12月17・18日、東京ビッグサイトにて「OracleWorld Tokyo」が開催された。17日には「デルのエンタープライズ戦略-スケーラブル・エンタープライズ・コンピューティングの推進-」のテーマで、デル株式会社 代表取締役社長で、米Dell Inc.北アジア地域担当 副社長の浜田 宏氏が特別講演を行った。
■ 直販による“デルモデル”は顧客満足度重視
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デル株式会社 代表取締役社長 米Dell Inc.北アジア地域担当 副社長 浜田 宏氏
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同氏は、先日「デルコンピュータ株式会社」から「デル株式会社」への社名変更を行ったことについて触れ、「単なるコンピュータを超え、コンサルティングからサポートまでの一貫したサービスを提供する決意の現れ」と述べた。そしてデルの企業としての姿勢を「顧客のトータルコスト削減と、より快適なコンピューティング環境をカスタムメイドで提供する」と語った。
同社は2003年第3四半期のPC/IAサーバーシェアで世界1位を占め、国内でも年間成長率31%でシェア9.4%で富士通、NECに次ぐ3位となっている。ただ同氏は「マーケットシェアはあくまで通信簿、結果であり重要視していない」とし、「顧客満足度こそがエネルギーの源」と語った。同社は日経の顧客満足度調査で1位となっている。
同社の販売は直販によるカスタマイズ可能な受注生産、いわゆる“デルダイレクトモデル”で行われている。同氏が「原点は顧客、パートナーとのダイレクトリレーションシップ」と語るように、顧客に対してはメーカーの人間ひとりが直接、必要なものを「開発、提供、サービスさせていただく」もので、「誰にも責任転嫁できない背水の陣」の販売体制といえる。
受注によるカスタマイズ生産については「作り置きの製品がない」ことをメリットに挙げた。この理由として、「部品コストは一週間で0.5%~1%下がり、最先端・低コストの部品で構成された製品を提供できる」点が強調された。
こうしたデルモデルについて同氏は、「Linuxの開発に似ている」とした。「創業から19年の間、世界中で毎日こつこつと作り上げてきた」とその自負を述べ、「今後も改良が続く」と語った。
■ 業界標準技術で低コストの製品・サービスを提供
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2003年にはストレージ分野でもハイエンドとミッドレンジで金額シェアの転換が起こった
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同氏は、ITの世界には2つのビジネスモデルがあるとした。そのひとつは「伝統的、典型的な独自技術モデル」。同氏は「他のプラットフォームに乗り換えられず、一度購入したら使い続けるしかない。また非常に高い開発コストのため利益が上がりにくく、結果ハードウェアの赤字をサービス・サポートで稼ぐもの」と述べ、また「技術者、会社が作りたいものを売っている」とした。
そして業界標準テクノロジは、同社の製品における柱というべきもの。同氏はIntel、Microsoft、Linuxの名を挙げながら、「伝統的な独自技術で顧客を囲い込むのでなく、柔軟性が高く誰もが提供できる開かれたデファクトスタンダードで価値を提供する」と語った。そしてコンサルティングや保守サポートといったサービスについては、「ハードウェアが儲からないから、ではなく、あくまでも快適にハードを使っていただけるための、包み紙みたいなもの」と述べ、「高い価格設定でマージンをとることは考えていない。価格も適切」なものとした。
またもうひとつの業界標準のメリットとして「企業が共同し、業界あげて研究開発を行うために、独自技術と比べて早く、安い」と述べ、このために「独自技術のシステムでは考えられないほどの低コストで、システムとサービスを提供できる」とした。
さらに世界ベースの販売金額で、2003年ついにIAサーバーがRISC/CISCのシステムを追い越したことを示し、「独自技術と業界標準技術の歴史的な転換点」とした。もっとも台数ベースでは「3~4年前に転換しており、われわれはもう曲がり角を曲がってしまっている」とも述べた。
■ 低コストの初期投資で業務にあわせた拡張が可能
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Linux 4WayサーバーとUnixサーバーの比較では、性能は89%高くコストは27%安い
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こうしたオープン化への流れの理由として、同氏はTCO削減とROI向上、リソースの有効活用、簡素化、管理性、可用性・パフォーマンスの5つを挙げた。そしてこれまでの販売経験から「業種を超えて、自動車メーカーから医薬品メーカー、音楽配信企業まで変わらない」とし、「顧客ニーズに合わせて、徐々にシステムの規模を大きくしていく手法を提供する」と述べた。
続けて同氏はUnixとWindowsのシステムで導入から運用までのTCOを比較し、3年間で46%、金額にして4億円前後の差となることを示した。また同社の調査では、Oracle 9iRACを利用したWindows 2WayサーバーはUnixサーバーと比較して性能面で42%高速でコストは79%安く、その上「現在でも高性能・低コストだが、IAサーバーは今後3年間で250%以上性能が向上する」と予測し、「UNIXは高い性能があるが、特定ビジネスにあったニッチな製品になっていくと考える」と述べた。
そして同社の提唱する“スケールアウト”は、「業界標準のサーバーを横展開するコンセプト」で、「システム全体で大型サーバーに匹敵、凌駕する性能を提供する」もの。「厳しい経済環境の中、課題を満たし、低価格で最初の投資ができ、業務の拡張にあわせて少しずつ投資できる」点を最大のメリットに上げた。
■ オラクルとのパートナーシップ
同氏はオラクルについて「業界標準のアプリケーションで市場展開を図っており、同じ志と市場を持った企業」と語り、「技術的な考え方とスケールアウトがマッチしている」と述べた。そして両社の提携により「低いコストで、導入が容易で管理性も高く、投資効率のよい製品・サービスを提供する」ことで、「日本経済の役に立てるのではないか、そこまで志を持って提供する」と語った。
同氏は「Oracle 10g」の開発がデルのブレードサーバー上で行われたことに触れ、「現時点では唯一最適なプラットフォーム」とした。両社ではこれまで、ソフトウェアをプリインストールしたサーバー製品の提供や、保守サービス窓口の一本化、共同でのマーケティングや営業を行っている。今後は「Oracle 10g」を含むパッケージ対象ソフトウェアの拡充なども行われる予定だ。こうした試みは世界的な規模で行われており、「日本からは両社で中国へ営業を送り込んでいる」とのこと。そして「世界中どこでも同じシステムを同じ価格で」提供していることで、世界トップのグローバル企業と仕事の機会が増えていくだろう」とみている。しかし一方で「個人でも驚くほどの数の人がWebサーバーを買い上げている」とのことで、「極端な話、個人の顧客であろうとエンタープライズ製品を提供したい」と述べた。
■ URL
OracleWorld Tokyo
http://www.oracle.co.jp/oracleworld/
デル株式会社
http://www.dell.com/jp/
( 岩崎 宰守 )
2003/12/19 18:49
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