ソフトバンクBB株式会社と日本オラクル株式会社は11月20日、都内のホテルで「BBユーティリティ・コンピューティング戦略フォーラム」を開催し、ソフトバンクBBの代表取締役社長、孫正義氏が「BB Utility Computing革命」と題して講演を行った。
■ 水や電気と同じ「ユーティリティコンピューティング」
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ソフトバンクBB 代表取締役社長 孫正義氏
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ユーティリティコンピューティングとは、水や電気などと同じように、状況に応じて必要なだけコンピューティング資源を利用できること。電気はどこの部屋でも、コンセントに電源プラグを差せば利用が可能だが、孫氏が実現しようとしているのは、それをネットワークに置き換えたものだ。
孫氏は以前より「ユーティリティコンピューティングは、ネットワークの向こう側にしっかりとしたプロがいて、24時間管理されているセキュアな、安心して使える状態で提供されるべき」と、米OracleのエリソンCEOと話していたという。しかし、そのころにはまだ、その試みを実現できるきちんとしたソフトはOracleからも提供されておらず、また何よりもネットワークインフラが高く遅い状態であった。そのため、ユーザーはローカルのPC内にデータを積んで、もしくはLAN内に何台もサーバーをおいて運用していた。
しかしここ2年で、日本では世界で一番安く、高性能なブロードバンド環境が実現されている。孫氏は「しかもYahoo BB!では、基幹はデメリットの多いATM網ではなく、フルIPネットワークで構築。IXトランジットとの間にも、全国バックボーンにも太い回線を持ち、全国がくまなく接続されている状態を作り出している。エリソンCEOがパートナーとして当社を選んだのは、それが理由だろう」と述べ、今ようやくユーティリティコンピューティングを提供できる機が熟したとする。
■ 新しいサービスモデル、アプリケーションストリーミング
今回同社が提供を予定している「BBユーティリティ・コンピューティング」は、「まったく新しいコンテンツ&アプリケーションサービスモデル」(孫氏)だという。現在さまざまなサービスが検討されているが、今までになかった新しい試みとして、孫氏はアプリケーションのストリーミング配信を紹介した。ユーザーは、各PCにソフトウェアをインストールして使用するのではなく、使いたいときにインターネット経由で必要なファイルをストリーミングで受け、利用することになる。料金は従量制や月額固定制、1SHOTなどが想定されており、「ユーザーは高価なパッケージを購入することなく、使用したい分だけの料金を払えば、簡単にソフトが利用できるようになる。しかも複雑なインストール作業やバージョン管理の手間はもう必要ない。またファイルをそのたびに配信するといっても、HDDの中身を肥大化させるようなことはせず、必要なものだけを送って使ってもらう」。
このような手法が普及すれば、当然のことながら流通も変わってくる。現在、ソフトバンクは20年以上もソフトの販売を手がけて高いシェアを持っているが、たくさんの在庫をかかえ、膨大なコストをかけてトラックで納品をおこなっている状態。ユーティリティコンピューティングが浸透すれば、こういった手間がなくなり、コストの大幅な削減が見込めるというのだ。
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BBユーティリティ・コンピューティングの概念
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アプリケーションストリーミング配信の概念図
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■ 「BBユーティリティ・データセンター」で変わる、企業の情報システム
また孫氏は、企業での利用形態として、ユーティリティコンピューティングを利用したデータベース統合とアウトソーシングのサービス「BBユーティリティ・データセンター」を考えていると語る。「データベースは、本来1カ所にユニバーサルデータベースがあればいい。部門ごとに複数のデータベースが運用されていたりすれば、情報同期の時差でトラブルが発生してしまうようなことも起こるが、1つに統合できればそうしたこともなくなる」。
さらに、「また、今は企業ごとに電算部門があるが、これはばかげたことではないか。それぞれの会社に水力ダムの発電ジェネレータがあるのと同じようなことだ。管理は信頼できるプロに任せてしまえばいい」とし、ユーティリティコンピューティングで企業の情報システムそのものが変革できると語った。今まではWAN回線が貧弱であったために、本社や支社に別々のネットワークが組まれていたが、今後は日本中に分散している支社が、あたかも1つのLANで結ばれているかのような運用が実現できるとする。
そして、こうした孫氏の構想の下支えとなるのが、「ソフトバンクBBのネットワークインフラと、Oracle 10gのエンタープライズグリッド」。同社の高速ブロードバンドインフラと、強固な24時間の監視体制がネットワークを支え、エンタープライズグリッドによって、低価格で拡張性のあるシステム構築が可能になる。
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BBユーティリティ・データセンターのイメージ(その1)
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BBユーティリティ・データセンターのイメージ(その2)
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最後に孫氏は「ナローバンドの時代が“インターネット1”なら、その1,000倍のスピードが実現できるようになったブロードバンドの時代は“インターネット2”。新しい世界への道を開く機会を提供してくれている。今が100年に1度の情報革命のチャンスであるということを覚えていて欲しい」と述べ、講演を締めくくった。
■ URL
ソフトバンクBB株式会社
http://www.softbankbb.co.jp/
日本オラクル株式会社
http://www.oracle.co.jp/
( 石井 一志 )
2003/11/21 00:00
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