Open Source Development Labsジャパン(以下、OSDLジャパン)では、公的機関・自治体のシステムにおけるオープンソースソフトウェア(以下、OSS)の適用について調査を行い、10月31日に報告書を公開した。調査範囲をサーバー用途に限定し、公的機関・自治体に対してはメールでのアンケートを、サーバーベンダーやSI企業にはヒアリングを行った。OSDLジャパンでは今回の調査により、非適用分野での原因を調査して今後のOSS普及を行いたい考え。
政府の「e-Japan戦略」では、「5年以内に世界最先端のIT国家になる」ことを目指し、重点政策のひとつには「電子政府・自治体の実現」とある。「2005年までに約3000の自治体を約1/3にする」との政府発表を受けた、自治体合併による既存システムの統廃合の波もあり、公的機関や自治体システムでは、現在IT化が進められている。近年、民間におけるIT導入では、信頼性の向上やコストなどの面でOSSが注目され、政府からも推進が打ち出されるなど、自治体システムではOSSの導入を検討する環境が整いつつある。
調査の結果をみると、現状ではWindows系サーバの浸透率が高く、Linuxは、OSとしてシステム構築に必要な機能は満たしているものの、WindowsやUNIXと比べてパッケージ数が少ないため、導入実績もまだ少ない。OSDLジャパンでは、現状は初期段階であるとしている。
自治体からは「コストは安くすむが、サポートなど信頼性の面で不安が残る」「OSS製品のメリット/デメリットが正確に把握しきれていない」といった理由で、導入をためらっているとの回答が寄せられている。
一方の企業からは、実際の導入で発生した「ミドルウェア・アプリケーションパッケージが充実していない」「高可用性への不安」などの課題が挙げられている。また本調査ではクライアント環境に関してはWindowsなどの既存環境の利用を想定しているが、自治体システム全般をOSS導入対象にした場合には、日本語やプリンタドライバなどの問題も挙げられた。
OSDLジャパンでは、電子自治体システムへの導入において技術的な阻害要因が存在するかを分析した。ネットワーク/セキュリティ/データ保全の分野では、現在のLinuxカーネル2.4で、十分機能を満たすとしている。不足機能は商用ソフトウェアでカバーできるが、より高いセキュリティレベルを求める場合や、日本語フォント、特殊大量印刷、過去デバイス対応などの面では、次期カーネルでの機能追加や、周辺ソフト/ハードウェアメーカーによる対応が必要としている。
OSDLジャパンは、Linuxの開発支援とエンタープライズでのLinux採用促進を目的に、大手企業各社がスポンサーとなって2000年に設立されたNPO(非営利団体)であるOSDLの日本組織。
■ URL
Open Source Development Labsジャパン
http://www.osdl.jp/
プレスリリース
http://www.osdl.jp/newsroom/press_releases/2003/2003_10_30_tokyo.html
( 岩崎 宰守 )
2003/10/31 12:51
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