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国際大学グローコム教授/日経BP社編集委員 中島 洋氏
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沖電気工業株式会社の主催によりOKIショールーム(東京虎ノ門)で開催されたOKI情報通信融合ソリューションフェア2003で、10月24日に「ユビキタス時代の企業革新 ~最先端のIT基盤に経営はどこに向かうか~」と題して、国際大学グローコム教授で日経BP社編集委員でもある中島 洋氏が特別講演を行った。
同氏はまず、ムーアの法則やビル・ジョイの言葉から「IT技術の発展は必然」と語り、ユビキタス社会の条件としてデジタル機器の高性能化、ブロードバンドインターネットインフラの整備、ICチップの微小化といった技術の発展を挙げた。そして来るべきユビキタス社会では、商品の生産・流通情報をチップを元に取り出せるトレイサビリティシステムが完備し、消費者主導の社会が実現するとした。
続いてユビキタス社会への助走となる現在の出来事を3つ取り上げた。
米コダック社が8月に、フィルムからデジタルへの転換を行う大規模な組織改革を発表した“コダック・ショック”については、日本メーカー各社は、前述の技術発展の前提の下、現在のデジタルカメラ技術を草創期から手がけており、このときの日本メーカーの株価下落を「本末転倒だ」としながら、日本メーカーのデジタルカメラ市場での優位を語った。
次に携帯電話コンテンツを提供する企業5社の上場を取り上げ、すでに5000万台を超えた普及台数から、まさにユビキタスの意味する“遍在”といえる状況になってきているとし、「今後も携帯向けコンテンツビジネスは拡大していくだろう」と語った。そして世界的に見ても低コストで、現在1000万世帯以上で普及しているブロードバンドのインフラが今後は携帯電話に拡大するとし、そうした場合に重要な要素となる映像コンテンツの目となる技術での日本メーカーの先行にも触れた。
また同氏は農林水産省による7月1日の食糧庁廃止に注目し、今後のトレイサビリティシステムについて語った。同氏によれば農業生産者保護の象徴である同庁の廃止は、昨年のBSE問題の折に、当時の大島農水相が消費者保護の観点から全食品へのトレイサビリティシステム構築を行うため、食料安全局の立ち上げを決めたことが引き金となっている。同氏はこれを「農林水産省の方針転換」とした。これを受けた経済産業省は今年2月にトレイサビリティシステムの研究会を発足し、全工業製品への導入を検討している。これが整備されれば、企業側のSCM(サプライチェーンマネジメント)の観点からは、生産・流通面での効率化が期待できる。だが実現のために「経産省ではあくまで消費者保護の観点から導入を進めたい考え」とのことだ。
トレイサビリティシステムが実現すれば、「消費者から見た場合、情報開示をしない企業の製品は淘汰の対象になるだろう」と同氏は語った。
■ URL
OKI情報通信融合ソリューションフェア2003
http://www.netpark.or.jp/sf2003/
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
http://www.glocom.ac.jp/top/index.j.html
中島情報文化研究所
http://www.nakaji.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2003/10/24 19:02
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