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ブロケードがSAN教育ポータルサイト「Brocade Connect Japan」を開設したワケ


 11月19日、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(以下:ブロケード)は、同社製品を基盤とするSANの構築に携わる顧客を対象に、日本語版のSAN教育ポータルサイト「Brocade Connect Japan」を開設した。ブロケードは、SAN(Storage Area Network)向けのスイッチ製品において日本国内で90%以上のシェアを持つベンダーだ。

 今回は、このBrocade Connect Japanを開設した経緯について、ブロケードの代表取締役社長である松島努氏とシステムエンジニアリング統括部長の斉藤徳浩氏にお話を伺った。また、筆者自身もBrocade Connect Japanを使用しているので、筆者の感想も織り交ぜながら話を進めていきたい。


ブロケード コミュニケーションズ システムズ 代表取締役社長 松島努氏 ブロケード コミュニケーションズ システムズ システムエンジニアリング統括部長 斉藤徳浩氏

Brocade Connect Japanの開設によってコンテンツの幅が大きく広がる

Brocade Connect Japanにログイン後のトップ画面。SAN・Ed Onlineのコンテンツにもリンクされているため、あたかも両サイトの統合ポータルとして機能する。
 ブロケードが展開しているSAN教育ポータルサイトは、SAN・Ed OnlineとBrocade Connect(日本語版の名称はBrocade Connect Japan)の2つから構成される。いずれもブロケード製品を所有し、ユーザー登録を行ったメンバー限定のサイトという位置付けだ。

 SAN・Ed Onlineは、日本国内でのSAN導入事例、有償トレーニング資料、ROI解析ツールなどを提供するサイトとして昨年7月から運営されているが、これらに加えてオンライン講座、技術ガイド、SE向けの便利なソフトウェア、製品マニュアルなどを提供するBrocade Connect Japanが追加されたことで、コンテンツの幅が大きく広がった。これまでは、主にSAN導入を検討している人が対象だったが、すでにSANを構築済みのユーザーにも実践性の高い情報を提供できるようになった。

 ただし、両サイトに対して個別にログインする必要はない。Brocade Connect Japanにさえログインすれば、SAN・Ed Onlineのコンテンツにも簡単にアクセスできる。つまり、Brocade Connect Japanのユーザー登録さえ済ませれば、SAN・Ed Onlineのコンテンツを含む、統合型のポータルサイトとして利用できるわけだ。すでにSAN・Ed Onlineを利用している方は、すぐにでもBrocade Connect Japanのメンバーにアップグレードすることをお勧めしたい。なお、ユーザー登録の際には、正規のWorld Wide Name(ファイバチャネル製品に割り当てられる世界で唯一のアドレス)が必要になるので、こちらもあらかじめ確認しておこう。


ビジネスの拡大に伴い、SANについて学習したいというユーザーの要望が高まる

 さて今回、Brocade Connect Japanを開設した背景には、ブロケード自身の大きな成長が大きく関わっている。昨年度の売上を見ると、ファイバチャネルスイッチの出荷台数ベースでは対前年比で40%の向上、売上高では2桁成長を遂げた。全世界でのスイッチ製品のシェアは70%前後、日本国内に至っては90.8%という圧倒的なシェアを確保しており、近年の厳しい経済環境を加味すれば、その成長率は誰もがうらやむほどに高い。松島氏は、自社の成長に合わせて高まりつつあるユーザーの要望を次のように説明する。

 「ビジネスが年々大きくなっていくにつれて、お客様の中では“もっとSANについて知りたい”とか“SANのテクノロジについて詳細を理解したい”といった要望が増えてきました。ブロケードのビジネスは、基本的にOEMを通じて弊社の製品がインストールされる形を取ります。つまり、弊社がお客様に直接タッチすることはなかったのです。しかし、お客様の満足度をブロケード自らも高めようではないかという考えのもと、ブロケードからお客様に生の情報をお伝えするためのSAN教育ポータルサイトを開設しました」

