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ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社 代表取締役社長の津村英樹氏
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SAN向けのスイッチ製品では国内外で圧倒的なシェアを持つブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社(以下、ブロケード)。そんなSANスイッチ一辺倒だったブロケードが、今年5月にストレージ関連のソフトウェア「Brocade Tapestryシリーズ」を発表し、ストレージ業界をひそかに賑わしている。そして、この背景には、ブロケードが目指す高度なユーティリティコンピューティングがあるという。
今回は、ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社 代表取締役社長の津村英樹氏に、ブロケードがストレージソフトウェアを投入した理由、そしてブロケードが目指すユーティリティコンピューティング戦略をお聞きした。前編では、ブロケードが狙っているSANスイッチの新たなセグメントと現在のITシステムが抱えている問題点を取り上げていく。
■ ハイエンドとエントリレベルを開拓するブロケードのSANスイッチ製品群
以前の連載記事「SNWレポート ~Expo会場に展示された注目製品~ [前編]」でも触れたように、最近では大手、新興を含む数多くのベンダがSANスイッチ市場に参入を果たしている。このため、シェアナンバーワンのブロケードといえども、あぐらをかいていられるような状況にはない。また、SANの使われ方自体もある種の過渡期を迎えており、これまでSANが使われていた分野だけでなく、もっと幅広い分野で使われようとしている。むしろ、こうした方向に開拓が進んでいかなければ、SANの市場全体が頭打ちとなってしまうだろう。
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SANスイッチの市場セグメント(出典:ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社)。これから市場の拡大を見込めるメインフレーム中心のハイエンドなエンタープライズ分野とWindows/Linuxサーバー中心のSMB/エントリレベル分野に力を入れていく。
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ブロケードは、これまでUNIXサーバーとストレージを接続するミドルレンジからエンタープライズまでのセグメントをカバーしてきたが、今後はメインフレームを対象としたハイレベルなエンタープライズ分野、さらにはWindows/Linuxサーバーを対象としたSMB/エントリレベル分野にも力を入れていく。いわゆるホワイトスペースを開拓することによって、さらなる売上げ向上を図ろうという戦略だ。
日本では、メインフレームを対象とした市場が大きく伸びると予想されている。メインフレームは、これまでストレージとしてDAS(Direct Attached Storage)を多く用いてきたが。しかし、インターフェイスとしてSANの構築も可能なESCON(Enterprise Systems Connection)やFibre Channel技術に基づくFICON(Fiber Connection)が登場し、メインフレームとストレージ間の接続にもSANが導入され始めている。ブロケードはこの部分でスイッチの大きな需要が生まれることを期待している。
■ 今後急速な立ち上がりが期待されるブレードサーバー向けのSANスイッチ市場
メインフレーム市場で一点懸念があるとすれば、それは2007年問題だ。2007年問題とは、メインフレームを中心とした基幹系システムを開発、保守してきたベテランエンジニアが2007年以降に次々と引退し始め、これらのシステムを維持するのが困難となる現象を指している。企業によっては、こうした問題を未然に防ぐために、基幹系システムのインフラとしてメインフレームからオープンシステムへの移行を急いでいる。当然、メインフレームが減っていけば、メインフレームを対象とした市場は縮小していくと考えられる。
「確かに2007年問題は、メインフレームからオープンシステムへの移行を強く推し進めるだろうと予想しています。しかし、すべてがオープンシステムに移行するわけではなく、メインフレームのまま残っていくものも当然あります。ブロケードは、こうした残されたメインフレーム向けの高速なI/Oを提供する目的でSANスイッチ製品を引き続き提供していきます。他国に比べてメインフレームの利用率が圧倒的に高い日本では、メインフレーム分野もかなり期待のできるセグメントなのです(津村氏)」。
もう一つは、Windows/Linuxサーバーを対象としたSMB/エントリレベル分野だ。これは、ストレージ市場全体として特に伸びている分野でもある。これらの中でも、ブロケードが注目しているのはブレードサーバーであり、2007年にはIAサーバー全体の20%がブレードサーバーになるという予測もある。現在、ブレードサーバー市場におけるエンベデッドSANスイッチのシェアは、ワールドワイドではQLogicなどの低価格スイッチと競合するケースがあるが、日本ではブロケードが圧倒的なシェアを持つという。
「日本のお客様は、既存のSANとの接続性やバックアップを共有したいといったニーズが非常に強く、むしろ価格の安さよりもスケーラビリティや将来的な展開に重きを置く傾向にあります。ブレードサーバーの市場はこれから急速に伸びていきますので、今後1~2年というスパンで見ると、メインフレーム向けのスイッチとともにブレードサーバー向けのスイッチもブロケードの売上げに大きく貢献してくれるでしょう(津村氏)」。
■ 日本の基幹系システムを支えるメインフレームの長所と短所
SANのセグメントはエンタープライズからSMBまでとかなり幅広いが、SANの利用形態を見る限りは、基本的に複数サーバーと複数ストレージを結ぶポートエキスパンションでとどまっているのが現状だ。そこで、SANの進むべき次なるステップが、ユーティリティコンピューティングである。ユーティリティコンピューティングは、水道の蛇口をひねるように情報がいつでもどこででも手に入るといったたとえでよく表現されるが、これはクライアント側から見た場合のものだ。ブロケードが着目しているのは、むしろデータセンター側、水道にたとえれば水道局側をいかにユーティリティコンピューティングに向けて展開していくかという部分にある。「ユーティリティコンピューティングに求められているSANの機能は、水道局側すなわちデータセンター側の仕組みをいかに改善するかということに尽きるのです(津村氏)」。
