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代表取締役社長 岡崎友信氏
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2003年度中間期決算の内訳
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5月発表の2003年度中間期売上見通しとの比較
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伊藤忠テクノサイエンス株式会社(以下、CTC)は11月10日、2003年度中間期連結決算を発表した。
売上高は、前年同期比5.9%減の1164億円、営業利益は58.6%増の62億円、経常利益は79.5%増の60億円、当期純利益は213.1%増の36億円と、減収増益となった。利益面では大幅な増益となったものの、同社 岡崎友信社長は、「売上原価の見直し効果、経費の削減効果は徐々に出ているが、満足できる結果にはなっていない。誇れるような数字ではない」と厳しい見方を示した。
というのも、今回の決算が、当期純利益以外は当初の見通しを下回っているからだ。また、当初見込み通りとなった当期純利益も、「固定資産の見直しにより、直接事業に関係ないもの、将来の事業への影響が期待できないものはすべて売却し、19億円の株式売却益があった。ここから回収が不可能と判断した13億円の特別損失分を差し引いても、6億円の一過性の利益があった計算になる。その点でも決して満足できるものではない」(岡崎社長)からだ。
だが、明るい材料もある。
これまで同社の強みとしていた通信・放送分野向け事業は縮小傾向にあったが、2003年度中間期では売上高で前年同期比8.8%増の357億円と成長に転じており、「当社のコア中のコアとなる事業がプラスに反転したことは大きな意味を持つ。また、今後もネットワーク、ブロードバンドの時代になり、情報通信に対する投資が今後も拡大する傾向にあるだろう。電力・鉄道などの業種でも情報通信分野に対する投資拡大が見込めるだけに、この分野は一層強化したい」と鼻息も荒い。
具体的には、携帯電話キャリア向けのブロードバンド対応インフラ構築の本格化、固定電話のキャリア向けには広域Ethernetや地域IP網関連の案件、大型統合コンタクトセンターの開発などが見込めるとしている。
また、金融分野向けも今後の重点市場に位置づけている。
大型コンタクトセンターの開発案件や、同社独自のLinux搭載のブレードサーバーであるEgeneraのUFJグループへの導入などの実績に加え、「大手金融機関に加えて、ノンバンク系や消費者金融などにも積極的に対応していく」としている。これにより、通期の連結業績の見通しは、売上高で前年比2.8%減の2805億円、営業利益は3.2%増の182億円、経常利益は8.5%増の178億円、当期純利益は24.6%増の97億円と、5月時点の予測を据え置いた。
岡崎社長は、「売り上げにはこだわりはないが、純利益は最重視する。期中成約の期中売り上げを促進することで、見通し数字の下ぶれのリスクはそれほどないと考えている」とし、目標達成に意欲を見せた。
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「最強のシステムプロバイダー」を目指し、2005年度には2001年度並みの利益水準を目指す
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また、岡崎社長は、今年6月に社長に就任してから、日本最強のシステムプロバイダーになると宣言し、2005年までに営業利益で230億円を目指す中期計画を推進している。2003年度を改革実行の年と位置づけ、特定製品をベースとしたインフラ型SIから、付加価値ベースの業務SI型への転換を図っている。
岡崎社長は、「トヨタなどの製造分野の優良企業を見ると、生産工場において、その流れをいかにスムーズに、効率的に早く運用するかが鍵となっている。当社は、マルチベンダーからいい製品を仕入れ、それを材料のまま売るのではなく、当社独自のレシピによって味付けをし、お客に提供する仕組みを構築し、これをスムーズに、早く運用することが中期の数字を達成するために必要な要因だと考えている。このために当社や取引するベンダー各社、顧客、グループ企業などを、工場と同じようなビジネスフローとして描いた。また、その一方で人材育成にも投資を行い、付加価値を創造する人材の育成とともに、プロジェクトオーナーシップの思想を確立し、プロジェクトマネージャーとなりうる人材の増強を図りたい。現在、人材に対する投資は年間6億円程度だが、これを倍増させたい。CTCは、人材で差別化できるシステムプロバイダーを目指したい」と抱負を語っている。
なお、岡崎社長は、一部報道にあった同社の主要取り扱いベンダーのひとつである米サン・マイクロシステムズと富士通との提携に関して、「両社は否定しているし、あくまでも推測の範囲」と前置きしながらも、「サン自身が新たなコンセプトの製品を出すことを考えているし、富士通にすべてを売却することはあり得ないと思う。だが、これまでもサンと富士通は、CPUの生産を一部委託するなど提携関係にあり、これを強化する可能性はあるだろう。米サンからは、何かあれば、すぐに教えるといってくれている」などとコメントした。
■ URL
伊藤忠テクノサイエンス株式会社
http://www.ctc-g.co.jp/
( 大河原 克行 )
2003/11/10 20:00
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