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ソニーミュージックが実現した販売店との情報コラボレーション

SUPPLY CHAIN WORLD Japan講演

マーケティンググループ マーケティング部次長 佐藤朗氏
 11月11日から13日まで開催されている「SUPPLY CHAIN WORLD Japan」において、株式会社ソニー・ミュージックディストリビューション マーケティンググループ マーケティング部次長の佐藤朗氏が「音楽ソフトパッケージビジネスのSCMを目指して ~小売店との情報コラボレーションの実現~」と題したユーザー事例の講演を行った。


ピーク時の2/3まで落ち込む音楽ソフト産業

 ソニーミュージックグループが主に取り扱う音楽CDをはじめとした音楽ソフト産業の規模は、6,075億円あった1998年を境に年々縮小しており、昨年は4,431億円とピーク時の2/3近くまで落ち込んだ。発売される新譜やミリオンセラーの数も産業の規模と比例して減少していると同時に「ヒットするものとヒットしないものの2極化が進んでいる」(佐藤氏)という。

 このような状況の原因として佐藤氏は「長期的なデフレによって音楽CDの割高に感じられる、レンタルや中古店の拡大、従来購入層の大半を占めた若者が少なくなり音楽以外へ時間や金銭が流れるなど、さまざまな要因がある」と分析する。さらに音楽ソフト産業の場合は「音楽文化を支えているという使命がある以上、売れる音楽だけリリースして効率化を図るというわけにはいかない」という音楽ソフト産業特有の事情がある。

 さらに佐藤氏は音楽ソフト産業の商習慣にも問題があると指摘する。「アーティストが所属するレコード会社の独占販売なので各メーカーは実は競合していない。また、返品制度により納品、仕入、返品などの数字に対しての認識に甘さがある。メーカーから発表される音楽CDの出荷枚数のうち約10%に返品が発生しており、非常に効率が悪い」(佐藤氏)という。こうした状況からSCMへの取り組みの必要性を感じ、まず情報共有のためのネットワーク構築を始めた。


音楽産業の規模の推移 音楽ソフト産業の商習慣における課題

販売店のPOSデータをメーカーが分析

 こうして1999年から始まった販売店支援システム「Music Express」によって、販売店やその本部、卸店とメーカーをインターネットで結び、販売状況や店舗在庫、メーカー在庫のデータを共有し、お互いが双方の情報を参照できるようになった。また、メーカーは全国の販売店のPOSデータを収集して分析を行い、トレンドだけでなく店舗の特徴や販売パワーに合わせた在庫数やオーダー数などを提案して、各店舗への安定した商品供給が可能となった。

 さらにMusic Expressは、2002年から販売分析システムをベースに予測機能を付加し、販売店からメーカーまでの流通在庫の適正を目指す「販売予測システム」の稼働を始めた。これは商品の特性とPOSデータを元に、受給変動の激しい、発売後4週間内の店頭の販売動向を予測するもの。佐藤氏は「例えばこれまでの販売状況から発売日に爆発的に売れるアーティスト、ロングセラーになる傾向のあるアーティストなどの商品の特性をデータに組み込んでリスト化を行い、過剰発注や品切れによる機会損失を回避する」と説明した。

 現在、Music Expressはソニーミュージックのほか、東芝EMI、エイベックス、ビクターエンターテイメントも参加しており、卸店、販売店とのコラボレーションが進んでいる。佐藤氏はMusic Expressを推進できた理由として「いろいろ要因があるが、メーカー間で競合が起きにくい、データに課金などを行わなかったなど、情報の共有がスムーズに行えたからではないか」と語った。


販売分析システムの流れ Music Express参加企業


URL
  ソニーミュージックグループ
  http://www.sme.co.jp/
  SUPPLY CHAIN WORLD Japan
  http://www.cnt-inc.co.jp/scw/


( 朝夷 剛士 )
2003/11/12 00:00

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