイズが可能なSI製品の2種類を用意した。

 Bitsolinoは、複雑な料金体系を持つ事業者向けの顧客管理・課金ソリューション。昨今、さまざまなサービスが生まれるにつれ、課金方式もまた多様化した。課金要素としては、「回数」「量」「時間」「距離」「曜日」「時間帯」「属性」などがあり、それに応じて、料金プランも「変動従量」「段階従量」「ミニマムチャージ」「キャップ制」「定額割引」「定率割引」など、実にさまざまだ。そうした複雑な料金体系を持つ事業者の、顧客管理とそれに連動した料金計算を行ってくれるのが、この製品。

 通信キャリア、電力、ガス、CATV、ISPなどが主な対象となるが、ほかにもSaaSやMVNO事業者などの新規ビジネス立ち上げにも対応する。従来、こうした課金システムは手組みで開発されており、複雑な仕様を入念に分析して作る必要があるため、往々にして開発期間は長く、費用は莫大になっていたとソリューション事業本部 テクノロジー・サービス事業部長の奥川彰一氏は指摘する。

 Bitsolineを使うと、手組みと比較して、大幅な工数削減が可能となる。ラインアップは「Bitsolino-Lieve」と「Bitsolino-Basale」の2種類。前者は、中小規模のシステム構築を考えていて、必要最低限の機能でいいから早期に導入したい企業向け。ある程度機能を絞ったパッケージ製品という形で、サービス連携やインターフェイスなどの多少のSIを組み合わせながら、500万円からの価格で提供される。導入までは最短で3カ月。サービスや料金プランの追加・変更が柔軟、かつ敏速に行えるという。

 一方の後者は、より多くの要件を持ち、それら全要件を実現させたい企業向け。どの事業者にも共通する概念データモデルや課金ノウハウ、フレームワークをベースに、事業者ごとに異なる業務画面や帳票、他システム連携などの機能を組み合わせることが可能。機能部品をはじめ、ソースやデータ構造まですべて提供した上で、SIを前提に提供する。当然、前者よりも開発期間・コストは高くなるが、それでも「スクラッチ開発比で、約30%の効率化が可能」(奥川氏)という。


サービス管理画面。どういった料金体系とするかなどを設定する 顧客登録画面 利用状況と料金体系に応じて請求額を算出

実世界を抽象化した概念データモデル

汎用的な課金エンジン
 では、なぜそこまでコストを削減できるのか。手組みの開発と何が違うのか。最大の特徴は、業務の「要(かなめ)のモノ・コト」をとらえた「概念データモデル」にある。「例えば、水を沸かす場合。昔なら川から水をくんで、まきに火を起こして行っていた。今なら水道からやかんに水を入れ、コンロにかける。両者を比べると、方法は異なっているが、“水”を“沸かす”ことには変わりがない。これが『要のモノとコト』。同じ考え方を業務にも当てはめていくと、業務のコア部分が明らかになる。Bitsolinoでは、こうして機能の整備を行い、普遍的な機能と変動的な機能を分割。サービスインターフェイスもこのモデルを中心に設計されているため、各種システム連携などに柔軟性が生まれた」と奥川氏は話す。

 また、エンドユーザーのサービス利用状況から請求額を計算する課金エンジンでも汎用性を持たせることで、システムのシンプル化を図った。世の中にはさまざまな料金体系があるが、突き詰めると、登録手数料・入会金・ショッピングなどの「一時金」、基本料金などの「定額」、通話料金・パケット料金・コンテンツ利用料などの「従量」、パック割引・期間割引などの「割引」に分類されるという。「この4つの上位概念にまとめることで、まったく新しい料金体系を採った新サービスが出ても、対応できるようになっているのだ」(同氏)。データ量が増加した場合は、この課金エンジンをスケールアウトさせることで、アプリケーションの変更なしに拡張できるのも特徴という。

 現在、概念データモデルの最終調整や社内体制の整備を行っている富士通。当初は30名のSE体制を敷き、順次増強しながら、提供を開始していく。パッケージ版のBitsolino-Lieveは4月より、SI版のBitsolino-Basaleは秋ごろより提供を開始する予定だ。「顧客や契約を管理し、その契約に基づき課金計算をした料金を請求する企業がターゲット。いずれはSaaS展開も視野に入れる」(奥川氏)とのことで、2011年度末までに60億円の売り上げをめざすとしている。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  プレスリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2009/03/25.html


( 川島 弘之 )
2009/03/25 15:54

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