 「すでに昨年7月より、弊社のセミナールームにエンドユーザーの皆様を招いて、SANやファブリックスイッチの基礎知識をレクチャーするSAN・Ed Workshopを毎週水曜日に開催しています。現時点で1000名以上の方にお越しいただきましたが、実際にはそれ以上の方がこのセミナーに参加したいという希望をお持ちなのが現状です。遠方のお客様やセミナーに参加したいけど満員で入れないお客様に対して、いかにSAN・Ed Workshopに代わるサービスをご提供できるかを考え、最終的に行き着いたものが今回のBrocade Connect Japanでした」

 「もう一つは、多くの顧客を持つ企業としての社会的責任を果たすという意味合いからも、Brocade Connect Japanは重要な切り口となりました。弊社のファイバチャネルスイッチ製品のシェアは日本国内で90%を上回っており、しかも昨年対比で40%という伸びを示しています。つまり、かなり多くのお客様がブロケード製品をお使いになっていることになります。このように、ストレージの世界においてブロケードが負うべき社会的責任は極めて大きく、SANの普及を促進するためにも、ブロケード自身が立ち上がり、こうしたSANの教育システムを充実させる必要があると判断しました」


ブロケードの宣伝色を極力廃した学習ポータルサイトを構築

SAN・Ed Onlineにあるユーザー事例紹介のページ。日本国内の大手企業や研究機関が名を連ねており、SANの全体最適化によるTCO削減が日本でも実証されつつあることを示している。これを中小企業にまで浸透させるのがブロケードの大きな目標だ。
 次に、実際のサイトの中身をチェックしてみよう。Brocade Connect Japanのトップページでメールアドレスとパスワードを入力し、ログインすると、SAN・Ed Onlineのコンテンツを含む統合的なポータル画面が表示される。メインメニューは、技術資料やユーザー事例紹介などを提供する「Technical Resource Center」、SANの管理などに便利なツールをダウンロードできる「Connect with Users」、e-ラーニング・コンテンツの提供やブロケードに技術的な質問を送信できる「Connect with Brocade」、ブロケードのパートナー向け情報を提供する「Connect with Partners」の4つである。

 現在公開されているコンテンツは、基本的に“SANとは何か?”をすでに知っている人を対象にした実践性の高いものが中心であり、またブロケードの宣伝色が非常に薄い学習優先の内容になっているのが特徴だ。松島氏は、これらの理由を次のように説明する。

 「今回、実践的なコンテンツが中心となっている理由は、弊社の製品を使っているエンドユーザーの方を対象にしているからです。あとでお話しするように、SANの知識をある程度持っている方が自社の小規模SANを大規模化していくときに必要な情報を中心に掲載しています」

 「ただし、サイト全体の切り口は、あくまでも“SANのメリットを伝えること”であってブロケード製品の宣伝ではありません。日本は、メインフレーム大国でオープン系のサーバーが少ないことや、メーカー頼りでシステム構築しているためにメーカーの提案書の中にSANが含まれていないと、SANの存在すら知ることができないといった理由から、日本におけるSANの導入は米国に比べて1年半から2年も遅れています。このような大きな遅れを取り戻すためにも、自社の宣伝ばかりではなく、純粋にSANについて学べるコンテンツをご提供する必要があると考えています」

 「日本のシステムは、部門的に予算が決まったり、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)がいないといった特性から、多くの企業では部門別に小規模のSANを構築するところで止まっています。しかし、SANの本当のメリットは、こうした部門別の部分最適化ではなく、企業全体でストレージを統合する全体最適化にこそあります。幸いにも海外では、SANの全体最適化によってTCOの大きな削減につながったという事例が急速に増えており、また日本国内でも大手企業を中心にこうした実績が増えつつあります。弊社のユーザー事例紹介のページでは、SANの全体最適化を通じてTCOを削減した大手企業や研究機関の事例を実際にお見せすることにより、中小企業にもSANのすそ野を広げ、多くの企業の皆様にSANの本当のメリットを享受していただきたいと思っています」


顧客からの質問にも回答する2way方式のポータルサイトを実現

SAN・Ed Onlineで提供されている「ask the SAN expert」。質問フォームに、質問のタイプ、興味がある領域、質問内容を書き込んで「Submit」をクリックすると、ブロケードのSANエキスパートに質問内容が送信される。通常は1~2日で返答が得られるという。

