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ANA氏川氏、「ミッションクリティカル業務での信頼性が決め手」

Real Application Cluster Summit 3講演

 日本オラクル株式会社と日本ヒューレット・パッカード株式会社の共催による「Real Application Cluster Summit 3」が、10月14日に東京コンファレンスセンター品川で開催され、全日本空輸株式会社IT推進室の氏川剛志氏による「安全・快適運航を支えるシステム基盤作り~ミッションクリティカル業務対応のシステム整備に向けて~」と題する特別講演が行われた。同社では、今年の4月より、気象・航路情報、飛行計画、運行状況に加え、乗客と運行・客室乗務員の情報、貨物・郵便、航空機整備といった、運行便を安全快適に運行するため必要要素を総合的に管理する業務を担うオペレーション系の共通基盤システムに、HPサーバーとOracle 9i RACを採用している。

 ANAグループのITインフラは、システム企画全般を担当するIT推進室49名のほか、グループ会社であるANAシステム企画の580名、ANAコミュニケーションの210名、計840名弱で構築・運用が行われており、ANAグループの運行する国内760便で4800万人、国際60便で400万人、一日あたり14万人の足を担っている。


メインフレームからOracle 9i RACへ

 同社では2000年末のY2K問題の際、「システム調査に膨大な時間を要した」ことをきっかけに、コスト面なども考慮して次システムの検討が始まった。同社では、その運行便の7割の離発着を占める羽田にオペレーションコントロールセンターがあり、ここで24時間365日、全便運行の管理を行っているため、ミッションクリティカルなシステムが求められていた。

 従来のシステムには、空港系ホスト8、旅客系ホスト3のメインフレームが存在しており、合計でホスト端末400台(Windowsベースのエミュレーション)が接続されていた。このほかにサーバー系のシステム17が稼働する状態だった。これらのデータ重複はもちろん、「計28システムが個別最適化による乱立状態にあり、そのシステム間接続もスパゲッティ状態(回線の複雑化・重複化)になっていた」。また個々のシステムの端末が別で、それぞれの操作方法もメインフレームがCUI、サーバーがGUIと不統一だったという。さらにグループ会社であるエアーニッポン、エアージャパンなどとの連携も図られておらず、運用コスト、業務負荷、予測・判断への労力それぞれが高まっていた。また「メインフレームはCOBOL、FORTRANで動作していたため、技術者の確保も年々難しくなっていた」そうだ。

 同社では業務全体を見渡せるシンプルな構成とシームレスに利用可能なシステムの構築、さらに老朽化を見据え、将来的にはオープン系へのシステムの移行を目指し、28システムの段階的な移行を決めた。この第1段階として、現行システムを残しながら、全体の基軸となり機能・データの統合・共有化を図るシステムの導入を、2002年10月から翌3月にかけて全日空システム企画を中心に、日本HP、日本オラクルに加え、同時に導入したEAIシステムのSIerであるNTTソフトの3社の手で行った。ちょうどサーバー系のひとつである客室乗務員のシステムは老朽化しており、再構築するタイミングでもあったという。

 同氏は今回の決定を「今後のオペレーション系システムの基盤となるため、最も重要な選択」だったと語り。HPサーバーとOracle 9i RACで実現可能と判断した理由について、HPがOracle 9i RACの開発プラットフォームだったことで、HPの技術者も9i RACを熟知している点を挙げた。


ミッションクリティカル運用でのシステム環境

 導入システムにおけるデータベース部分のハードウェア構成は、本番環境として、HPのrp5470 2CPUが4台、HP StrageWorks Disk Array XP128 2.3TB、スタンバイ環境にはHPのrp5470 2CPUが2台、HP StrageWorks VA7410 2.2TBの構成で、Oracle 9i RACを採用している。

 データベースは、オペレーション業務で基盤となる24テーブルからなるデータ、運行の遅れなどの状況詳細からなる7テーブルのデータ、客室乗務員情報を収めた339テーブルのデータの3インスタンスで構成されており、システムの構築にあたっては、インスタンス間のキャッシュトランザクションの低減、負荷平準化のためアクセス分散などを重視し、業務で使えるパフォーマンスを実現した。

 このシステムは4月から運用を開始しており、いままでは不都合があると待機系に切り替わり、分単位での障害復旧を行っていたが、これが「秒単位になり、可用性が増した」とのことだ。またパッチの適用、バージョンアップが短時間で可能になったほか、ハードウェア構成の拡張面でも柔軟性が増した。システム間接続の開発においても費用が今までの1000万から約1/3になったという。また今までにない効果として、「どのデータがどの業務に影響するのかがわかりやすくなった。今後、データの整理共有により業務で徐々に効果を発揮するだろう」と語った。

 このほかのシステムへの拡張としては、客室乗務員系システムが2003年10月よりすでに稼働を開始しているほか、今後2004年度下期より順次、運行管理システムなどから対応していく予定となっている。続く第2段階は現在構築途中であり、今回構築した共通基盤のシステムを中心に、各業務を4つに分割し、それぞれを最適なアーキテクチャで整理統合するとともに、ユーザーインターフェイスを統合する予定だという。

 今回のイベントは、10月23日には大阪ハービスホールでも同イベントが開催される予定。



URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  全日本空輸株式会社
  http://www.ana.co.jp/
  Real Application Cluster Summit 3
  http://hp-seminar.com/rac3/
  導入事例:全日本空輸株式会社
  http://www.jpn.hp.com/biz/casebank/cases/ana/index.html


( 岩崎 宰守 )
2003/10/14 19:58

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