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ベリタスソフトウェアに聞く同社のビジネス戦略 [後編]


ベリタスソフトウェア株式会社 マーケティング本部 プロダクトマーケティング マネージャの朝倉英夫氏
 ベリタスソフトウェア株式会社(以下、ベリタス) マーケティング本部 プロダクトマーケティング マネージャの朝倉英夫氏に、ストレージ戦略と各製品の特徴をお聞きした。後編では、ユーティリティコンピューティングの実現に欠かせないベリタスの新製品群を取り上げる。本連載はストレージに特化したものであるため、これらの新製品の中でも特にストレージへの関連性が強いCommandCentralファミリに重点を置く。なお、この記事は12月16日の合併発表前に取材したものに基づく内容であることをお断りしておく。


システムの自動化を推し進めるCommandCentralファミリ

 中編では、ユーティリティコンピューティングを実現するソフトウェア群の具体的な構成を説明した。その中で今回取り上げる製品が、VERITAS CommandCentralファミリ、VERITAS i3、VERITAS OpForceの3つである。「ユーティリティコンピューティングを実現するためには、従来のようなストレージ製品の延長線上では対応しきれません。このため、サーバーに重点を置いたり、アプリケーションにもっと近寄ったりする必要があるのです。今後は、こうした新しいタイプの製品が続々と登場する予定です(朝倉氏)」。


ベリタス製品群の中でのVERITAS CommandCentralファミリの位置付け(出典:ベリタスソフトウェア株式会社、以下同様)。
 まず、VERITAS CommandCentralファミリだが、これは各種アプリケーションの可用性を高める「VERITAS CommandCentral Availability」、社内での共有サービスやユーティリティコンピューティング・モデルの構築を支援する「VERITAS CommandCentral Service」、ストレージインフラの効率性を最大限に高める「VERITAS CommandCentral Storage」から構成されている。いずれも“自動化”という切り口から開発された製品だ。

 近年のシステムにはさまざまなアーキテクチャが混在しており、非常に複雑化している。また、オペレータや管理者がさまざまな管理業務を力業で行っているが、人間が介在するとそれなりのヒューマンエラーが必ず発生する。さらには、これらのスタッフの人件費も無視できない。なぜならば、企業にとって人件費こそが最も高いコストだからだ。そこで、ベリタスはこれらの問題を解決するためにシステムの自動化を強く推進している。

 システムの自動化によって改善されるものとしては、効率や生産性の向上、サービスレベルの維持もしくは向上が挙げられる。また、変化への対応や新たな展開も迅速に行えるようになる。いうまでもなくビジネスは時々刻々と移り変わっている。従って、変化の著しいビジネス側からの要求に対して素早く対応できるようなシステムが不可欠といえる。しかし、従来のような人手を介した手法、すなわち新たなスキルを身につけるためのトレーニングを受けたり、外部から人材を探してきたりするような手法では、対応に時間がかかってしまう。そこで、こうした人手のかかる作業をソフトウェアで肩代わりし、時間を短縮しようというのがベリタスの目指す方向なのだ。


ITサービスのコストを可視化するという斬新な考え方

 VERITAS CommandCentralファミリは、3つの製品(Availability、Service、Storage)の間でユーザーインターフェイスを完全に統一した。管理画面はWebベースだが、まずポータル画面があり、そこからAvailability、Service、Storageのいずれかを選んでそれぞれの管理画面に移れるような形となっている。また、3つの製品で使用するさまざまなデータのフォーマットはすべて統一され、単一のデータベースに格納されている。このため、これらの製品間でデータを共有でき、結果として相互の連携が大きく強化された。


VERITAS CommandCentral Availabilityの特徴と表示画面例。
 それでは、それぞれの製品の概要を見ていこう。1つ目のVERITAS CommandCentral Availabilityは、VERITAS Cluster Serverと密接に関わることでアプリケーションの可用性管理を高める製品だ。具体的には、サーバーのアップタイムがどうなっているのか、クラスタ群が複数ある場合にそれぞれのクラスタがどのように使用されているのかといった管理情報を取得したり、一カ所からさまざまなプラットフォームのクラスタ構成を管理、変更したりといったことが可能になる。

