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PCメーカー7社、2004年の販売施策を公表


 パソコンショップや量販店などで構成される社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は1月21日、帝国ホテルでJCSSA新春特別セミナーを開催し、アップルコンピュータ、ソニー、東芝、日本IBM、NEC、日本ヒューレット・パッカード、富士通のパソコンメーカー7社の事業責任者が「2004年我が社の製品・販売施策」をテーマに、プレゼンテーションを行った。その様子をお伝えする。


アップルコンピュータ株式会社 代表取締役社長 原田永幸氏

アップルコンピュータ株式会社 代表取締役社長 原田永幸氏
 2004年は、音楽配信サービスを日本でも実現したいと、スティーブ・ジョブズが、昨年、銀座にオープンしたアップルストアの開店の際に発言しているが、今年は製品だけでなくサービスにも力を注ぎたいと思っている。

 アップルストアは、オープン初日は8,000人が集まったが、最近でも一日5,000人の来場者があるというほどだ。アップルストアによって、近隣の販売店の売り上げが上昇したという結果も出ている。

 アップルストアの役割は、もともとMacに接点がなかった人たちにリーチすることが大きい。銀座3丁目という立地はそうした狙いからのものだ。今年秋には、大阪に出店する予定で、まだ具体的な場所はいえないが、同じような立地条件を満たした場所になる。

 法人営業部は、これまでパートナー企業がリーチできなかったような分野に切り込み隊長としてやっていき、販売店のビジネスチャンスをつくりたい。また、約60人のASCのメンバーを店頭に派遣して個人ユーザー向けの販売支援を行ったり、クリエイティブプロフェッショナル向けのASEによって、今年はビデオ、パブリッシング、音楽などのクリエイターの分野に一層力を注いでいく。

 また、Mac OS Xの浸透や、G4からG5への移行を図るといった取り組みも加速したい。

 iPodは、200万台の出荷を突破したが、日本では物不足が続いており、供給が多ければもっと売れただろう。iPodの利用シーンは広いため、パソコンショップ以外のルートにも販路を広げたいと考えている。


ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー プレジデント 常務 木村敬治氏

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー プレジデント 常務 木村敬治氏
 2004年は劇的な変化が起こっている。家庭のなかの状況を見ると、家庭内にあるパソコンやデジタル家電をあわせたハードディスクやメモリの容量は1テラバイトに達している。また、CPUの処理速度は10GHzに達し、ADSLなどによって100Mbpsのネットワークが利用されている。

 家電とITの境目は急速な勢いで消滅していくことになるだろうし、事実、予測を超えた速度で進展してきている。

 パソコンのカテゴリー自体も変わり、クオリティやインテリジェンスが求められている。バイオにしても、さらに付加価値を追求していかなくてはならない。

 こうしたホームネットワークの世界が現実化していくなかで、ソニーとしては3つの方向性を出したい。

 ひとつは、本物の追求である。505エクストリームで実現したように、世界最高の形、軽さ、薄さを追求し、本物のモバイルパソコンを実現したい。2つめは、新たなパソコンの形態を提案すること。新しい使い方を同時に提案していきたい。そして3つめには、家のなかや、外に持ち出したときに本当に使えるホームネットワークの実現のための取り組みだといえる。

 いま、大きな変化が起こっているからこそ、新しい商品が生まれてくる。パートナーのビジネスをドライブできるような商品を出していきたい。


株式会社東芝 執行役常務 PC&ネットワーク社副社長 能仲久嗣氏

株式会社東芝 執行役常務 PC&ネットワーク社副社長 能仲久嗣氏
 昨年までパソコン事業の改革に取り組んできたが、1月1日からPC&ネットワーク社を設置するなどの改革がすすみ、臨戦態勢をとれるようになった。今年はガンガン行きたい。国産メーカーやパートナー各社にとって共通の敵はデルとHPだ。日本のメーカーのシェアを伸ばしたい。

 東芝は、社内には優れた技術がたくさんあるが、商品化するのはうまくない、とよく言われる。だが、今年は違う。東芝の技術を利用した新たな製品をどんどん出していきたい。

 個人向けのパソコンでは、テレビ、CDやHDDレコーダなどのあらゆるAV商品をパソコンの機能として包含する多機能型のデジタルAVオールインワンノートパソコンを提供する。

