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ITSSユーザ協会が発足

ITSSの運用ナレッジを公開して企業間で共通化

 12月15日、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化、体系化した指標として経済産業省が策定したITスキル標準「ITSS(Skill Standards for IT Professionals)」の普及と定着を目指したITSSユーザ協会が発足し、記者会見が開かれた。

 ITSSユーザ協会は、「ITSS」の利用、普及に関心のある企業、個人にとって、広範囲に最新情報や問題意識を共有する場を作ることを目的としたNPO(特定非営利活動団体)で、2004年4月の法人化を目指すほか、2004年度中に100社・団体の参画を視野に、活動内容を積極的に公開していく。


ITSSユーザ協会会長 東海大学教授 唐津 一氏

ITSSユーザ協会専務理事 日本オラクル株式会社 バイスプレジデント 高橋 秀典氏
 ITSSユーザ協会会長である東海大学教授の唐津一氏は今回の取り組みについて、「日本のIT産業には、ヨーロッパ諸国のように基本的な標準化のシナリオがない」とし、「スタートは遅れたが、これまでは各企業が独自に産業を進め、世界でも先頭グループを走るほどになるなどよい面もあった。今後も日本でIT産業が発展するのは明らかなので、IT技術者を能力に応じて、しかるべく社会で処遇していただきたい」と述べた。

 同協会専務理事で、日本オラクル株式会社 バイスプレジデントの高橋 秀典氏は、まず経産省のITSSについて、11職種38タイプの専門分野ごとに7段階のレベルでスキルを分類したものと説明。ただ「例えばWindowsなどの製品名もはいっておらず抽象化されている。これを具体化していくのも協会の大きな仕事」と述べた。また経産省の情報をもとにした実証、活用、成果をフィードバックし、提言も行っていく。

 また、スキルデータを継続的に蓄積し、スキルセットとキャリアパスを可視化するスキル管理ツール「Standard Skills Inventory for ITSS(SSI-ITSS)」の先行的な運用を、すでに9月より日本オラクルやNECソフトなどの会員企業で始めており、今後はこれを企業横断的に活用して、「企業に必要なエンジニアのタイプや必要なスキル、事業タイプごとのスキルマップ定義の参照テンプレートを作成し、無償でオープンにしていく」とのこと。

 これによりITSSレベルの評価手法も確立し、「エンジニアごとに、どのスキルをどれだけ伸ばせばよいか、そのレベルを計るとともに、サービスを受けるユーザーには見積もりの根拠となる指標を、IT関連企業には投資効果の定義と企業戦略への有用性の指針を提供したい」と高橋氏は語った。


SSI-ITSSツールは、企業だけでなく個人のスキル向上や目指す方向に必要なスキル習得の指針にもなる テンプレートは無償で公開されるが、社内システムと連動するサービスもASPで提供される

同協会の今後のロードマップ
 現在のところ協会には42社9が参画しているが、約半年の活動を通じて「会員には共通の危機認識があった」という。同氏は、「国内の6~7割のエンジニアはレベル1~3の下位」で、これは「レベルの高い教育を受けた中国やインドなどの大学を卒業したばかりのエンジニアに置き換えられる程度」と語り、「エンジニアが、自分の位置づけに関して危機感がないのも大きな問題」とした。

 そして協会の今後については「現在、各社がインテグレータ、ソフトベンダー、教育ベンダー、ユーザーマーケティングなどのビジネスタイプごとにスキル定義を実証実験しており、その後すりあわせて4月ごろに定義が完了する予定」とし、ツールのコンテンツについても「4月をめどに整理統合したい」と語った。

 今回の記者会見には、同協会理事のNECソフト株式会社、コンピュータ・アソシエイツ株式会社、株式会社シーエーシー、シスコシステムズ株式会社、日本オラクル株式会社、株式会社日立システムアンドサービス、富士通株式会社、松下電器産業株式会社の8社が参加し、今後の活動に向けた具体的な取組みも表明された。



URL
  ITSSユーザ協会
  http://www.itssug.org/docs/

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( 岩崎 宰守 )
2003/12/15 14:43

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