 2つ目のVERITAS CommandCentral Serviceは、社内での共有サービスやユーティリティコンピューティング・モデルの構築を支援する役割を果たす製品だ。具体的には、IT部門が提供するサービスの定義と顧客への提供、サービスレベルとリソース使用に対する効果測定およびレポート、ワークフロー・エンジンを使用したプロビジョニングの自動化、使用したサービスに対するコストの割当てなどを実行する。

 ここで最も興味深いのが、ITサービスのコストを可視化するという考え方である。中編でも少し説明したように、電気、水道、ガスなどのインフラは、顧客に対して一定のサービスを提供する代わりに、そこでかかったコストを顧客にしっかりと請求する。つまり、壁のコンセントに電化製品をつなげればいつでもその機器が動く、蛇口をひねればいつでもきれいな水が出てくるという高品質のサービスを提供する代わりに、これらの使用料は集金や口座引き落としという形で使用者に対して請求されるわけだ。

 一方、これらのサービスと比較して、ITサービスはついつい無料と思われがちだ。アウトソーシングのサービスは他社からの請求書によってコスト意識を強く抱くものの、社内のITインフラを使用しているようなケースでは、これがあたかも無料であるかのように錯覚されやすい。しかし、ハードウェアやソフトウェアの購入、管理者の人件費などがかかっている以上、本来無料であるはずがない。

 VERITAS CommandCentral Serviceは、こうしたITサービスのコストを可視化し、そのサービスを利用する誰もがコストを明確に把握できるようにする。たとえば、営業部門、マーケティング部門、管理部門でどれだけのコストがかかっているかを算出し、そのコストを各部門に対して請求し、コスト負担をしてもらうことが可能だ。これは、電気、水道、ガスなどのインフラとまったく同じ考え方である。「欧米の企業では、実際に部門ごとにコストを請求することがありますが、日本の企業はそこまでするケースはほとんどありません。しかし、ITサービスのコストに対して、それに見合うだけの収益を上げているかどうかという効果測定を正確に行う上で、今後は部門ごとにITサービスのコストを明確にはじき出す必要があると考えています(朝倉氏)」。


バックアップのコストも算出可能なVERITAS CommandCentral Service

 VERITAS CommandCentral Serviceは、ユーティリティコンピューティングの安定した基盤作りに欠かせないバックアップにも密接に関係している。VERITAS CommandCentral Serviceの管理下に置けるバックアップソフトウェアは、いうまでもなくマーケットシェアNo.1のVERITAS NetBackupとNo.2のVERITAS Backup Execだが、顧客のすべてがこれらを使っているわけではない。そこで、他社製品としてIBM TSM(Tivoli Storage Manager)とLEGATO NetWorkerもサポートされている。これにより、顧客が使用しているバックアップソフトウェアのかなりの部分をカバーできるという。

 VERITAS CommandCentral Serviceは、サービスの内容から最終的に課金するまでの一連の流れを定義するが、特にワークフローの定義がユニークだ。従来のソフトウェアはジョブスケジューラという形でジョブの内容とその実行日時、実行サイクル(毎日、毎週、毎月など)を指定するのが一般的だが、VERITAS CommandCentral Serviceは、途中に条件を設け、その条件に従って作業を分岐させていくワークフロー方式を採用している。これは、バックアップ作業も同様であり、ジョブスケジューラに基づく従来型のバックアップソフトウェアと比較するとかなり柔軟性が高い。「ワークフローの考え方を導入したことで、バックアップを含むさまざまなITサービスの“自動化”をいっそう進めることに成功しました(朝倉氏)」。


会社の収益を正確に算出するには、部門ごとのバックアップサービスに対するコストを明確にする必要がある。VERITAS CommandCentral Serviceならば、こうしたコスト算出、課金システムを簡単に構築できる。
 コストの可視化の一環として、バックアップコストを算出、課金する仕組みも整っている。バックアップサービスを提供するIT部門とバックアップサービスを受ける部門があった場合、同じバックアップを行うとしても、部門ごとにバックアップ対象となるデータ量が異なる。また、バックアップを実行する時刻やその所要時間(ウィンドウ)、さらにはバックアップの対象となるデータの重要度も大きく異なるのが一般的だ。このため、部門ごとのバックアップに対して何らかのグレードを与え、そのグレードに応じた課金を請求するという考え方が必要になってくる。

