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データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [前編]


 データコア・ソフトウェアは、メインフレーム向けの汎用ストレージコントローラの設計と販売を手がけていたEncore Computerのメンバーが創立したストレージソフトウェア専業ベンダーである。同社は、これまでにない独自の切り口によってストレージコストを大幅に削減するテクノロジを発表している。

 今回は、データコア・ソフトウェア(以下、データコア)の代表取締役社長であるピーター・トンプソン(Peter Thompson)氏と、以前はインテルでプラットフォーム&ソリューションズマーケティング本部長を務めていた、取締役副社長の佐藤宣行氏に、ストレージコストを削減する画期的な方法と同社の主力製品であるSANsymphonyとSANmelodyの特徴をお聞きした。前編では、ストレージコストが高値止まりである理由やストレージコストを削減する上で最低限必要なアプローチなど、最も基本的な事項を取り上げていく。


データコア・ソフトウェア 代表取締役社長のピーター・トンプソン氏(左)と取締役副社長の佐藤宣行氏(右)

ストレージの高値止まりを阻止するには顧客の意識改革が必要

 ガートナーの調べによれば、IT全体に投下される資本のうちの50%以上がストレージに対するものだという。また、ストレージにかかるコストのうち、ディスクアレイ(ソフトウェアを含む)の購入費用は20%に過ぎず、残りの80%は運用管理コストやダウンタイム時に発生するコストであるといわれている。さらに、IDC Japanの調べによれば、企業が扱うデータ量は、6カ月に2倍のペースで増えている。つまり、ストレージに投下されるコストは、ひたすら増え続けるしかない運命にあるのだ。

 多くのストレージベンダーでは、ストレージ管理コストを削減するために高度な管理ソフトウェアを提供している。しかし、絶対的なコストを対前年比で比較すると、こうしたソリューションを導入してもなかなかコスト削減の効果が得られないという声をちらほらと聞く。この問題は、基本的にユーザーとベンダーの両方に原因がある。まず、ユーザー側は、ストレージに関する知識が不十分であることが原因だ。一方のベンダー側は、システム全体の価格から見たストレージの価格がいつまで経っても高値止まりであることが原因である。また、ベンダー側から供給される装置が、ハードウェアとソフトウェアを一体とした専用機であるという、現在のストレージの形態にも大きな問題を抱えている。

 「組み込み専用機である以上、ソフトウェアからハードウェアまですべてベンダーが自製する必要があるため、ストレージの技術開発には膨大なコストがかかります。このため、ミドルレンジおよびハイエンドストレージの価格は、どうしても高値止まりになる傾向にあります。しかし、お客様の立場に立てば、価格が高い理由はどうでもよく、安くて優れた製品が手に入ればそれで十分なのです。一方、多くのお客様は、ストレージを“怖いもの”“ブラックボックス”としてとらえています。このため、“触らぬ神に祟りなし”ではありませんが、どうしても一社の高価なストレージを買い込んでしまいます。お客様が“ストレージは高くても仕方ない”と考えている限り、ストレージベンダーは自社製品を自らの価格体系の範囲で販売しますので、ストレージの価格が劇的に下がることはありません(佐藤氏)」

 「システム構築において、ストレージに最新のトレンドを入れていないのも大きな問題です。ご存じのように、すでにLinux中心の安価なデータセンター、エンタープライズコンピューティングを構築する時代が訪れていますが、これまでメインフレームからIAサーバーに移行し、商用UNIXからフリーのLinuxに切り替え、安価なネットワーキングを導入して、そのときそのときのトレンドに追従してきました。しかし、多くのITマネージャはコンピュータ本体のところで止まっていて、その先のストレージまで目が十分に届いていません。実は、このストレージにこそ、ITコスト削減の“宝の山”が埋もれているのです(佐藤氏)」


 「日本では、ITマネージャに金銭的な責任が発生しないのも大きな問題といえます。ITマネージャに課せられる仕事は、一にも二にもシステムダウンを発生させないことですから、多少コストが高く付いても、ストレージベンダーにすべて依頼できる高価なストレージを選択してしまうのです。しかし、SAN(Storage Area Network)にしても、ストレージ管理ソフトウェアにしても、これらはすべてTCO(Total Cost of Ownership)の削減につながるものです。本来は、ITマネージャもストレージコストに対する分析をしっかり行い、ストレージを導入しなければならないはずです(トンプソン氏)」

 「例えば、あるストレージベンダーの提案に従って、10TBのストレージを導入したとします。しかし、このストレージを管理するために、スタッフを2人増員するのであれば、コスト削減にはまったくつながりません。また、ストレージ関連の作業は深夜に行わなければならないことも多く、人件費の単価も必然的に増加します。ITマネージャは、こうした細かい部分にまで気を配らせて、本当にコストを削減するにはどうすればいいかを真剣に考える必要があります(トンプソン氏)」


さまざまな側面からストレージコストの削減を考えていく

 すでに述べたように、ストレージにかかるコストは、その2割がディスクアレイの購入費用、残りの8割が運用管理コストとダウンタイム時に発生するコストである。従って、ストレージコストを削減していくには、これらの両側面からメスを入れていかなければならない。

