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サン、AMDとの提携の狙いは「Windowsのリプレース」

SPARCはハイエンドサーバー、OpteronはIA-32の置き換えに

 11月17日に発表された米Sun Microsystemsと米AMDの提携は「SPARCというCPUを持つSunが、なぜAMDと?」「SunはSPARCをやめてしまうのか?」といった疑問や憶測が飛び交った。これらに対してサン・マイクロシステムズ株式会社 プロダクトマーケティング本部本部長の山本恭典氏は「SunがSPARCやSolarisの開発をやめることは100%ありえない」と同社が開いた報道向けセミナーで言い切った。


AMDでインテルのCPUを置き換える

 SunとAMDの提携内容は、主に「SunがAMDのOpteronを搭載した2Way、4Wayのサーバーを投入する」、「SolarisとJava Enterprise SystemのOpteronへの最適化、および64ビットモードへの対応を行い、エンタープライズ分野への普及を図る」といったものだ。「AMDのCPUは4Way以下のローエンドサーバーとデスクトップ、つまりインテルの32ビットCPUからの置き換えを狙う」と山本氏は語る。


プロダクトマーケティング本部本部長 山本恭典氏(左)とハードウェア製品事業部長 野瀬昭良氏(右) SunとAMDの提携の概要

 現在、世界で稼働しているIA-32アーキテクチャマシンは数億台と言われている。これらをAMDに置き換えるという根拠は何なのだろうか?「性能の問題からいずれ移行が必至となるIA-64に、インテルのIA-32は対応していない。IA-32と64のどちらのアプリケーションも動かせるAMDのOpteronがIA-32の後継CPUだ」と山本氏は説明する。

 SunがここまでIA-32にこだわるのは、少しでもWindows環境からSolaris、Linuxに移行させたいという考えからくるものだ。「中国や英国政府などで多くのJava Desktop Systemの導入が決まっており、Windowsからのリプレースはもう始まっている」と山本氏は強調する。Windowsの64ビット対応が遅れている間に、まずどちらにも対応できるAMDを利用してもらい、サーバーは64ビットに対応したSolaris/Linux、デスクトップはこれらのOSとJava Desktop System環境に移行を推進する。また、「OracleやbeaなどさまざまなソフトウェアベンダーがOpteronでの動作をサポートしていくことを表明している」(山本氏)


CMT搭載でSPARCはWebサービスに最適なCPUに

 それではSPARCはどのような位置づけとなるのだろうか。ハードウェア製品事業部長の野瀬昭良氏は「SPARCはマルチスレッド化したチップ(CMT:Chip MultiThreading チップマルチスレッディング)を搭載し、スループットを最大限に高める設計となる。1Wayから4Wayのローエンド環境でももちろん動くが、Webサービスを提供する8Way以上のデータセンターやアプリケーションサーバーに最適」と述べる。

 CMTを搭載するCPUは、動作していない時間を少なくでき、同時に来た命令を効率的に処理することができる。野瀬氏は「CPUの周波数の進化に対して、メモリの速度はそれほど速くなっておらずボトルネックとなっている。CMTを積んでいない(NonCMT)CPUは約75%がメモリの待ち時間となっており、いくら周波数が高くなっても実際の速度はわずかしか向上しない」と指摘する。サンによると、NonCMTのCeleron 1.2GHzとPentium 4 2.2GHzの実際の性能差は20%にとどまるという。


CMTのイメージ NonCMTCPUの性能差の例

 CMTを搭載するCPUは、75%のメモリ待ちの間に別の処理を行う。単純計算するとNonCMTのCPUが1つ処理を行って次の命令がメモリから来るのを待っている間に、CMTを積むCPUは4つの処理を並行して行うことができる。この場合のCPU使用率は、前者が25%、後者が100%だ。CMTは今後出荷が予定されているUltraSPARCに実装される。さらにCMTコアを複数持つUltraSPARCも順次開発される予定だ。

 サンは周波数だけでなく処理系の数と稼働率をかけた値をスループット(実行処理の総量)と呼ぶ。UltraSPARCはこれを追求していき、将来的には現在の30倍のスループットを実現できるという。そしてこれに最適な利用方法が、今後トランザクションがさらに増えることが見込まれるというWebサービスを提供するハイエンドサーバーとしている。


従来のアプリケーションとWebサービスの違い
 野瀬氏は「Webサービスは従来と違い、複数のアプリケーション、複数のプロセス、そして複数のスレッドといった非常に細かい部品から成る。これらを効率的に処理できるSPARC、スレッドの供給とハンドリングに最適なSolaris、スレッドの塊ともいえるJavaを持つ我々は大きなアドバンテージがある」とし、ネットワークコンピューティングにおいての優位性を語った。



URL
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/
  UltraSPARCプロセッサについて
  http://jp.sun.com/products/processors/index.html

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  ・ SunとAMD、サーバー分野での戦略提携を発表(2003/11/18)


( 朝夷 剛士 )
2003/12/15 00:00

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