 例えば、毎日夜中にバックアップを行う営業部門には高価なコストを、週に1回の割合で少量のバックアップを行う管理部門には安価なコストを、毎日だが昼間にバックアップを行えるマーケティング部門には中間のコストを課金するといった具合だ。このような課金システムを設ける場合、従来であればバックアップログをたどって管理者がひとつずつ計算していく必要があったが、VERITAS CommandCentral Serviceでは、課金区分、課金単位、サービスの実行時間に基づいたコスト割当のモデリングを行うだけで、あとは自動的にバックアップコストを算出してくれる。


ストレージインフラの効率性を最大限に高めるVERITAS CommandCentral Storage

 3つ目のVERITAS CommandCentral Storageは、包括的なストレージリソース管理とエンドツーエンドでのデータパス管理を実現するソフトウェアである。もともとは「VERITAS SANPoint Control」という製品名で発売されていたものだが、バージョン4.0からCommandCentralファミリに統合されたため、これを機にVERITAS CommandCentral Storageという名称に変更された。

 VERITAS CommandCentral Storageは、まずSAN環境に含まれるハードウェアを自動的に検出し、画面上にグラフィカルなトポロジマップを作成する。これにより、SAN環境にどんなリソースが存在するのか、そして各サーバーがどのスイッチを経由してどのストレージに接続されているのかなどを把握できるようになる。また、ストレージからネットワーク環境を経由して最終的にサーバー上のどんなアプリケーションが動作しているかという部分まで確認できる。このため、トラブルが発生した際には障害箇所を迅速に特定できる。


ストレージ全体にわたるファイルの使用状況を簡単に確認できるため、ストレージの使用効率を高める指針を立てたり、キャパシティプランニングを行ったりする際に役立つ。
 さらに、ファイルの使用状況を統計化する機能も充実しており、サーバー、ベンダー、ユーザー、アプリケーションごとのファイル使用量をグラフで表示できる。ここでは、不要なファイル、長期間アクセスのないファイル、重複ファイルに加え、データ拡張の著しいサーバーやボリュームなども調べられるため、将来の傾向予測を出すキャパシティプランニングに役立つ。

 VERITAS SANPoint Controlからの主な変更点としては、Linuxホストエージェントのサポート(Red Hat Enterprise Linux 2.1)、HBAのスムーズな交換を支援するウィザード、VERITAS Volume Manager DMP監視機能、自動ディスカバリが可能なアプリケーション追加などが挙げられる。また、SNIA SMI-S(Storage Management Initiative Specification) 1.0.2にも対応している。SAN環境で複数のベンダー製品が混在しているケースでは、プロビジョニングやゾーニングを行う場合に各社のツールをすべて覚えなければならない。SANPoint Controlは、こうした複数のベンダー製品に対して同じ操作体系でプロビジョニングやゾーニングを行えることが大きなセールスポイントだった。

 ただし、こうした操作環境を実現するには、対象となるベンダー製品のAPIをいくつも組み込んでいく必要がある。とはいえ、すべてのAPIを組み込めるわけではない。現実的には、業界内でのシェアなどを配慮しながら優先順位を付けて組み込んでいくことになる。ベリタスは、アメリカに本社を置く企業なので、アメリカの市場を見て判断している。このため、「従来のVERITAS SANPoint Controlでは、日本国内のストレージベンダーへの対応が遅れ、日本のお客様の要望に最大限応えられませんでした(朝倉氏)」。

 そこで、SNIA(Storage Networking Industry Association)が、SMI-Sと呼ばれるオープンなストレージネットワーク管理インターフェイス規格を開発した。これにより、SMI-Sに準拠したすべてのストレージコンポーネントは、SMI-Sで定められた共通の言語を通じて互いに会話できるようになる。つまり、SMI-Sに対応したVERITAS CommandCentral Storageは、SMI-Sに対応したストレージハードウェアをベンダーによらず制御、管理できるようになるわけだ。主要な国内ベンダーはSMI-Sのサポートをすでに表明しており、SMI-S準拠のハードウェアが登場することで管理対象が大きく広がる。

 「SMI-S対応製品の互換性を検証するテストが、SNIA 日本支部(SNIA-J)で行われています。来年1月に開催されるSTORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2005では、SNIA-Jメンバー企業が自社のSMI-S対応製品を持ち寄ってデモを行う予定です。これが、SMI-Sの普及に向けた布石となればと思っています(朝倉氏)」。


