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NEUソフト劉総裁、「中国ソフト市場なら、日本のノウハウを生かせる」

~C&Cユーザーフォーラム 特別講演

 12月3日から5日まで東京ビッグサイトにて開催されているC&Cユーザーフォーラム(主催:NEC)にて12月4日、NEUソフト(東軟集団) グループ総裁/博士の劉 積仁氏が「急成長の中国経済と中国IT産業の動向」と題した特別講演を行った。


発展する中国経済

NEUソフト(東軟集団)グループ総裁/博士、劉 積仁氏
 劉氏によれば「中国経済は大きく発展し、過去20年間でGDPは17倍、1人あたりのGDPは13倍の成長率となった。また、この経済成長に伴い国民の購買力が上がったため、活力のある市場が形成された」という。

 こうした発展は、改革開放が進んだことと、外資の流入のためであるが、それを突き詰めると、労働力に要因があるとする。「農村部から都市部への流入が進んでおり、それらの人々がサービス業、製造業などに従事するようになり、提供できる労働力は増えている。また、安く、かつ教養レベルの高い人材を必要を提供できるのが中国の強みだ。安い労働力は、現在台湾や東南アジアなどでも提供されているが、発展に伴ってコストは上昇してくると思われる。しかし、中国は将来、2050年でも8億人もの労働人口を提供できるとされており、継続的に安価な労働力が提供できるのは大きな魅力だろう」(劉氏)。

 また劉氏は、中国は教育立国にも力をいれていると述べた。政府の資金のほか、外資、民間資本も教育界に参入してレベルアップに寄与した結果、高等教育に進む者も増えたという。そして、「これら大学などの研究室での独自研究開発が奨励されたため、企業と大学の共同研究開発関係が構築され、大学の研究結果が企業に持ち込まれて製品化されるようにもなっている」と述べた。

 「こうして力をつけてきた中国は、世界でも有数の輸出大国になった」と劉氏は続ける。しかし、輸出額のうち半分を占めるのは、安い労働力を求めて入ってきたグローバル企業なのだとする。「こうしたところを見ると、地元の企業は発展ということ対しては大きく貢献していると言えない。外資企業が投資を行った結果、中国経済は発展してきた」。

 「以前はほとんど原材料が中心だった輸出が、ハイテク製品を含むようになり、大きな経済力、経済地域になってきている。しかし、中国の状況からみると、数字だけで特徴を把握しようとするのは、実はとても難しいこと」(劉氏)なのだそうだ。なぜなら地域の格差がとても大きいから、と劉氏は続ける。同じ東部地域でも、発展した広東省とそうでない海南島を比べた場合、輸出額には100倍以上もの差が出てしまう。「グローバル企業は、進んだ国に対応するときと、進んでいない国に対応する場合で当然戦略を変えていると思うが、この事情が中国は1カ国の中で発生している。大都市と農村部ではまったく違うビジネスを展開していかないと、チャンスを失うことになる」という点を強調していた。


中国ソフトウェア市場のポテンシャル

中国ソフトウェア市場の伸び
 中国のITを見た場合、PCの保有台数、インターネットアクセス数などいろいろな面で世界トップクラスであるし、国際的なアクセスのためのバンド幅もひろがっているのが現状とのこと。多くの人間がネット上で仕事をし、アプリケーションを利用している状況だ。また、中国のIT、特にソフトウェアサービスの成長率は高く、年平均28%伸びてきた。「しかし、ソフトウェア販売額は、全世界のたった1.5%にしかすぎない。これだけ大きな人口を抱えている大きな国であるのに、低い数字でしないのだ。これは逆に言えば、社会が日本並みに発展すれば、30%くらいまではいけるのではないかということでもある。中国のソフトウェア市場には大きな発展のポテンシャルがある」(劉氏)。

 「中国のソフトウェア市場では、60%がアプリケーション、30%がOSといった状況で、日本の20年前に似ている。また、アプリケーション市場は社会の発展と同期していて、交通、金融、政府などで導入が進みはじめているのが現状。こうしたところでは、信頼性、スケーラビリティが高いシステムへのニーズがあり、同業種のビジネスプロセスを把握しているところを求めている。日本のソフトウェア業界はすでにノウハウを持っているので、蓄積されてきたビジネスを生かすチャンスになる」(同氏)。

 また、アウトソーシング市場も伸びていて、日本への輸出はその半分を占めているという。「そのほとんどは組み込み用のソフトだが、中国市場を狙う商品の組み込みソフトを中国で開発するようなことも行われるのではないか」、と劉氏は述べた。

 最後に劉氏は「中日両国は世界中のいかなる国よりも密接に関係していくべきだと思っている。この両国は似たところも非常に多いが、実は文化の差はとても大きく、アメリカと中国の違いよりも小さいことではない。しかし、異なる点に十分注意をはらっていければ、日本企業は中国で成功できると思う。市場価値や、人的リソースの提供といった中国の特長と、高い品質管理、製造設計技術といった日本の特長で、お互いを相互補完できれば、Win-Winの関係を築くことが可能だ。信頼と理解をベースにおいた協力関係は、お互いに大きな利益をもたらすだろう」と述べ、講演を締めくくった。



URL
  C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2003
  http://www.uf-iexpo.com/


( 石井 一志 )
2003/12/05 00:00

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