今年中にAlphaを抜き、来年にはPA-RISCを超え、2005年にはPOWERプロセッサをしのぐ--高性能プロセッサ「Itanium 2」を核にハイエンドエンタープライズ市場への積極的な攻勢をかけるインテルは、ユーザー企業およびベンダーの間でItanium 2への認識が世界的に高まったことによって、ハイエンド市場でのIA(インテル・アーキテクチャー)戦略は新たな段階に突入した。Itanium 2ビジネスの指揮をとるリサ・グラフ氏は、日本のハードベンダーやソフトベンダーとの絆をさらに深めるべく今週来日、Itanium 2への熱い期待を次のように語った。
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米Intel Itanium 2 Worldwide Ramp、Directorのリサ・グラフ氏
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―まず、グラフ氏のインテル社内における役割をお教えください。
グラフ氏
マーケティング、セールス、ソフトウェアその他、Itanium 2プロセッサに関するワールドワイドでのビジネス全般を担当しています。ハイエンド需要に対応するItaniumシリーズの中でも、さらにハイエストな需要をカバーするのがItanium 2ですので、インテルのさらなる飛躍にとって重要なミッションだと感じています。
―Itanium 2の特徴を。
グラフ氏
要求の厳しいハイエンドエンタープライズ需要を十分にカバーする高性能はもちろんのこと、この高性能を低コストで提供できるコストパフォーマンスの高さがユーザーにとっての大きな魅力です。従来のハイエンドエンタープライズ市場では、周知のように各ベンダーによる固有のRISCチップが幅を利かせていたのですが、Itanium 2によってこの市場もIAベースのサーバーが主流を占めることになるでしょう。
―RISC各社もまだ健在な中でItanium 2が主流になるという根拠を。
グラフ氏
さまざまなベンチマークを見てもRISCを圧倒する能力の高さに加えて、コストパフォーマンスの高さが大きな起爆力となります。情報システムにかかる負荷がますます増大するビジネス環境において、最新の環境で情報システムを活用したいと企業が考えるのは当然です。しかし厳しいビジネス環境の中で、いくら多機能・高性能な最新システムであっても、企業が払えるコストには限界があります。高性能だから価格も高いというのではなく、高性能でしかも低コストであることが求められます。これを実現するのがItanium 2であり、だからこそユーザーの期待も大きいのです。IDCの予測によると、RISCアーキテクチャによるサーバーを、2004年にはIAベースのサーバーが金額的にも上回ることになります。
―Itanium2をとりまく環境整備についてはいかがですか。
グラフ氏
オープンな標準ベースのスケーラブルな64bitソリューションが40社以上の大手ハードベンダーから提供されているほか、Windows Server 2003、HP-UX、Linuxをはじめとする5種類以上のOS、500種類以上のネイティブアプリケーションやツールなども揃ってきました。Itanium 2は従来のItaniumベースのソフトウェアともバイナリレベルで互換性を持ち、これまでの投資が無駄になることはありません。今後IA-32エグゼキューションレイヤの導入により、IA-32アプリケーションへの対応もさらに強化します。今後のItanium 2の能力については、今年第1四半期に比して2005年には10倍以上の能力向上が見込まれています。
―ハードベンダーもRISCからIAベースに比重を移しつつあるように見えますが。
グラフ氏
RISCベンダーの多くがItanium 2ベースのプラットフォームを手がけていることは事実で、2004年にはItanium 2によるサーバーが10万台、2005年には30万台というのがIDCの予測です。
―一昔前にはRISC対CISCという構図がありましたが。
グラフ氏
当時とは環境が大きく違っています。現在のインテルアーキテクチャとは、RISCの長所とCISCの長所を共に活かした新たなアーキテクチャであり、だからこそ現在の成長があります。この意味ではアーキテクチャとしてRISCとIAの比較は意味がありませんが、ベンダー固有のRISCチップを搭載したサーバーがハイエンド市場で今まで主流を占めていたことは事実で、これを調査会社などではRISC陣営と称しているようです。Itanium 2の登場によって性能面でも各RISCチップを凌駕することができましたので、ハイエンドクラスでのIA採用が相次いでいます。
―Itanium 2はすべての性能でRISCを凌駕しているのですか。
グラフ氏
そのとおりです。トランザクション処理や浮動小数点演算その他さまざまなベンチマークの結果を見ても、Itanium 2のパフォーマンスの高さは明らかです。ハイエンドクラスの代表的なアプリケーションの一つであるSAPを走らせても、最高とされるRISCを搭載したサーバーに比較して48%高いパフォーマンスが報告されています。RISCと一口にいっても各ベンダーのRISCチップにはそれぞれ個性があり、さまざまな性能の中でも得手不得手があります。これらをすべての面で上回るのがItanium 2で、オールラウンダーならではの使い易さと信頼性が評価されています。
―RISCや汎用機などの既存の資産に縛られない企業で導入が進んでいるのですか。
グラフ氏
ユーザーとしては既存資産に縛られない企業が一つのターゲットであることは事実です。しかし一方では、従来の汎用機やRISCサーバーからItaniumへと移行する意欲を持つベンダーも多いので、双方に力点を置く必要があります。日本市場は汎用機比率が高いことで知られていますので、汎用機からの移行需要には大いに期待しています。汎用機ユーザーはItanium 2への移行によって、コストを低減しながら高い効率を得ることができるのです。
―日本市場でのIAサーバーの普及状況についてはどのように。
グラフ氏
2年前の世界市場では、大手500社中、IAサーバーを導入している企業はほんの数社にすぎませんでした。しかし今は119社となっています。この傾向は日本市場でも同じです。最近の日本におけるIAサーバーの活況を見ると、日本のハイエンド市場でもようやくIAが花開いてきたと感じます。しかし本格的な普及はこれからですので、先を見据えた息の長い努力を続ける必要があります。ローエンドからハイエンドに至るまで、IAサーバーへと移行する傾向は、中国やロシアなど世界的な高まりを見せています。いよいよこれからが本番です。
■ URL
インテル株式会社
http://www.intel.co.jp/
( 倉増 裕 )
2003/10/24 19:14
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