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米McDATAテストラボ訪問記

-標高1600mから生まれるSANソリューション-

 米McDATA Corporationは1982年の設立以来、徹底したSAN(Storage Area Network)ソリューションのベンダとして今日に至る。同社は、米国コロラド州ブルームフィールドにSIラボをはじめ開発ラボ、教育施設、製造工場などをおき、ワールドワイドで1000人以上の従業員を擁している。今回、同テストラボを訪問する機会があったので、レポートをお送りする。


 最寄りのエアポートはデンバーにあり、この地は標高1600mといわれるだけあって、着陸時にあのキーンとくる耳づまりにほとんど悩まされないほどであった。地元には大リーグのチームもあり、高地なるが故この土地の人は「ボールもよく飛ぶし、投手のストレートも速いよ。もっとも変化球はダメだけどね」という。デンバーには、あのテレコム企業のクエスト社のオフィスもあるが、町全体は落ち着きすぎるくらい落ち着いていて、ショッピング街の無料電気バスや5両連結の路面電車、トロリーバスなどが、なぜか郷愁を呼ぶ。夕方6時頃になると寒さも手伝ってか、ただでさえ少ない人通りはパタッと途絶えてしまう。

 McDATAが位置するブルームフィールドに車で約30分かけて訪れると、初めての者からみれば、バックにロッキー山脈を擁した実に広大な地に牛や馬の放牧でもあればよく似合いそうな感覚にとらわれる。現在、この地に集結する企業は約30社ほどといわれるが、今後の誘致による企業数の増大や、McDATAの更なる躍進によっては、ここが本格的に“シリコンマウンティン”と呼ばれるようになるのかもしれない。


McDATA本社から車で20分程度いくと、ロッキー山脈に近づきスケールの大きな山裾が延々と続く。 テストラボ。2000平方メートル強の広さにラボと検証エリアをもつ。90億円以上をかけた最新鋭設備が自慢だ。1425の実デバイスと2515のシミュレーションデバイスなどで統合テストを行う。 テストラボ前にはMcDATA創設に貢献したキーパーソンたちの銅像が目をひく。激動のIT業界にあって、この人たちの多くが別々の道を歩んでいる。背もたれのベンチに腰掛けるは、現会長Jack McDonnel氏。

自慢の技術は広域ハイパフォーマンスのSANソリューション

 McDATAのテストラボに一歩入ると、そうした外界などまるで関係ないとでもいいたそうな最新SANのハード・ソフトがズラリ顔をならべ、ファイバーチャネルやIPの相互運用性テスト、IPとシミュレーション機器のテストなどが行われている。

 SAN構築機器では、Sphereon(スフェリオン)ファブリックスイッチやIntrepid(イントレピッド)ダイレクタなどの各シリーズが代表的だ。とくにダイレクタ製品群は、ワールドワイドで運用されるデータセンターストレージネットワークの95%が中核として使用している、という。またさきごろ買収したNishan Systems社の技術をいかしたEclipse(イクリプス)1620インターネットワーキングスイッチなどにより、SANの長距離接続も可能となった。長距離接続技術のうち、SANルーティングはマルチベンダ機器やプロトコルおよびアプリケーション接続などを実現してくれる。またこれまでのファイバーチャネル接続に加えて、iSCSIなどIPによる統合も可能となった。iSCSIは伝送速度1Gbpsで、ファイバーチャネルは2Gbpsであるが、iSCSIはとくに長距離接続に向き、ローコストでのSAN構築が可能だ。


全製品が組み込まれた大型ファブリック。これほど大型でも、魅力は中断なくアップグレード可能なこと。このファブリックは996ポート、250のデバイスが接続されている。Sphereon 4300や4500のような小型スイッチからここまでスケールアップ可能だ。 Eclipse1620インターネットワーキングスイッチをはじめIntrepid 6064/6140マルチプロトコル64/140ポートダイレクタ、Sphereon 4500フレキシブル12/24/32ポートスイッチなどを収納。このテスト環境では稼働中にトラブルを修復可能だしアップグレードもOK。 ストレージセンター。ここにはエンタープライズ系とミッドレンジ系がある。EMCをはじめIBM、HP、Sun Microsystems、日立データシステムズ、ストレージテックなど向けのOEMテストを行っている。

 こうしたハードウェアに加えて、SANの管理ツールが「SANavigator」である。SANavigatorは、一つのファブリック内に混在する複数ベンダはじめデバイス、アプリケーション、プロトコル、技術などをすべてエンド・トゥ・エンドで一元管理してくれ、現在ではバージョン4.0を提供している。これにより、Eclipseスイッチも管理化においた。


SANavigator。もともとSANの管理は煩雑な作業だが、これはマルチベンダ対応のためこうしたハンディを緩和してくれる。デバイスだけではなくファブリック内デバイス間通信のポートからポートまでリアルタイムでパフォーマンスもビジュアル化してみせてくれる。

買収劇で狙うはSAN市場の制覇

就任まだ日も浅いPaul Rath氏。しかし香港やシンガポールのEMCでアジアビジネスの立ち上げにかかわるなど経験豊富。「アジア太平洋市場は、SANの普及も規模も平均15~20%程度と低いことが逆に高成長を期待できる要因。SANのメリットをお客様に啓蒙しながら普及させたい」と力強いメッセージも。
 McDATAは、設立の翌年1993年にはIBMとESCONスイッチで提携、1995年に一時EMC社に買収されはしたものの再び2001年にはスピンオフし、ダイレクタやスイッチなどSANには必須の製品を順次投入、その後は2001年、逆にSANavigator Incを買収、いまではMcDATAのSAN環境を広域に一元管理可能なツール「SANavigator 4.0」を投入するなど、完璧なSANソリューションをつくり上げた。さらに買収劇は進み、最近ではNishan Systems社やSanera Systems社をも手中におさめ、Aarohi Communications社にも出資をした。実は、この3社に対する買収と出資が、McDATAの今後のSANビジネスにおける3軸といわれる技術の重要な基軸「拡張性」、「インターネットワーキング」、「インテリジェンス」を決定づけている。

 このたび日本などアジア太平洋地域担当副社長に就任したPaul Rath氏も、「Nishanからは、ネットワーク接続の能力アップを、Saneraからはエンタープライズ型でポート数の多いユーザーに対応可能なソリューションをそれぞれ得た。これで、よりマルチなプロトコル、ネットワーク、プラットフォーム、規模に対応可能な力もついた」と目を輝かせる。

 この間の買収劇そしてその技術をソリューション化して再投入する動きは、規模や社数は異なるものの、同社がコンペと意識するシスコシステムズを思わせる。


もはや第7世代のソリューション投入へ

 今後McDATAは、競合他社たちがSAN分野で、第一世代製品を投入しようとしている中、「いま販売中の製品は第7世代にも匹敵するもの」と胸を張る。2004年以降、IPゲートウェイやSANルーティング、10GbpsファイバーチャネルモジュールなどでアップグレードしたダイレクタやSoIP(Storage over IP)などの投入で、より地固めをしていく構えである。

 だがMcDATAは、こうしたハイグレードな技術をバックに、あくまでコストを抑えて、リアルタイム・ストレージ・サービス・インフラストラクチャ・サービスにより、すべての顧客がデジタルデータへアクセスでき容量管理をシームレスかつ短時間で実現可能なソリューション提供を、という基本姿勢にこだわりをみせる。



URL
  McDATA Corporation
  http://www.mcdata.com/


( 真実井 宣崇 )
2003/12/18 00:00

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