アプリケーションパフォーマンスの低下を未然に防ぐVERITAS i3

 アプリケーションのパフォーマンスとシステムダウンは密接に関係しており、何らかの理由でパフォーマンスが低下し、それを放置しておけば、いずれはシステムダウンへとつながる。クライアントPCや社内のイントラネットサーバーであれば力業で復旧を図れば済む話だが、ビジネスに直結するミッションクリティカルなシステムでは多大な損害を被る結果となる。

 第一の損害はシステムダウンに伴う直接的な売上損失である。メタグループによれば、エネルギー関連の業種は1時間あたり2800万ドル、通信は2000万ドル、製造は1600万ドル、金融は1400万ドル、保険は1200万ドル、流通は1100万ドル、薬品は1000万ドルの売上を失うという。この数字だけでも相当な損害だが、もっと重大なのはそれ以外の部分にある。例えば、マーケットシェアの減少、株価の低下、顧客満足度や評判の低下などが挙げられる。これらは、いったん失ってしまうと回復が難しく、最悪の場合には企業自身が倒産に追い込まれる危険性もある。従って、システムのダウンは何が何でも回避しなければならないのだ。

 従来は、スキルのある管理者が自身の職人技を発揮してアプリケーションのパフォーマンスチューニングを行い、システムを健康な状態に保ってきた。しかし、近年のアーキテクチャは、Webサーバー、アプリケーションサーバー、データベースサーバー、ストレージなどからなるマルチティア構成をとっており、かなり複雑化している。こうした複雑なアーキテクチャでは、システム維持に必要な情報を取得するのが困難だ。例えば、1年前の同じ日と比較してデータベース処理により多くのCPUを必要としているのかどうか、過去6カ月間にどのインデックスが使われていないのか、新しいインデックスの追加でどのSQL文に影響があるのか、最近行ったSQLのチューニングがCPUの使用率にどのような影響を与えているのかといった質問に即答するのはもはや不可能である。同様に、パフォーマンス低下の問題が発生したときに、その問題箇所を特定するのも非常に困難となっている。


VERITAS i3は、VERITAS Insight、VERITAS Indepth、VERITAS Informの3製品から構成されている。
 そこで、VERITAS i3の出番である。VERITAS i3は、iの3乗というところからも分かるように、VERITAS Insight、VERITAS Indepth、VERITAS Informという3種類の製品から構成されたアプリケーションパフォーマンス管理ソリューションだ。VERITAS i3は、複雑なシステム環境を継続して監視することにより、データベース、J2EE、Web、ERPといったアプリケーションのパフォーマンスを最大限に高める。そして、もしパフォーマンスの低下が検出されたら、問題箇所の迅速な診断と修正を行える。

 VERITAS Insight、VERITAS Indepth、VERITAS Informの役割分担は次のようになる。まず、VERITAS Insightは問題がどこで発生しているのかを明確に示す役割を果たす。VERITAS Indepthは、問題箇所が分かったらその部分を集中的に深く掘り下げ、問題の原因と解決策を提示してくれる。VERITAS Informは、VERITAS Insight、VERITAS Indepthによって得られた情報をPerformance Warehouseと呼ばれる格納庫に蓄積し、パフォーマンスに関するレポートを作成したり、普段の運用でパフォーマンス低下の警告を行ったりする。

 さらに、DB2、Oracle、Microsoft SQL Serverのデータベースを自動的にチューニングしてパフォーマンスを最適化する機能も装備されている。まず、SQL文の単位まで調べ上げ、処理に時間がかかっている順にSQL文を表示する。これにより、パフォーマンスの低下を誘引しているSQL文を簡単に特定できる。また、問題のSQL文に対してインデックスの追加を推奨するといった、具体的かつ専門的なアドバイスも提示される。その修正案を適用することで、どれくらいパフォーマンスが向上するかというシミュレーションも実際に行われ、管理者はその結果をもとにアドバイスに従うべきかどうかを決定できる。

 「実際にVERITAS i3を導入されたお客様の中には、パフォーマンスが劇的に向上したところも出てきています。例えば、ある精密機器を製造するお客様のシステムでは、データベースのバッチ処理に3時間11分かかっていたものがVERITAS i3のチューニングを通じて12分に短縮されました。情報関連のお客様では、翌日の業務にまでずれ込んでいたバッチ処理がハードウェアを追加することなく約18分にまで短縮されました。まさに劇的な改善といえます」。

