日本アイ・ビー・エム株式会社は11月25日、「IBMオンデマンド・テクノロジー・フォーラム2003」を開催した。それに合わせ、同社が掲げる「e-ビジネスオンデマンド」を支える「オートノミックコンピューティング」と「グリッドコンピューティング」それぞれの米IBM本社の担当者らが来日し、内容と重要性を語った。
■ オンデマンドにおけるオートノミックの重要性
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米IBM オートノミックコンピューティング担当バイスプレジデント アラン・ガネック氏
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米IBMオートノミックコンピューティング担当バイスプレジデントのアラン・ガネック氏は、まず「IBMが掲げるオンデマンドを達成するためには、日々複雑化するIT環境の改善に取り組まなくてはならない」と現状の課題を指摘した。ガネック氏によると、今日コスト的・時間的に大きな被害をもたらすシステムダウンの原因のおよそ4割は、複雑化されたオペーレーションが原因によるオペレーターの人為的ミスであるという。また、費用の多くが管理者などの人件費で占めているのに対し、彼らの仕事の半分は現状の問題解決のためであったりする。「ITに投資される費用のおよそ4/5は現状のシステムの維持に対して行われており、効果的に利用されているとは言い難い」とガネック氏。
これらの問題に対しIBMは、同社が提供するハード・ソフト・サービスにシステムの自己管理を実現するオートノミックコンピューティングを導入することで、システム運営の効率化を図る。
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オートノミックの構成要素
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オートノミックコンピューティングは、環境の変化に柔軟に対応する「自己構成」、障害の発見から診断・防止を支援する「自己修復」、攻撃の予測・探知・識別・防御を行う「自己防御」、そしてITリソースを最大限に活用するためにリソースとワークロードバランスを調整する「自己最適化」で構成される。このうち、「自己構成」を実現するプロジェクトとして「Project Symphony」がすでに発足しており「Tivoli Orchestrator」を使ってサーバーを各アプリケーションに動的に振り分けることに成功している。また、「自己防御」にあたる新技術として、システムとネットワークの全体を通して問題の根本的原因を自動的に探知・識別・診断・修復が可能な自律型コンピューティングの基盤が実現するCBE(Common Base Event)をシスコ・東芝・日立ソフトなどのパートナーと推進していくという。
ガネック氏は「オートノミックコンピューティングはITインフラにインテリジェンスをもたらし、システムの複雑性を取り除きコストと時間の節約を実現させ、オンデマンドを達成する」と述べ、オートノミックの重要性を訴えた。
■ グリッドの適用はメインフレームの経験によって培われた
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米IBM オートノミックコンピューティング担当バイスプレジデント ダン・パワーズ氏
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一方、米IBMオートノミックコンピューティング担当バイスプレジデントのダン・パワーズ氏はグリッドコンピューティングについて、さまざまなIT資源を統合化し仮想的に一つの巨大なコンピュータのように働かせ、それをすべてのアプリケーションに適用していくものと説明し、「オンデマンドへの第一歩」と定義した。「オンデマンドを実現するには統合・オープン・オートノミック・仮想化の4つの特性によるオペレーティング環境の整備が必要だが、グリッドは特に仮想化と深く結びつく」(パワーズ氏)
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オンデマンドに求められるオペレーティング環境の特性
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グリッドによってもたらされるものは何だろうか?パワーズ氏は「標準化を元にプロビジョニング、スケジューリング、データの仮想化、ワークロード管理、課金、さらにトランザクション管理なども視野に入れている」とし、さらに「我々はメインフレームで学んだことを元にして、常に標準を念頭に開発してオープンスタンダードに基づいている。ユーザーのどのような異種分散環境においても適用できるということが、他社に比べての強みといえる」と優位性を説明した。
パワーズ氏は、現在のグリッド市場規模を10億ドル程度として、2007年には100億から120億ドル規模になると予想しており、すでに科学研究・技術機関にとどまらず民間企業においてもビジネス用途に使われ始めているという。パワーズ氏は「企業においては、まず小規模な限られた環境から徐々に発展し、やがては企業全体を包括する」と企業に適用される流れを説明する。すでに国内においても導入事例があり、IBMにおいても研究者を中心に世界規模で活用され時間と費用の削減といった効果が現れているという。
■ URL
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
日本IBM オートノミックコンピューティング
http://www-6.ibm.com/jp/autonomic/
日本IBM グリッドコンピューティング
http://www-6.ibm.com/grid/jp/
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( 朝夷 剛士 )
2003/11/25 21:32
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