 また、企業向けにはモバイルをキーワードにTCOを徹底的に削減した製品を投入する。机上のコンピュータ環境をそのままメインPCとして持ち歩けるようなリアルモバイルPCを目指す。

 1月19日発表の製品では、480カンデラという液晶を採用するとともに、テレビをオンにするボタンを別途用意し、テレビをクイックスタートができるようにしている。8秒以下でテレビが映るようにしており、今後はさらに早く映るように改良を加えたい。また、1月21日に発売した製品では、12インチとしては最軽量で、5.4時間の連続駆動時間を実現している。

 今後、燃料電池や曲がるTFT液晶といった新たな技術を搭載した製品を投入していくつもりだ。日本の市場拡大、パートナー各社が利益をとれる製品を投入していく。


日本アイ・ビー・エム株式会社 PC&プリンティングシステム事業部長 向井宏之氏

日本アイ・ビー・エム株式会社 PC&プリンティングシステム事業部長 向井宏之氏
 パソコンの一台あたりの単価は、わずか1年で31%も落ちている。つまり、横ばいだったとしても、売上高が3割近く減少しているということだが、単純に考えて、販売台数が3割も上昇するのは無理だ。では、どうしたらいいのか。

 日本IBMでは、ハードの販売だけではなく、ソフトやオプション、サービスなどが粗利確保のチャンスを生むと考えている。中小企業を対象としたExpressポートフォリオというハード、オプション、サービスをパッケージ化した製品を用意している。また、ThinkVantageというパートナー向けの製品もあり、これによって売上高で20%増を達成したパートナーもある。

 ソフト、オプション、サービスをうまく組み合わせれば、2~3割の単価増が期待できる。

 日本IBMの役割は、知恵を絞っていい商品を開発し、価値のある製品をタイムリーに投入することだと考えている。今年はパソコン市場が最も伸びる年だともいわれている。飛躍できる年にバリューを持った製品を提供していきたい。


日本電気株式会社 執行役員常務 津田芳明氏

日本電気株式会社 執行役員常務 津田芳明氏
 NECでは、ITとネットワークを融合した製品の投入に力を注ぎ、お客様のビジネスを止めない、広げる、コストを下げるといった点を強力に支えるプラットフォームを提供していく考えだ。

 すでに、ITとネットワークの融合製品として、UNIVERGEという製品を投入しており、ブレードサーバーや無停止型のPCサーバーや、薄型超時間駆動のノートパソコンやサイレントエコPC、タブレットPCなどとともにプラットフォームを形成していく。

 企業向けのノートパソコンでは11.8時間という長時間駆動が可能であるとか、ファンレスで20dbという静音設計のエコパソコンを投入しているが、今後は水冷パソコンや燃料電池、次世代の指紋照合機能などを搭載するほか、マイクロPCといった新たな分野の製品にも積極的に取り組んでいきたい。

 サーバー分野ではフォールトトレランスであることや、ブレードサーバーによるパートナーとの協業を強化したい。

 パートナー支援では、1,100以上もの講座数を誇るパートナー向けの教育体制をはじめ、さまざまな施策を用意している。

 IT業界にとってはいい時代に突入し始めている。中小企業のIT導入が活発化するというビジネスチャンスも期待している。


日本ヒューレット・パッカード株式会社 取締役副社長 パーソナルシステムズ事業統括 馬場真氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社 取締役副社長 パーソナルシステムズ事業統括 馬場真氏
 昨年は、旧HPと旧コンパックの合併後ということもあり、守りから攻めに転じる年としたが、この1年間の成果として、攻めた成果が出たと考えている。

 先ほど、東芝さんから、敵はデルとHPだという話があったが、そういうように位置づけられるのは、攻め続けた成果かもしれない。だが、本当の敵は無謀な価格を打ち出すデルである。

 HPは、PCにおいて、市場の伸びの1.5倍の成長となり、2003年第4四半期は、デルを抜いてナンバーワンに戻った。ノートパソコンでもずっとナンバーワンだ。また、世界で利用される3台に1台がHP製だといわれるIAサーバーは、市場の成長率の2.5倍の伸びを見せている。LinuxのサーバーでもIBMを抜いてナンバーワンである。さらに、日本でも前年比140%という実績を達成した。

 成功した要因は、大変辛い環境に置かれることになってもデル対抗を強く打ち出し、デルの価格にあわせて毎週価格競争を繰り広げてきたことだ。テレビや新聞の宣伝は、通常の年の3倍の出稿量に達している。ブランドイメージの定着と低価格であるということを認識してもらうために、大胆にそして、休むことなく継続的に続けてきた。