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メインフレームとオープンシステムの長短を整理したもの(出典:ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社)。メインフレームとオープンシステムには相反する長短を持つことが分かる。現在、企業に求められているシステムとは、メインフレームとオープンシステムの長所を合わせ持つシステムなのだ。
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現在、企業のITシステムにはメインフレームとオープンシステムという2つのシステムが混在している。そして、コンピュータの機能から見たメインフレームの完成度は非常に高い。処理性能、信頼性、可用性などはいうまでもなく、プロプライエタリな技術を投入しているからこそ、問題が発生しても確実に解決でき、顧客はシステムを安心して使えるのだ。集中管理という面でも、たとえばプログラムのアップグレードやパッチを当てるという作業は、ひとつのシステムに対して行えば済むので非常に簡素である。また、メインフレームの世界では、CPUを複数のアプリケーションに動的に割り当て、それに付随するデータも動的に割り当てるといった仮想化のソリューションもすでに完成している。オープンシステムでは最新のソリューションとして取り上げられているILMも、メインフレームの世界ではHSM(Hierarchical Storage Management)としてすでに定着した技術だ。
しかし、メインフレームのコストは莫大である。導入コストはもちろんのこと、その運用コストもばかにならないほど高価なのだ。さらに、すでに述べた2007年問題も大きく影響している。特にCOBOLアプリケーションのベースとなる業務の流れを知っている人が定年退職を迎えようとしており、仮にCOBOLというプログラム言語が分かっている人を見つけたとしても、業務の流れを理解しているとは限らないため、結局のところプログラムの開発や維持が不可能になりつつあるのだ。そこで、IT管理者の中では、メインフレームが持つ技術的な優位性をいかにオープンシステムで安価に実現するかという議論に帰結しており、またオープンシステムへの移行も急ピッチで進められるようになった。
■ 情報システム部門が抱える問題点は、Cost、Complexity、Compliance
オープンシステムは、コストを下げるための技術革新が順調に進んでおり、システムを比較的自由に配置できるというメリットをもたらした。これにより、部門レベルでも気軽に業務システムを導入できるようになった。一方、あまりにも低価格なサーバーやストレージを分散配置してしまったがゆえに、この物理的な分散が大きな足かせとなりつつある。たとえば、全社的に技術のアップグレードを行う、法令遵守の絡みで全社的にデータの集中管理を行うといったことが不可能になってしまったのだ。これが、オープンシステムの抱えている最大の弱点といえよう。
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情報システム部門が抱える問題点を3つのCでまとめたもの(出典:ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社)。1番目のCであるCostは、、オープンシステムに移行してもなお避けられないコスト、そして現状のシステムアーキテクチャに起因するコストなどを指している。
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ブロケードは、エンドユーザーがSANに求めているものを探るために、マーケティングのエグゼクティブ自身が顧客の情報システム部門に対して直接ヒヤリングをかけたという。そして、このとき得られた回答から、Cost(コスト)、Complexity(複雑さ)、Compliance(法令遵守)という3つのCが導き出された。
Costは、オープンシステムに移行してもなお避けられないコスト、そして現状のシステムアーキテクチャに起因するコストのことだ。まず、ハードウェアの分散配置にともなうリソースの無駄が挙げられる。それぞれのハードウェア単価は、確かに劇的に低下している。しかし、設置台数が無数に広がっている現状では、ハードウェアそれぞれに発生するリソースの無駄は逆に増える一方だ。
たとえば、Windows/Linuxサーバーを導入する場合、業務アプリケーションに従属する形で購入するのが一般的だ。このとき、昼間は業務で使えていても夜は遊んでいるケースが多い。いくらハードウェアが安価になったとはいえ、CPUの稼働率という点で見ればハードウェアの台数分だけ無駄が広がるわけだ。そして、当然のことながらサーバーに従属する形で使用されるストレージにも無駄が増えていく。「ストレージの未使用率は、どんなにストレージをうまく活用したとしても50%以上あるといわれています。つまり、ストレージを買えば、おまけに50%の無駄も一緒に買っていることになります。だからこそ、ハードウェアの初期投資のみならず、購入したハードウェア内部の無駄をいかに減らすかという点に着目しなければならないのです(津村氏)」。
もう一つのコストは、定常投資の増大だ。定常投資とは、既存システムの維持管理に必要なコストのことである。ドイツの金融機関が日本のIT投資の動向を調査したところ、企業ベースで見てみると2002年から会社の売上げに占める割合は毎年増大しているという。しかし、その内訳を見ると、増えているのは定常投資であり、新規システムの創設やプログラムの作り直しなどに向けた開発投資は3年間まったく増えていない。これは、小規模に分散したシステムを管理したり、メインフレームを中心とするレガシーシステムの運用にコストがかさんだ結果といえる。
「現在のIT投資は、残念ながら企業のビジネスチャンスにはあまり寄与していません。今後は、いかにして定常投資を減らし、その削減分を開発投資に回せるようにするかが重要になります。だからといって、属人的な位置づけにあるITシステムを全面的に再構築するアプローチでは巨額の投資がかかってしまいます。そこで、ブロケードは、一度にシステム全体を切り替えるのではなく、段階的に切り替えつつも、根本的に改善できるような技術のステップを具体的に提案していくつもりです(津村氏)」。
中編では、残りのCとなるComplexityとComplianceの詳細、そして3つのCを解決する“オープンな仮装メインフレーム”を取り上げていく。
■ URL
ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社
http://www.brocadejapan.com/
■ 関連記事
・ ブロケードが目指すユーティリティコンピューティングとは? [中編](2005/09/12)
・ ブロケードが目指すユーティリティコンピューティングとは? [後編](2005/09/22)
( 伊勢 雅英 )
2005/09/07 09:32
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