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NEC渋谷氏「Webサービス技術でコラボレーション型経営を実現する」

~C&Cユーザーフォーラム ワークショップ

 12月3~5日、日本電気株式会社(以下、NEC)の主催により、東京ビッグサイトで「C&Cユーザーフォーラム」が開催されている。4日には「コラボレーション型経営を支えるサービス指向の企業システム」のテーマで、NEC インターネットソフトウェア事業部の渋谷 純一氏によるワークショップが開かれた。


これからの企業情報システム

日本電気株式会社 インターネットソフトウェア事業部 渋谷 純一氏
 同氏はまず、企業の情報システムについて「企業経営に必要な業務プロセスは、実行を外部に委託している場合でも、基本的にその主体は社内にあった。しかし企業を取り巻く現状は競争が激化しており、経営には高いレベルの活動が必要になっている」と述べ、「競争を勝ち残るためには、限られた経営資源を自社のコアコンピタンスに集中し、ほかの部分についてはパートナーと対等の立場でコラボレート、外部にアウトソースする経営スタイルが求められる」と語った。例えばCPUやメモリといった半導体製造など、価格競争が激しく大量の需要がある製品では、設計を自社で行い、生産を専業ベンダーに委託することが多くなっているという。

 こうした経営では、従来自社内で実施されていたプロセスが社外で行われるため「ビジネスが停滞しないよう、情報システムは従来以上のスピードで動かなければならない」ほか、「事業環境の変化にあわせ、グローバルな連携も視野に入れたパートナーシップ変更が必要」なために、「これに適応して情報システムもタイムリーに変えなければならない」と語った。そしてこれらの課題を解決する情報システムを、NECでは「コラボレーション型情報システム」と呼び、VALUMOプラットフォームがその基盤となる。


コラボレーション型情報システム

基幹システムはメインフレームからオープンシステムの連携へ
 こうした社内外を巻き込んだ情報システムの構築では、「インターネットを通して外部の企業との間でデータが飛び交うため、安全性を確保するセキュリティ技術が重要」とし、「基幹システムでもあるので、いままで以上の信頼性も必要になる」と述べた。また「市場変化に対応するためのパートナーやビジネスプロセスの変更に応じて柔軟に拡張できるアーキテクチャ」との要求も満たさねばならない。

 企業の基幹システムは、メインフレームを中心とした閉じたシステムから、UNIX、Windowsといったオープンシステムとの連携へと進展してきた。さらに「現在はハブを中心に、ERPやCRMの各種システムを統合する“Hub&Spoke”が主流である。コラボレーション型経営を実現するためにはもう一段進み、アウトソース先をネットワークで結んだ“Hub&Net”が必要」と語った。


Hub&Netを実現するWebサービス技術

パラダイムの進展で、情報システム間の結合はゆるやかに

サービス指向アーキテクチャにおける情報のプロセス

Webサービスの基盤となるXMLとその関連技術
 情報システム構築のパラダイムは、「COBOLやCを用いたメインフレームで、処理の流れに沿って構築されていた頃は、モジュール間の結合が強く、変更があるとほかへの影響が大きかった」と語り、これが「システムをものの観点でとらえるC++、JAVAによるオブジェクト指向から、COM+やEJBなどによりフレームワークや共通部品としてのライブラリを用いたコンポーネント志向へと進むに従い、システム間の結合度はゆるやかになってきた」とし、「今後はシステムをサービスを提供するものとしてとらえる、XMLによるサービス志向の時代になる」と語った。

 ではサービス指向アーキテクチャとはどういったものだろうか。「例えば社員が出張の際には、申請書のフォーマットや利用手引書により、手順や内容を調査確認して送ると、宿泊や交通の手配など必要な作業をサービス部門が行う。こうした考え方を情報システムに適用したもの」と述べた。Webサービスによる情報システムでは、「サービスレジストリ(サービス登録サーバー)に利用サービスのインターフェイスやフォーマットといった内容を問い合わせれば、アプリケーションが情報を解釈してサービスを呼ぶ。例えば在庫、生産、出荷のプロセスで組み合わせる形で、これを順番に呼び出すシステムを実現できる」と語った。

 Webサービスでは、このシステム間でのデータ交換にXMLが利用される。XMLとはタグ囲みで情報を構造化して記述するテキスト形式のファイルで、「テキストのためマルチプラットフォームで使え、送受信にはhttpをつかうので、特別な設定なしに利用できる」とのこと。

 続いて同氏はXMLを中心に、Webサービスを構成する関連技術を解説した。基盤プロトコルとなるSOAPは「双方向のRPC型と一方向のDocument型に分かれ、「XMLで情報のやりとりする際の封筒の役目をするもの」とのこと。UDDIは、サービス登録と検索を行う技術で、「サービス内容を記述するイエローページ、サービスを利用するためのインタフェースが記述されたグリーンページ、提供者情報のホワイトページで構成される」。WSDLは、グリーンページのインターフェイス記述の標準規格で、「検索サービスでは、検索要求の内容をSOAPで記述して依頼すると、WSDLで返され、これをもとにサービスを呼び出す」仕組みとなる。ebXMLは、「取引先ID、メッセージID、対話IDなどの情報をSOAPに付加したもので、配達の確認や順序保存などを行い、ビジネスでの利用に足る信頼性をもたらすもの」とした。このほか、複数のサービスを組み合わせた場合に、その順番を定義するサービスフローBPFL4WSや、XMLの暗号化、電子署名の規約であるXML Securityなどもある。


Webサービスの適用パターン

 Webサービスは、「インターネット経由での利用・提供が可能な点が優れている」として、その利用パターンを挙げた。企業のコアコンピタンスを切り出してサービス提供を行う単一型は、すでにある程度行われているが、「企業内のマルチプラットフォームなシステムをHubとなるサーバーを介してWebサービスで連携し、情報共有や資産統合を行うAP統合型、複数企業の提供するWebサービスを組み合わせ、ワンストップなサービス提供を行うASP統合型、そして従来ロゼッタネット、EDIなどで行われ、企業間のやりとりをWebサービスで行うSCM型がある」とした。


単一機能提供型のWebサービス 企業内統合型のWebサービス

複数企業のWebサービスを連携したASP統合型 企業間をWebサービスで結ぶSCM型

コラボレーション経営を実現するVALUMO分散技術

VALUMOプラットフォームを担う4つの技術

Hub&Net基盤に信頼性・安全性・接続性をもたらす
 同社ではVALUMOプラットフォームにより、メインフレームでつちかってきたノウハウをオープンシステムに適用し、システムが負荷や障害に対して自動的に対応する“自律”、ハード/ソフトウェアを連携し、コンピュータ環境を統合する“分散”、統合化されたリソースをシームレスに利用できる“仮想化”、マルチプラットフォームの環境との“協調”の4つにより、堅牢性と柔軟性を備えたシステムを提供している。

 コラボレーション型経営環境の構築にあたっては、Webサービスでのメッセージングやサービストランザクション管理の標準や暗号化、電子認証、メッセージングに関するプロキシ機能を採用し、信頼性や安全性を、最新仕様への早期対応や業界標準のビジネスプロトコルのサポート、他社システムとの連携検証などにより接続性の高いHub&Net基盤を提供し、サプライチェーンの業務システムやポータルを結ぶ。また運用管理の面でも、アウトソース先のサービス状況の監視や管理、Webサービスへのアクセスコントロールなどの機能を提供している。開発面では、NECのフレームワークに加え、.NETやWebLogicもサポートしているとのことだ。



URL
  C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2003
  http://www.uf-iexpo.com/
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/

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( 岩崎 宰守 )
2003/12/08 10:18

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