12月2日から3日まで、都内のホテルで開催されている「VON Japan 2003」において、VoIP推進協議会 会長代理の大和 敏彦氏が「IP電話を超えて」と題して講演を行った。
■ IP電話=安い電話?
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VoIP推進協議会 会長代理 大和 敏彦氏
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大和氏は「IP電話は、単に安い電話という考え方を脱しなくてはならない」という。電話の単なる置き換えととらえられているケースが多いが、それはまったく違うことなのである。ネットワークであれば、電話は専用の電話網を使うのに対し、IP電話はIPネットワークを使う。アドレスは電話番号ではなくIPアドレスになる。こうした違いはほかにいくつもあるが、その違いこそが、IP電話ならではのメリットをユーザーにもたらすことになるのだ、と大和氏は述べる。「コストメリットももちろんのこと、IPアドレスと電話番号を関連づけて管理すれば、モビリティという意味で運用自由度が出るなど、メリットはさまざまある」。
では、コンシューマ市場におけるIP電話の現状はどうだろうか。「日本のブロードバンド化が大きくIP電話の普及に貢献したのは確か。このインフラを利用した電話が、中国や韓国のようにインターネット電話からはじまってしまうと、相互接続性などで収拾がつかなくなる。しかし、日本では幸いにして総務省が頑張って“IP電話”を展開しているので、そういう事態にはなっていない」(大和氏)という。しかし現状のIP電話には、データと共用の回線で送ることでの品質をどうするか、050番号とIPアドレスをどう結びつけるか、IP電話同士や既存の電話との接続性はどうなのか、などさまざまな問題を抱えている。
これに関しては、現在総務省がガイドラインを公開して標準化を進めているが、その足りないところをVoIP評議会側でガイドラインを作り、補完していく動きをしているという。こういった標準化のメリットとして、大和氏はスムーズに認定が済むことをあげた。また、あらかじめガイドラインに沿って製品などを作っていけば、相互接続や品質の問題がスムーズに解決できるとする。そして、これを補う検証の作業も、現在3フェイズですすめており、定期的に検証をおこなって実証をしていくとの考えを述べた。
しかし、課題はこれだけではない。大和氏は「110番などの緊急通知や、込みあったときの優先通信をどうするかなどの問題もそうだし、利用者保護の面では、IP電話を“電話”として考えると足りないところがある」と語る。IP電話のデメリットをきちんと表示していないとか、キャンペーンを誇張して伝えていないか、といった苦情が消費者団体から来はじめているそうで、今後は品質をどう表示して利用者に提示するかが課題だという。
■ ビジネスモデルをどう構築するかが、IP電話ビジネスの鍵
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活用例の1つ、IPセントレックス
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また、「ビジネスモデルをどうしていくか、ということが一番大きな課題だ。ブロードバンドを安い値段ではじめ、その上に無料の電話を乗せてしまったので、キャリアは大変。きちんと収益を上げるためには、ブロードバンドのビジネスモデルを提供することも1つの手段」(同氏)とのことで、これを実行している典型的な例として、イタリアのFastWebをあげた。
同社のユーザーのうち、49%が光ファイバーで、そのほとんどがある程度帯域を保証した10Mbpsの通信。加入者に対してFastWebは、いわゆるトリプルプレイ(データ通信、IP電話、テレビを利用したビデオ放送)をセットで安く提供し、ユーザーを増やしてきた。また同社では、これらの通常の契約料金だけでなく、ユーザーが有料のサービスを利用することで、安定した収益をあげているという。「IP電話は無料だが、ビデオ(テレビ)電話は1通話あたりいくらで料金がかかる。こうした、同じインフラの上でいろいろな魅力のあるサービスが提供できれば、収益は上がってゆく。日本ではYahoo!BBなどがやろうとしているが、これが1つの形だ」(同氏)。
■ 企業を変える、IP電話の可能性
次に大和氏は企業での状況に触れた。企業でIP電話を導入しようとする理由としては、1)経費削減などでの企業のスリム化、2)コンシューマでのIP電話の広がりを受けて、3)IPセントレックスの提供開始、4)PBXの切り替えに伴うリプレイス、の4つが主な要因だという。「現在、IP電話をかなり大規模に導入しようとするユーザーは、IP電話を超えた使い方をしようとしている。IP電話を導入することで、業務のプロセスやコミュニケーションの仕方を変えていったり、既存のITとの統合を進めたり、ただの電話としてではなく会社のインフラとして見直してみたり、こうしたことが可能なのがIP電話のメリット」と述べ、IPの可能性を強調する。
大和氏はそのほかの応用例として「社内にいなくても内線通話が可能になるようなモビリティの追求や、呼制御サーバーの分散、バックアップによる可用性向上、音声・メール・FAXなどを統合したユニファイドメッセージング」などをあげ、幅広い分野での活用が考えられている」と述べた。「遠隔医療とか、在宅学習とか、IPコンタクトセンターなどもそう。こうした試みは今後まだ増えてくるだろう」。
最後に大和氏は「皆さんも、携帯電話の登場でコミュニケーションをはじめ、いろいろなところが変わったことは経験されていると思う。今までの電話とはまったく違うアーキテクチャであるIP電話も、それと同じようにいろいろなコミュニケーションを変えていくものだと思っている。データやインターネットと親和性のたかいものでもあるし、企業にとっては、仕事のやり方、プロセスなどを変える可能性がある」と述べ、講演を締めくくった。
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ユニファイドコミュニケーション
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IP電話のモビリティ
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■ URL
Von Japan 2003
http://www.von-japan.jp/
VoIP推進評議会
http://www.telesa.or.jp/voip/
( 石井 一志 )
2003/12/02 19:12
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