12月2、3日にメディアライブ・ジャパン株式会社の主催で新宿のヒルトン東京にて、VoIPにフォーカスしたイベント「VON Japan 2003」が開催され、「IPテレフォニー導入事例にみる経営革新の実現」をテーマに、株式会社ネットマークス 執行役員の大塚 浩司氏による講演が行われた。
株式会社ネットマークスはシスコシステムズの製品を中心に扱うネットワーク専業のSIer。シスコのゴールドパートナーに認定されており、多数のシスコIPテレフォニーの構築実績がある。まず大塚氏は、「企業を取り巻く最近の厳しい環境において、経営革新を行うには生産性を上げることがひとつの課題になる」と述べ、TCO削減、ROI向上、業務効率化、意識改革のサイクルを続けることが、「その解消につながる」と語った。そしてIPテレフォニーの導入はその有力な選択肢になるとした。
■ IPテレフォニーの市場動向
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株式会社ネットマークス 執行役員 大塚 浩司氏
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アメリカにおける音声通話の市場規模は、2003年の第2四半期で15億ドル。この20%をIPテレフォニーが占めていた。アメリカの調査会社の予測では、これが2004年第2四半期には16.4億ドルになり、IPテレフォニーは34%のシェアで、単独では年率80%増と見込まれている。大塚氏は、「市場シェアは思っていたより小さい」としながらも、今後は「確実にレガシーPBXやボタン電話は縮小し、IPテレフォニーのシェアが拡大していく」とした。
日本において、IP電話機、VoIPゲートウェイ、IP-PBX/ソフトスイッチをあわせた市場では、IDC JAPANが2004年度に年率60%の伸びを予想しているが、「ネットマークスでは2003年度に市場規模100億円、2004年度には200億円を超え、年率200%以上の伸びを見込んでいる」という。IPテレフォニー関連機器のメーカー別シェアでは、2001年、2002年ともにNECが40%強でトップ、沖電気が35%強で2位となっているが、「2003年はシスコが大幅に伸び、40%以上になるだろう」としている。これは、「SIPプロトコルなどの技術のオープン化で、IP-PBXなどのハードスイッチからソフトスイッチへの流れがある」なほか、「IPセントレックスの発達過程においてはブロードバンドが必要だが、ADSL、FTTHは世界で一番低価格」と述べ、「企業内音声の変革により、レガシーPBXはあと数年で終焉を迎え、その後IP-PBXも続くだろう」と語った。
■ IPセントレックス導入のメリット
IPセントレックスのシステムは、自社内での運営とキャリアのサービスに大別されるが、大塚氏は「自社運営は大規模向き、キャリアは小規模企業に向いている」とした。その理由として、「イニシャルコストを見ればキャリアのサービスが上回るが、大規模ユーザー環境ではランニングコストや運用性、将来の拡張、そして何より業務の生産性への寄与の面で企業内での運用にメリットがある」と語った。
この生産性の面について大塚氏は「コストメリットだけの時代は終わり、IPセントレックスのシステムはようやく生産性向上のフェーズに入ってきた」と語り、今後は「生産性を上げるツールとして活用の方法を考えなければならない」と述べた。
2001年の段階でいち早く前者のIPセントレックス化に踏み切った新生銀行では、「9カ月でコストを回収し、ユニファイドメッセージやソフトフォンの導入で業務効率も向上している」とのこと。「現在では生産性を上げるフェーズ2の段階に入っている」そうだ。また2002年に100台のPBXを撤去し、8000台弱の端末をIPテレフォニー化した新光証券では、年間1億3000万円のコストを削減し、連携アプリケーションも自社開発しているという。このほか東京ガス、三井住友銀行、UFJ銀行での事例も紹介された。
最後に大塚氏は、「これからのIPテレフォニーでは業務効率化、生産性向上、顧客満足度向上を柱に、企業の音声は通話の世界から、場所を選ばない効率的な人と人のコミュニケーションの世界へ変わろうとしている」と述べ、講演を締めくくった。
■ URL
VON Japan 2003
http://www.von-japan.jp/
株式会社ネットマークス
http://www.netmarks.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2003/12/03 10:06
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