 そして、もうひとつの成功要因はパートナーが、当社のウェブセールスを、ツールとして利用してもらえたということだ。パートナーが在庫を持たずに、短納期でユーザーに納めることができる仕組みとして、また、パートナーと当社が共同でデルに対抗できる仕組みとして、このビジネスが大きく伸びた。

 今年は飛躍するHPを目指したい。引き続きデル対抗の価格を提示していくのに加えて、プロモーションも倍加させたい。さらにパートナーとも新たなビジネスモデルを作りたいと考えている。

 Ask hpという仕組みを用意した。パートナー各社は、なにかあれば日本HPに聞いてください。2-3月のこれからの商戦で、案件があれば日本HPに連絡してください。赤字でも案件をとります。

 それと、米国のCESでは、32インチの大型LCDをはじめ、アップルからiPodのOEMを受けて今年秋から提供するといった発表があったが、日本でも今年秋から新たな戦略として、コンシューマ向けビジネスを開始する。日本では、これまでの2年間は、コンシューマビジネスを休んでいた。また、旧HPも旧コンパックも、かつてはそれぞれにコンシューマ向けビジネスをやっていたが、いずれも赤字でやめたという経緯がある。だが、コンシューマ向けの新たな製品が出てきたこと、ビジネス市場において地盤が構築できたこと、今後、コンシューマ市場を外してはHPの成長が見込めないと考えたことなどから、本格的にコンシューマ市場に乗り出すことにした。

 今年秋からコンシューマ市場を開拓していきたい。これによって、日本HPが、昨年以上に、元気であり、さらに飛躍したいと考えている。


富士通株式会社 経営執行役パーソナルビジネス本部長 伊藤公久氏

富士通株式会社 経営執行役パーソナルビジネス本部長 伊藤公久氏
 富士通は、高いバリューを提供すること、高品質を目指したものづくり、デマンドサプライチェーンのさらなる推進という3つを重点施策としてパソコン事業に取り組んでいる。

 また、300万人の会員組織、そのうち180万人のメールアドレスが登録されているというユーザー資産を生かして、アンケートを通じたユーザーの声を集め、これを製品づくりに反映させるといった取り組みも行っている。

 個人向けには、1月10日にシアターPCを出した。見る、録る、残すをキーワードにしたもので、リモコンによって家電感覚の操作性で利用できるようにした。しかも、25万円という戦略的な価格としている。

 また、企業向けでは、ものづくりへのこだわりとして、高機能性に加えて、信頼性と使いやすさにこだわった。例えば、本体カバーの施錠であるとか、ノートパソコンで初のRAID対応などがある。

 昨年5月には、バリューモデルというラインを新たに用意した。10月4日には第2弾として96モデルを用意し、Webを通じて販売している。このラインの価格は、某社(=デル)のWeb価格と同一にしている。ぜひ、これをパートナーの方々にも売ってほしいと考えている。

 ものづくりへのこだわりとしては、部品の品質をあげる手段のひとつとして、SQMという制度を取り入れている。台湾などの部品メーカーに直接当社が週1回程度のペースでお邪魔し、プロセス管理を行う。昨年の4月から実施しているが、品質面での効果があがっている。また、経時劣化に対応するために部品の2年間の加速劣化テストも実施している。

 一方、デマンドサプライチェーンでは、ウイークリープランニング、ウイークリーオペレーションが実現できる体制となっている。

 富士通は、品質世界一を目指し、最後まで国内生産にこだわるとともに、コスト削減だけでなく、需要変動にも柔軟に対応できる体制を追求し続けていく。

 なお、テレビコマーシャルの好感度調査でFMVが2位になった。ほかにランクインしているが低価格の消費財であるのに対しては異例ともいえるものだ。これも木村拓哉さんの効果によるものといえる(笑)。



URL
  社団法人日本コンピュータシステム販売店協会
  http://www.jcssa.or.jp/
  アップルコンピュータ株式会社
  http://www.apple.co.jp/
  ソニー株式会社
  http://www.sony.co.jp/
  株式会社東芝
  http://www.toshiba.co.jp/
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  日本電気株式会社
  http://www.nec.co.jp/
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/


( 大河原 克行 )
2004/01/23 00:00

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