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SNIA-J喜連川氏、「ストレージが主役となる時代が来た」

~STORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2003講演

 11月11日に東京国際フォーラムにて、「STORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2003」が開催され、「ストレージシステムの進化と課題」と題し、SNIA-J(Storage Networking Industry Association Japan)顧問で東京大学生産技術研究所 戦略情報融合国際研究センター長の喜連川優氏による講演が行われた。

 喜連川氏によれば、現代は情報洪水とも、情報津波ともいうべき情報の氾らん期であるという。「昨年の全世界で記録された情報は、5エクサバイト(ギガバイトの10億倍)になり、年間30%の成長をしている。そのうちの92%がHDDなど磁気メディアによるもの」。


サーバーの周辺機器から、ストレージ中心の時代へ

東京大学生産技術研究所 戦略情報融合国際研究センター長、SNIA-J顧問 喜連川優氏
 「これだけ大量のデータがあるので、それで十分ではないかと考えるかもしれないか、今後はさらに、機械的に生成される情報が山のように降ってくる時代になる」と喜連川氏は述べた。そして、それらのデータを集め、それをいかに戦略的に活用していくか、これが今後の課題になるという。「日本のデータウェアハウスの器もようやく大きくなってきたし、それを活用するマイニング技術も出てこようとしている。情報は資産なのであるから、膨大なデータの柔軟な管理を可能にするストレージが要求されるようになる。最初、ストレージはサーバーの周辺機器という位置付けであったが、ストレージが主役となる時代がきたということ」だというのだ。

 今、ストレージは容量単価が年々下がっており、昨年とまったく同じ投資をすれば、蓄積されるデータ量は増えることになる。しかし、一定の投資をしていれば、だんだんデータはたまっていくから、何もしなくもいいのかといえばそうではない。今ストレージに10ドルの投資をすると仮定した場合、実際にハードにかけるコストはその3割でしかない。実に7割が管理コストになってしまっているのが現状だというのだ。「増えた情報を管理することが大変になる。つまり、重要なポイントは情報の管理だということ。最終的には集めたデータを活用することが重要なのだが、一朝一夕にできることではない。せめてそれを下支えする管理はテクノロジーで支えてあげる必要がある」(喜連川氏)。


ネットワークと仮想化で、ストレージは変わる

 こうした役割を担うストレージは、変わらなければならない。蓄積するだけではなく、戦略的に管理してやる必要がある。ストレージが主役になってくるのだから、ストレージ自身がアイデンティティを持って、賢くなる必要があると喜連川氏は主張する。

 では、そのストレージを変えるテクノロジーとは何であろうか。「1つは、ストレージネットワーキングだ。極論するとストレージをつないだだけのことではあるが、これがとても重要なことなのだ。データが点在していては管理するのが難しいのだが、ストレージを共有化し、プール化することで、その効率化が実現できた。こうなってくれば、管理者の負担軽減や人員削減が可能になり、TCO削減に非常に効果的。貴重なデータは、管理しやすい空間に置いておくべきであり、そしてデータの管理しやすいストレージが求められている」(同氏)。

 そして、次にストレージが進むべき方向としては、ストレージの仮想化(Storage Virtualization)をあげた。ストレージがただくっついているのではなく、ストレージプールとして稼働させることにより、管理者1人あたりの管理可能量が、仮想ストレージではDASの20倍に達するデータもあるというのだ。「トランザクションの技術も確立しつつあるし、この技術はコンピュータサイエンスの中できわめて自然なもの。ストレージが間違った方向に進んでいるのではないということを、強く主張しておく」(喜連川氏)という。

 また、仮想化を推進するための条件としては、異なるベンダのストレージ間でも問題なく使用、管理ができる状況も必要とする。これは統一的なインターフェイスがあって実現が可能になるが、現在米SNIAでは、オープンな管理を実現するために、SMIS(Storage Management Initiative Specification)を提唱し、推進していくとのこと。


ストレージの次のステップ

 今後の課題としては、ビジネスの継続性をいかに確保するかということがある。昨年のテロの後、米では関心が高まっており、米証券取引委員会(SEC)が指標を出している。「コアとなる企業は2時間から4時間での復帰、最低でもその日のうちに復旧することがのぞましいとされており、すべてのデータをレプリケートするのは難しいため、致命的なデータとそうでないものを分けて管理をしなくてはならないだろう」(喜連川氏)。

 また、ストレージを賢くするため、セルフチューニング、セルフモニタリングといった「セルフ」技術が注目されており、学習するメカニズムをストレージ自身に持たせることで、情報ライフサイクルマネジメントのようなデータ管理や、チューニングによるレイテンシの短縮などの分野で効果が期待されているとのこと。また喜連川氏は「より安くという要望も非常に多く、これに対応するためには、低価格なディスクアレイをコンポーネントとしたストレージを活用することで実現できるのではないか」と述べていた。



URL
  STORAGE NETWORKING WORLD/Tokyo 2003
  http://www.idg.co.jp/expo/snw/
  SNIA-J
  http://www.snia-j.org/


( 石井 一志 )
2003/11/11 16:09

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