 「データベース周りにはさまざまな変更要素があり、システム開発後のテスト段階でクリアできれば終わりというわけではありません。運用の過程でさまざまな変更を加える必要があり、そのたびごとにパフォーマンスも変わってきます。これを人手で追跡していくのは不可能ですから、ぜひVERITAS i3でパフォーマンス管理を行っていただきたいと思います。そういう意味では、設計テスト段階だけでなく、むしろ本番環境の運用段階でより使っていただきたい製品です(以上、朝倉氏)」。


VERITAS Insightの製品概要と画面表示例。 VERITAS Indepthの製品概要と画面表示例。 VERITAS Informの製品概要と画面表示例。

サーバーのプロビジョニングを自動化するVERITAS OpForce

VERITAS CommandCentralファミリの配下にサーバープロビジョニング(VERITAS OpForce)とパフォーマンス管理(VERITAS i3)も加わる予定。
 最後に取り上げるVERITAS OpForceは、12月6日に発表されたばかりのサーバーライフサイクル管理ソフトウェアである。サーバーリソースの検出、インベントリ、プロビジョニングに必要とされていた手作業を自動化することで、サーバー管理を簡素化し、サーバーの運用効率を向上させるのがVERITAS OpForceの役割となる。

 一般にプロビジョニングといった場合、その対象にはストレージとサーバーの2つがある。ストレージのプロビジョニングについては本連載でも幾度となく取り上げているが、VERITAS OpForceは後者のサーバーを対象とした新しいタイプのソフトウェアとなる。従来のシステム構築は、1台のサーバーの中で性能アップを図るスケールアップの手法が多く採用されていた。しかし、スケールアップは、サーバーパフォーマンスの上限がサーバー自体のハードウェア仕様によって決まってしまう。従って、サーバーを購入する際には、将来的なピークとサーバーが到達できる一番高いパフォーマンス レベルを一致させなければならない。例えば、5年後のピークを予測し、そのピークに耐えうる仕様を持つ高価なサーバーを最初から購入しなければならないということだ。

 しかし、これではサーバーのリソースが普段からだぶついてしまい、非常に無駄である。ストレージのGB単価が下落しているのと同様に、CPUリソースの単価(例えばIMFLOPSあたりの単価)も年々下落している。余分なCPUリソースを早期に購入するよりも、最初は最小限にとどめておき、必要なときに必要なだけ追加していった方が総コストを抑えられることは明白だ。そして、これを可能にするためには、サーバーの台数を増設することでパフォーマンスを高めていくスケールアウトの手法が必要である。幸いにも、最近では安価なLinuxサーバーや高密度配置の可能なブレードサーバーが続々と登場しており、スケールアウトを積極的に採用できるインフラが整いつつある。VERITAS OpForceは、こうした近年のシステム環境でサーバー群の効率的なプロビジョニングを可能にする。


VERITAS OpForceのシステム概要。
 VERITAS OpForceは、各種管理機能を提供するOpForceサーバーとサーバー情報を格納するOpForceデータベース(フリーのPostgreSQLを標準採用)、サーバースナップショットを保存するOpForceストレージ、そしてVERITAS OpForceの管理対象となるサーバー群から構成される。サーバースナップショットとは、パーティションマップ、ボリューム、マスターブートレコード、ファイルシステムのコピー、サーバー属性などが含まれるサーバーのディスクイメージである。このサーバースナップショットを複数のサーバーに同時に展開することで、大規模環境でもサーバーのプロビジョニング作業を容易に進められる。また、何もOSの搭載されていないベアメタルサーバーを用意し、このサーバーに目的のサーバースナップショットを送り込むことで、好きなときに好きなOSが搭載されたサーバーを構築できるようになる。

 現在、VERITAS OpForceがサポートするプラットフォームは、OpForceサーバーがSolaris、Linux、Windows、管理対象サーバーがSolaris、Linux、AIX(英語環境)、Windowsとなっている。HP-UXへの対応は来年行われる予定だ。また、サーバーリソースの利用状況に応じて自動的にサーバーのプロビジョニングを行う“完全”自動化については、「VERITAS i3との連携によってできる限り早く実現したい(朝倉氏)」という。



URL
  ベリタスソフトウェア株式会社
  http://www.veritas.com/ja/JP/

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  ・ ベリタスソフトウェアに聞く同社のビジネス戦略 [前編](2004/12/13)
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( 伊勢 雅英 )
2004/12/27 00:00

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