オンライン講座の受講画面。音声と静止画の組み合わせによる解説なので、文章モノのコンテンツにありがちな“眠気”に見舞われる心配がない。
 Brocade Connect Japanのポータル画面から閲覧可能なコンテンツのうち、Brocade Connect Japanに属するコンテンツをピックアップすると、Technical Resource Centerにあるオンライン講座、ドキュメントライブラリー、各種ツールのダウンロードあたりのページが目玉のコンテンツとなる。また、SAN・Ed Onlineに属するものだが、ブロケードのSANエキスパートにSANソリューション、製品、テクノロジー、サポートに関する質問を気軽に送信できる「ask the SAN expert」も面白い取り組みだ。

 「従来型のポータルサイトは、メーカーが一方的に情報を提供する一方通行のタイプでしたが、Brocade Connect Japanは、お客様からの質問もお受けする2wayタイプを採用しています。ask the SAN expertでご質問いただいたら、1~2日でお返事を差し上げられるように努力しています(斉藤氏)」

 オンライン講座は、オンデマンドのストリーミングビデオによるe-ラーニング形式の学習コンテンツである。執筆時点で公開されているのは「第1章 SAN設計入門(12分)」と「第2章 大規模SAN実装入門(11分)」の2つだ。SAN設計入門は、DAS(Direct Attached Storage)などによる従来型システムをSANシステムに移行する際に必要な設計の注意点を解説するもの、大規模SAN実装入門は、すでに小規模SANを構築済みのユーザーがさらに大きなSANへと移行する際に必要な知識を養うものである。

 「今後も順次、新しい講座を追加していく予定です。お客様からの要求が強ければ、お求めのオンライン講座を増設する用意もあります。皆様のフィードバックをもとに、少しずつ内容を充実させていければと思っております(松島氏)」

 ドキュメントライブラリーは、技術解説、製品マニュアル、相互接続情報から構成されており、これらはSANの技術にある程度通じたエンジニアを対象としたものだ。斉藤氏は、技術解説コンテンツの魅力を次のように語る。

 「米国と日本のエンジニア間の情報格差はかなり大きく、日本ではSANの普及度が低いばかりか、SANの認知度も低いというのが現状です。そこで、Brocade Connect Japanでは、少しレベルの高いコンテンツも充実させました。ここでは、米国で非常に評判の高かったドキュメントを中心に掲載しています。これらのドキュメントを読んでいただけたら、SANをどのようにして構築したらいいのか、現在ある小規模SANをどのようにして大きくしていけばいいのかといったことが理解できると思います」

 多くのコンテンツが日本語化されている一方で、ドキュメントライブラリーについては英語版の資料がそのまま掲載されている。松島氏は、この理由を「技術屋さんにとっては英語は苦にならないということで、より詳細に知りたい方には英語の資料をそのまま提供しています。Brocade Connectの英語版は、今年3月に米国ですでに開設されていましたが、日本人に対するease of useという観点から、SANのイントロダクションに関するコンテンツだけは日本語化を行い、さらに日本独自の要求に合ったコンテンツを加えた形でBrocade Connect Japanを開設しました」と説明する。


 日本では、SAN関連の書籍や技術資料(日本語化されたもの)が少ないため、Brocade Connect Japanの情報はSAN構築を手がけるエンジニアにとって非常に役立つものになる。筆者もいくつかの洋書を買い込んだり、技術セミナーに参加するなどしてSAN関連の情報を得ていたが、Brocade Connect Japanによってさらに間口が広がった。ブロケード製品を使用している方は、ぜひBrocade Connect Japanを活用していただきたい。



URL
  ブロケード コミュニケーションズ システムズ
  http://www.brocadejapan.com/
  SAN・Ed Online
  http://www.saned.ne.jp/en/index.jsp
  Brocade Connect Japan
  http://www.brocade-connect.jp/


( 伊勢 雅英 )
2003/12/01 00:14

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