 まず、前者にあたるディスクアレイの購入費用だが、低価格化が進む現在の市場動向を見れば、毎年5~10%のレベルで下がっていくのは当たり前のことだ。また、システムインテグレータを通さないストレージベンダー直結のダイレクトビジネスを利用すれば、それなりに高い割引率が適用される場合もある。このため、ストレージの導入時に限定すれば、この程度のコスト削減は比較的容易に見込むことができる。

 しかし、ここで見落としがちなのがストレージが持つ実質的な価値である。IDC Japanの調べによれば、ストレージの平均的な使用率は35~40%であるといわれており、残りの60%以上は使われないままだという。これは、企業の部門ごとにストレージを手当てする非効率な運用形態とエンドユーザーがストレージ容量に余裕がなくなることを恐れ、かなり余裕を持った構成で導入していることに起因する。この計算に従えば、10TBのストレージを導入したとしても、実際に使われているのは4TB程度ということになる。仮に1MBあたり30円の導入コストがかかったとすれば、10TB分の3億円を投資したとしても、実際の価値は1億2000万円にしかならず、1億8000万円は導入と同時にドブに捨てるようなものだ。従って、ストレージの実質的価値を高く維持するためにも、ストレージの使用効率を常に高めておくことが非常に重要なのだ。

 次に、後者の運用管理コストやダウンタイム時のコストだが、運用管理コストはストレージの容量に従って増大する傾向にある。ストレージ容量があるレベルを超えれば、管理者を増員する必要性にも迫られるため、運用管理コストの増大は想像以上に目立つものとなる。現在、企業が扱うストレージ容量は6カ月あたり2倍のペースで増えているため、ハードウェアの微々たるコスト削減効果は、運用管理コストの増大によって簡単に相殺されてしまう。

 また、ガートナーの調べによれば、ストレージに関連したダウンタイムは企業全体のダウンタイムのうち30%を占めるという。その多くは、ストレージ容量の追加や再割り当てのための再構築作業にまつわる計画停止であり、これに伴うサービス停止を正確に見積もると、年間で相当な額の企業損失コストが発生していることが分かる。

 従って、いかに少ない管理者で大容量のストレージを管理するか、そのためにストレージに関連した仕事をいかに簡潔化、自動化するか、さらにはいかにストレージを止めることなくストレージを運用し続けるかがコスト削減の大きな決め手となる。


ストレージ仮想化技術によってストレージ統合を推し進める

ストレージ仮想化の効果(出典:データコア・ソフトウェア)。ストレージ仮想化技術を導入することにより、ストレージ容量を少しずつ段階的に増やしていけるようになる。1MBあたり30円の導入コストがかかるとすると、12TBのストレージを購入するには3億6000万円が必要だ。一方、初年度に3TBを購入し、以降毎年3TBずつを追加して12TBとした場合、年率50%でMB単価が安くなると仮定すれば、初年度が9000万円、2年目が4500万円、3年目が2250万円、4年目が1125万円となり、合計金額は1億6875万円と一括購入時の半額以下で済む。
 多くの企業では、すでに各部門で自由にストレージを導入し、DAS(Direct Attached Storage)環境ないしは小規模のSAN(Storage Area Network)を構築している。しかし、先述のような問題を抱えている限りは、各部門でストレージが増え、分散するにつれて無駄も増えていく。そこで、分散したストレージ環境を一つに統合し、全体最適化を行う必要が出てくる。

 このときに威力を発揮するのが、ストレージ仮想化技術である。各部門のストレージをストレージ仮想化技術によって一つに統合すれば、各サーバーからはストレージ全体が仮想的な一つのストレージプールに見えるようになる。この仮想ストレージプールの一部領域を仮想ボリュームとして各サーバーに割り当てる。こうすれば、ある部門で使っていないストレージ容量を他の部門に割り当てたりできるため、ストレージの使用効率を大きく高められる。また、ストレージ容量を短いスパンで段階的に増やせることから、常に高いストレージ使用率を維持しながらストレージ全体の容量を増やしていける。

 「これまでは、ストレージを追加するスパンを広げるために、十分に余裕を持った“ため込み買い”をするケースがほとんどでした。例えば、春に多めのストレージを購入したら、秋にはお休みし、翌年の春にストレージを追加するという感じです。しかし、ストレージ仮想化技術を導入すれば、必要なときに必要なだけストレージを追加できるようになります。例えば、春には少量に抑えてストレージを購入し、秋に優れたプラットフォームが登場したら、そこでさらに追加するといったことが可能になります(佐藤氏)」

 中編では、ストレージコストを大幅に削減するデータコア独自の手法と、それを具現化するストレージ統合管理ソフトウェア「SANsymphony」の特徴を取り上げる。



URL
  データコア・ソフトウェア
  http://japan.datacore.com/

関連記事
  ・ データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [中編](2003/12/16)
  ・ データコア・ソフトウェアに聞くストレージコスト大削減術 [後編](2003/12/17)


( 伊勢 雅英 )
2003/12/15 00:00

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